半世紀ほど前、多くの家庭では4~5人の子供がいて、母親の多くは専業主婦でした。働き手は父親だけで、ひとりで全員の生活費を稼いでいたわけです。むろん当時の生活は貧しいものでしたが、たいていは1人の働き手が多人数の家族を支えることができました。
一方、豊かな時代である近年は少子化が顕著で、合計特殊出生率は1.3前後で推移しています。そして子供を多く生まないのは経済的な理由が大きいとされています。経済的に豊かになった筈なのに経済的な理由で子供を少数しか生めなくなったとは何かおかしい気がします。
現在は豊かな暮らしを享受していますが、その多くは生産性の飛躍的な向上によるものです。例えば従来10人かかっていたものが1人で生産できるようになったというわけです。またそれに加え、女性が社会で働くようになったことも寄与しているでしょう。
しかし得られた豊かさの多くは衣食住や遊びに費やされ、子育てに充てられる部分が相対的に少なくなった結果と考えられます。むろんそれと関連して教育費の高さも大きい理由になるでしょう。
20世紀は大量生産の時代であり、需要喚起、つまりそれを消費者に買わせるためのメディアによる広告が大きい役割を果たしたとされています。産業とメディアはライフスタイルに支配的な影響を与えてきたわけで、子育てよりも車や住宅、衣料などへの支出を多く配分するひとつの要因になったと考えられます。
もし赤ちゃん関連の産業が巨大であったなら、世の中に子育ての夢をばら撒いて、出生率はそれほど低下しなかったかもしれません。教育産業は巨大ですが、出生率が増えても彼らの売上に寄与するのはずっと先の話であり、あまり広告の動機にはなりません。
一方、社会の仕事が複雑化しているため、ある程度の教育費の増加は止むを得ませんが、高等教育の需要を満たすことによって肥大化した教育産業が高額の費用に見合っただけの役割を果たしているかというと、たいへん怪しいと思います。昔に比べ、教養豊かな人が多くなったという話もあまり聞きませんし、書籍の販売は低下の一途です。
現在は生産年齢人口の3人が1人を支えていますが、合計特殊出生率が変わらなければ2055年には1.2人が1人を支えることになると試算されています。福祉の大幅な低下は避けられず、社会の維持すら難しくなるでしょう。
社会の維持に必要な次の世代を育てる余裕がないというのでは、半世紀前より豊かな社会になったとは必ずしも言えません。子供手当てなどの弥縫(びほう)策がなければ子供が減少する社会はやはり不自然であり、どこかでボタンを掛け違えたような気がします。
参考拙文誰も触れたがらない大事なこと
一方、豊かな時代である近年は少子化が顕著で、合計特殊出生率は1.3前後で推移しています。そして子供を多く生まないのは経済的な理由が大きいとされています。経済的に豊かになった筈なのに経済的な理由で子供を少数しか生めなくなったとは何かおかしい気がします。
現在は豊かな暮らしを享受していますが、その多くは生産性の飛躍的な向上によるものです。例えば従来10人かかっていたものが1人で生産できるようになったというわけです。またそれに加え、女性が社会で働くようになったことも寄与しているでしょう。
しかし得られた豊かさの多くは衣食住や遊びに費やされ、子育てに充てられる部分が相対的に少なくなった結果と考えられます。むろんそれと関連して教育費の高さも大きい理由になるでしょう。
20世紀は大量生産の時代であり、需要喚起、つまりそれを消費者に買わせるためのメディアによる広告が大きい役割を果たしたとされています。産業とメディアはライフスタイルに支配的な影響を与えてきたわけで、子育てよりも車や住宅、衣料などへの支出を多く配分するひとつの要因になったと考えられます。
もし赤ちゃん関連の産業が巨大であったなら、世の中に子育ての夢をばら撒いて、出生率はそれほど低下しなかったかもしれません。教育産業は巨大ですが、出生率が増えても彼らの売上に寄与するのはずっと先の話であり、あまり広告の動機にはなりません。
一方、社会の仕事が複雑化しているため、ある程度の教育費の増加は止むを得ませんが、高等教育の需要を満たすことによって肥大化した教育産業が高額の費用に見合っただけの役割を果たしているかというと、たいへん怪しいと思います。昔に比べ、教養豊かな人が多くなったという話もあまり聞きませんし、書籍の販売は低下の一途です。
現在は生産年齢人口の3人が1人を支えていますが、合計特殊出生率が変わらなければ2055年には1.2人が1人を支えることになると試算されています。福祉の大幅な低下は避けられず、社会の維持すら難しくなるでしょう。
社会の維持に必要な次の世代を育てる余裕がないというのでは、半世紀前より豊かな社会になったとは必ずしも言えません。子供手当てなどの弥縫(びほう)策がなければ子供が減少する社会はやはり不自然であり、どこかでボタンを掛け違えたような気がします。
参考拙文誰も触れたがらない大事なこと