「私の辞書に不可能という言葉はない」といったのはナポレオンですが、わが首相もなかなか非凡なものをお持ちのようです。前回、日本を「恥の文化」であるとするルース・ベネディクトの「菊と刀」に触れました。「恥を知れ」という言葉もあるように、恥の意識が日本人の行動を強く規定しているのは確かであると思います。しかし、日本の代表である鳩山首相は例外のようです。
鳩山首相が「力強く」繰り返してきた「普天間飛行場の移設問題は5月末に決着する」という約束は、「6月以降になっても、詰める必要があるところがあれば当然努力する」というご自身の発言によって事実上、反故にされる見通しとなりました。
「職を賭す」「命がけでやる」とまで言ってきた5月末決着の帰結として気の抜ける思いがします。「5月末決着」は「5月未決着(みけっちゃく)」のことかと揶揄した新聞がありましたが、なかなか上手いですね。
それにしても「職を賭す」とまで言った約束を平然と破ることのできる神経は驚異的です。しかも、米側の同意、移設先の同意、与党の同意、すべてがメドさえ立たないという完全反故です。「平然と」ということが鍵になりますが、首相の頭には恥という回路が存在しないようです。宇宙人と名付けた人はなかなかの慧眼だと思います。
鳩山首相がオバマ大統領に「Trust me」と言ったのは有名ですが、昨年末ルース駐日米大使にも「任せてください。時期が来れば現行計画に戻します」と言ったそうです(文芸春秋6月号「台風の目はみんなの党か舛添か」)。昨年末の時点で最終の決着を現行計画だと考えていたのならば、ずいぶん不誠実な話です。
日本を代表する人物はいろんな意味で「範」となる宿命を負っているといってもよいと思います。その人物が約束を平然と破れば社会のモラルに悪影響を与えることは自明です。既に株取引で数千万円、贈与税で約6億円の申告を「漏らしっぱなし」にして平成の脱税王という異名を与えられ、納税モラルを低下させた実績があり、まさにモラルの反面教師です。
対外的な国の信用を失うことも大きい損失ですが、政治家はウソをつくものだという諦念、政治への不信感の広がりは後々まで影響を及ぼす深刻な問題だと思われます。
どこの世界でも、重大な約束を反故にした者は辞めていただくのがあたりまえですが、何故かマスコミは寛容です。一応の批判はしているものの、取るに足りない事件を起こした吉兆や不二家への攻撃などと比べると質・量とも雲泥の差があり、まったく理解に苦しむところです。
5月17日の読売新聞はつぎのように報じています。
『平野官房長官は17日午前の記者会見で、月内の閣議了解を目指している、沖縄県の米軍普天間飛行場移設に関する政府の対処方針について、「閣議了解にするか閣議にかけるのか方法は別にして、政府の考え方は明確にする。首相発言ということでペーパーを出して、それで了解するという方法もある」と述べた』
なるほど、いつもの平野氏に似合わずなかなかの深謀遠慮に基づく発言です。首相発言ということにしておけばきっと誰も信じないので罪が軽い、ということなのでしょう。
鳩山首相が「力強く」繰り返してきた「普天間飛行場の移設問題は5月末に決着する」という約束は、「6月以降になっても、詰める必要があるところがあれば当然努力する」というご自身の発言によって事実上、反故にされる見通しとなりました。
「職を賭す」「命がけでやる」とまで言ってきた5月末決着の帰結として気の抜ける思いがします。「5月末決着」は「5月未決着(みけっちゃく)」のことかと揶揄した新聞がありましたが、なかなか上手いですね。
それにしても「職を賭す」とまで言った約束を平然と破ることのできる神経は驚異的です。しかも、米側の同意、移設先の同意、与党の同意、すべてがメドさえ立たないという完全反故です。「平然と」ということが鍵になりますが、首相の頭には恥という回路が存在しないようです。宇宙人と名付けた人はなかなかの慧眼だと思います。
鳩山首相がオバマ大統領に「Trust me」と言ったのは有名ですが、昨年末ルース駐日米大使にも「任せてください。時期が来れば現行計画に戻します」と言ったそうです(文芸春秋6月号「台風の目はみんなの党か舛添か」)。昨年末の時点で最終の決着を現行計画だと考えていたのならば、ずいぶん不誠実な話です。
日本を代表する人物はいろんな意味で「範」となる宿命を負っているといってもよいと思います。その人物が約束を平然と破れば社会のモラルに悪影響を与えることは自明です。既に株取引で数千万円、贈与税で約6億円の申告を「漏らしっぱなし」にして平成の脱税王という異名を与えられ、納税モラルを低下させた実績があり、まさにモラルの反面教師です。
対外的な国の信用を失うことも大きい損失ですが、政治家はウソをつくものだという諦念、政治への不信感の広がりは後々まで影響を及ぼす深刻な問題だと思われます。
どこの世界でも、重大な約束を反故にした者は辞めていただくのがあたりまえですが、何故かマスコミは寛容です。一応の批判はしているものの、取るに足りない事件を起こした吉兆や不二家への攻撃などと比べると質・量とも雲泥の差があり、まったく理解に苦しむところです。
5月17日の読売新聞はつぎのように報じています。
『平野官房長官は17日午前の記者会見で、月内の閣議了解を目指している、沖縄県の米軍普天間飛行場移設に関する政府の対処方針について、「閣議了解にするか閣議にかけるのか方法は別にして、政府の考え方は明確にする。首相発言ということでペーパーを出して、それで了解するという方法もある」と述べた』
なるほど、いつもの平野氏に似合わずなかなかの深謀遠慮に基づく発言です。首相発言ということにしておけばきっと誰も信じないので罪が軽い、ということなのでしょう。