噛みつき評論 ブログ版

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浜岡原発停止を極秘決定したブラック政権

2011-05-12 10:01:51 | マスメディア
 記者会見で突如発表するという菅首相のやり方について、日本経団連・米倉会長の「民主党の時代になって分からないのは、結論だけぽろっと出てくる。そして、思考の過程がまったくブラックボックスになっている」という批判が「有名」になりました。米倉会長の眠そうな顔から切れ味のよい言葉が飛び出したのにはびっくりです。

 この米倉発言が広く報道されたのは記者達にも同調するところがあったためでしょう。首相と枝野官房長官に対する質問にも米倉発言が引用されていました。しかし思考の過程がまったくブラックボックスだという批判に対して首相も枝野氏も停止要請の意義を強調するばかりで、質問の答えにはなっておらず、それ以上の記者の追及もありませんでした。

 質問権を持つ記者は曲がりなりにも国民の代表なのですから、もう少し突っ込んだ質問をして欲しいものです。再質問がなければ実質的な回答拒否を許すことになり、質問者も回答者も緊張感のない茶番となります。結局、「ブラックボックス」に対する回答は枝野氏の「私にはピンときません」の一言だけでした。これは問答無用という態度であり、誠実さが感じられません。

 浜岡原発の停止要請は菅首相、海江田経済産業相、細野豪志首相補佐官、枝野官房長官、仙谷官房副長官らで4月上旬から1か月にわたり極秘に検討されてきたと報道されています。玄葉国家戦略相(民主党政策調査会長)は知らされておらず、不快感を表明しました。原発問題は国家戦略の問題ではないようです。

 民主党政権の秘密主義は今に始まったことではありませんが、民主党という名前が空しく感じられます。「由らしむべし、知らしむべからず」の体質が透けて見えるようです。ブラックボックス政権、略してブラック政権と呼ぶのがふさわしいと思います。

 しかし、たまたまなのかどうか知りませんが、今回の浜岡原発停止要請そのものは妥当な方向だと思います。大事故の確率がどれくらいあるかわかりませんが、一度の失敗は許され同情もされるでしょうが、二度の失敗は信用を失い、軽侮の対象にすらなります。

 原発推進か、あるいは全廃かの極端な選択でなく、リスクの大きいものだけを停止するという判断は現実的なものです。過去、原発に関しては絶対安全とする意見と危険をことさらに強調する意見の対立が続いてきました。

 例えば、反原発のバイブルとされてきた故・平井憲夫氏の「原発がどんなものか知ってほしい」という小論は「日本列島で取れる海で、安心して食べられる魚はほとんどありません」と述べるなど針小棒大な記述が目立つものですが、約8000のブログで紹介・転載され、少なからぬ影響を与えてきました。

 一方、福島第一では津波対策として堤防の嵩上げが検討されたとき、今まで絶対安全と言ってきた手前、それを否定することになるので嵩上げは実現しなかったそうです。絶対安全と無理やり言いふらしたことで自縄自縛になったわけです。絶対安全と言わなければ納得しない風潮を作り上げたメディアにも責任の一端はあると思います。

 一般に、極論の対立がよい結果を生むことはあまりないと思います。その点、今回の停止要請は手法の問題はともかく、確立を考慮した現実的な判断であり評価できます。

 ただ、突然なにが飛び出すかわからない政権という定評ができつつあり、今後も「想定外の思いつき」が出てくるかもしれないという不安は残ります。日本の将来のビジョンを示さない、突如として予想だにしないものが飛び出す、不安のタネは尽きません。