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マルクスの亡霊

2013-02-11 10:06:47 | マスメディア
 棺桶と柩(ひつぎ)は同じものを指しますが、意味は少し異なります。棺桶は単に死体を入れる箱を指しますが、柩という言葉には箱だけでなく死者に対する畏敬の気持ちが含まれると思います。厳粛な葬儀の場で「今、棺桶が出てきました」なんて言えば不謹慎だと思われるでしょう。

 自衛隊を暴力装置と呼んだのは影の首相とも言われた民主党の実力者、仙石由人元官房長官であります。ならば警察も暴力装置であり、自衛官や警察官は暴力官あるいは暴力隊員ということになります。暴力装置という言葉は左翼で広く使われていたもので、全共闘出身の仙石氏にとっては親しみ深いものなのでしょう。しかし自衛隊をわざわざ暴力装置と呼べば、自衛隊に対する強い否定感情を表したものになります。政府の中枢にいる人間がこれでは困るわけです。本来は国を防衛するのに必要な組織なのですから。

 仙石氏の頭はまだ赤く染まっているようです。「25歳のとき左翼にならない人には心がない。35歳になってもまだ左翼のままの人には頭がない」という言葉があります(しばしばチャーチルの言葉として紹介されますが、事実ではないようです)。

 共産主義は理想を求める若い人にとってたいへん魅力的な考え方ですが、まともな頭の人であれば35歳ともなると人間の性格や現実の社会を理解でき、その実現可能性に疑問を持つようになる、というのがこの言葉の意味でしょう。納得のいく表現であり、実例もしばしば目にします。もっとも仙石氏は35歳を優に超えておられるようです。

 ついでながら大江健三郎氏などの「9条の会」の呼びかけ人の平均年齢(結成時)は77歳であったとか。「平和を愛する諸国民の公正と信義」を信頼される大江健三郎氏らには、今の中国や北朝鮮との関係についてのご高説を是非とも賜りたいものです。

 「自衛官の子供に対して『あなたの父親は人殺しを仕事にしている』と言った教師がいた、というような話はよく伝えられていますが、実際にそういう雰囲気がありました」

 これは自衛官を父に持つ野田元首相の話ですが、無垢な子供から教化しようとする日教組の戦略を示しています。子供時代に刷り込まれたことは簡単に消えません。ソ連の崩壊、中国のベトナムへの軍事侵攻などでダメージを受け、共産主義を実現しようと本気で考える人は少なくなりましたが、その独自の世界観は根強く生き残っているようです。

 自衛隊を暴力装置と呼ぶように、左翼は独特の世界観、価値観を持っているため、普通の人とは話が噛みあわないということをしばしば経験します。そもそも事象に対する認識が異なるわけですから、噛みあわないのも当然です。

 35歳を過ぎても「そのまま」の人が少なくないため、合意されることのない議論は無用な混乱の原因のひとつになっています。話が噛みあわない、通じないということで思い浮かぶのは現在の中国、北朝鮮との関係です。

 自衛隊の護衛艦に火器管制レーダーを照射した問題に対して、中国はこれを否定し逆に日本の謀略だと非難しています。お国柄とは言え、これでは話が成り立ちません。拉致問題や大韓航空事件、核開発疑惑の北朝鮮に至っては嘘があまりに多く、信用がないため話にならない状態です。これらの国に共通するのは嘘が多いことと軍事優先の国であることです。そして奇妙なことに、どちらも共産主義国であることです。

 また旧ソ連ともなかなか話が噛み合いませんでしたが、最近はずいぶんマシになってきたようです。 マーガレット・サッチャー英国元首相は当時のソ連のゴルバチョフ第一書記を「彼となら話がができる」と評したそうですが、これはそれまでのソ連代表とは話が出来なかったことを示しています。話のわかるゴルバチョフはソ連を崩壊させてしまいましたが、話のわかる首脳と旧ソ連の共産主義体制の両立は恐らく無理であったのでしょう。

 共産主義国といってもベトナムのように友好関係にある国もあります。すべてとは言えませんが共産主義という独自の価値観、あるいはその体制を維持するための考え方が相互理解を妨げているように思えます。これは宗教の違いが価値観の違いを生み、相互理解を困難にして、対立を深めていることと同様の現象です。マルクスの亡霊と言ってもよいでしょう。