噛みつき評論 ブログ版

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日韓対立におけるメディアの貢献

2013-09-23 10:09:09 | マスメディア
 対立してもロクことはないとわかっていても、韓国との関係には一向に改善の兆しが見られません。韓国を嫌悪する一群の人々は昔から存在していますが、最近は韓国に親近感を持っていた人々にまで嫌悪感が広がっているといわれています。私も韓国は北朝鮮に劣らず話のわからない国だという印象が強くなりました。

 しかし、ある国民が短期間に憎らしい性格に変わったり、礼を忘れてしまったりすることは考えにくいことです。とすれば急激に変わったのは報道であり、報道が作り出すイメージであると考えることができます。

 そのきっかけとなったのは昨年夏の李明博前大統領の竹島上陸ですが、その後の展開は売り言葉に買い言葉、憎しみの連鎖が続いているような観があります。憎まれ口は関係悪化の主因ですが、国と国との関係で憎まれ口を叩くのはマスメディアです。口は災いの元なり、です。

 日本のメディアは一見、抑制的に見えますが、韓国のネガティブなニュースを多く、大きく取り上げて興味をかきたてている可能性があります。韓国嫌いの読者には韓国のネガティブなニュースが受けるからです。それでなくても、日本ではダイオキシン騒動や食品偽装騒ぎのようにすべての報道が同一方向に流れることは経験済みです。

 つまり日本と韓国のマスメディアは両国の関係悪化に協力しているというわけです。嫌悪の拡大再生産ですね(まあ貢献度は韓国メディアの方が上だと思いますが)。メディアにとっては、勇ましい記事を書くことがそれぞれの読者を喜ばせ、営業的には「正しい方法(*1)」なのでしょうけど。

 まるで犬猿の仲の人間のように国全体が感情的に対立し、まともに話し合いさえもできないとはずいぶん子供っぽいように感じます。これと対照的なのが米国とロシアです。CIA元職員の引き渡しやシリア問題で対立していた両国がシリアの化学兵器問題では協力して解決する方向に向かいました。大人の関係ですね。

 自国民が相手の国を憎いと思っていれば、政府は相手国に対し強硬姿勢を貫くことで国民の支持が得られ、逆に妥協をすることは困難となります。メディアが作り出す相手国のイメージがその政府の外交政策に強く影響します。

 こんなとき、双方のメディアが多少意識的にでも相手国の良い面を報道するようにすれば結果はずいぶん違ったものとなるでしょう。「親しい関係」までは無理としても感情的な対立のない普通の関係になればよいわけです。

 また後の調査で否定され、本人も創作だと認めた吉田清治の著書や証言を愚かにも信じ、従軍慰安婦問題を執拗に取り上げた朝日新聞、「日本の右傾化」を懸念する報道をして、韓国をいたずらに刺激した左派メディアは、両国の対立に大きく「貢献」していることを自覚していただく必要がありましょう。表の顔とは裏腹に、彼らの本心は対立を願っているのでしょうか。

(*1)1931年から44年にかけて新聞各紙は勇ましい記事で戦争を煽り、大きく部数を伸ばしました。首位であった毎日は240万部から320万部へ、朝日は140万部から370万部へと大躍進を遂げました。とくに朝日は戦争に便乗した、軍需産業顔負けの「偉大な勝者」なのです(部数は中央公論新社「検証 戦争責任Ⅰ」171ページのグラフから読み取った概数値です)。