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嫉妬

2013-10-21 00:22:12 | マスメディア
 シェイクスピアの「オセロー」は嫉妬を主題にした悲劇です。イアーゴーの奸計によって、オセローはその若妻デズテモーナの不貞を疑い、遂に殺害してしまいます。やがてイアーゴーの計略、そして妻の無実を知ったオセローは無念の自決を遂げます。

 物語の軸になるのはオセローの嫉妬ですが、イアーゴーのオセローに対する恨みもまた嫉妬によるものと考えてよいと思います。シェイクスピアは嫉妬という動機が普遍的なものであり、時にはそれが重大な結果をもたらすものであることを示したかったのではないでしょうか。「嫉妬」という文字は両方とも女偏であり、嫉妬は女の特性かと思いがちですが、これは男の嫉妬の物語です。

 嫉妬は女のものであると思うのは男の嫉妬が比較的目立たないためだと思います。嫉妬は本来、見苦しいもの、格好悪いものですが、男の嫉妬はいっそう見苦しいという認識があって、男は嫉妬心を必死で隠してきたからでしょう。

 シェイクスピアは嫉妬を「人の心を食い荒らす緑色の目をした怪物」と呼びつつ、人間の数ある動機の中で重要な位置を与えています。しかしとても不快で見苦しい動機なので、現実の世界ではひたすら隠され、あまり表面には現れません。だがそれは人の主要な動機のひとつであり、不可解な行動の裏には強い嫉妬が隠れている例が少なくありません。

 同じような貧しい暮らしをしていた隣人が急に金持ちになったりすれば、嫉妬心が起きる条件ができます。嫉妬心は身近の者、同列の者の幸運に対してより強く生じ、遠い者、質的な差の大きいものには起きにくいと思われます。また相手が嫉妬の暗い炎を燃やしていても、嫉妬される側はそれに気付かないことが多いようです。嫉妬を表に出す人はあまりいませんから。

 さて、お隣り国々との関係ですが、何かと話が噛み合わず、友好的な関係が築けません。我々から見ると、彼らの行動は理解し難いものに見えます。歴史的な被害者意識や文化・国民性の違いから説明されますが、必ずしも納得できものではありません。国と国の関係にも嫉妬があると考えれば、理解できる部分が少し広がるかもしれません。