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安全保障問題を報じないメディア

2020-01-05 22:10:24 | マスメディア
 週日の毎朝8時から、地デジ民放各局はワイドショーをやっている。少し前まではどこの局も「桜を見る会」ばかりをやっていた。他にも芸能人の違法薬物使用問題など、まあどうでもよい問題ばかり取り上げている。逮捕された芸能人たちに中毒者の印象はなく、ちゃんと仕事をこなしている姿にも違和感がある。とにかく、これを見ていると日本はまさに天下泰平、なんと平和な国なんだろうと思ってしまう。

 ところが、同じ時間に放送しているNHKのBS「キャッチ!世界のトップニュース」をみると全く別の世界が映し出される。戦乱、難民、飢え、人権抑圧、派遣争い、軍拡、など平和とは程遠い世界の現実である。むろん世界がすべてそうではない。平穏な状況はニュースにならないので、それは割り引く必要がある。それにしても地デジ各局の映し出す世界との差は驚くほどである。

 1月3日、イランの革命防衛隊の司令官がアメリカによって殺害され、直後に原油価格は約4%値上がりした。4%は戦争リスクが数値化されたものだと言っていい。そのリスクは日本経済がひっくり返るリスクでもある。ペルシャ湾からインド洋、南シナ海を経るシーレーンのどこかに戦争が起きれば日本は大混乱に陥る。エネルギー安全保障や食料安全保障に必要なシーレーン防衛が現実に可能かという問題は切実である。「桜を見る会」より重要なことがいっぱいある。

 日本の周辺国、中国の急拡大は言うまでもないが、北朝鮮、ロシア、そして韓国までが軍事力の増強に熱心である。とくに中国の国防費は約20兆円と日本の約4倍になった。韓国のGDPは日本の約1/3だが、国防費は日本とほぼ同じになった。日本の防衛予算はこの25年間、ほぼ横ばいであり、それは危機感の無さの反映である。日米安保のおかげでもあるが、いつまでもというわけにはいかない。彼我の軍事力の相対的な差の著しい変化に注目すべきである。

 軍事力の強化には莫大なコストがかかるにもかかわらず強化するのは明確な目的があるからである。攻撃しそうな国が近くにある場合、強い軍事力は戦争抑止力として働く。しかしそれ以外の場合、軍事力の使い道は攻撃か威嚇しかない。それが有益だと判断した上の軍拡なのである。

 周辺国がそろって軍拡に走ると、その先にどんな危険があるか、誰にでもわかる。問題はこのような国際環境の変化が十分報道されず、認識が広がっていないことである。むろん日本が攻撃を受けない可能性もある。しかし可能性が少しでもあれば対処するのが安全保障である。安全が敗れたときの被害が甚大であるからだ。

 世論形成にもっとも大きな影響力をもつ左派系テレビ・新聞の姿勢が日本が今後直面するであろうリスクを隠しているように思う。憲法9条を守っていれば平和が保たれるという妄想を信じる立場では、日本に攻めてくる国は存在しないと思わせる必要がある。従って安全保障のリスクを認識させるような姿勢は取りたくないわけだ。周辺国の軍事力強化も最小限の報道しかしない。

 しかし周辺国が挑発的行動に出たとき、慌てて抑止力を強化しようとしても間に合わない。左派メディアの妄想のおかげで日本はより大きな安全保障のリスクにさらされる。平和を愛する左派メディアのおかげで日本は悲惨な戦争の危険が増すことになる。実に皮肉な、有難迷惑な話である。


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