想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

森の猫知恵

2012-08-20 10:38:13 | Weblog

まさか江戸が縁側に子どもを置いて居続ける
とは思わなかった。正直困惑しているのである。

子猫は栄養失調が原因か、目やにがひどくて涙目に
なっていたが、日に三度、縁側食堂でご飯を食べて
だんだん治ってきている。江戸も出かけもせず、
ここで寝起きしているのであるが…

ある朝、うちのベイビー、図体が大きな方のベイビー
がハアハアと荒い息をたてるので起きていくと、
廊下がなんとなく散らかっていた。
干してあったタオルが落ちていたり、ソファに脱いだ
ままだった靴下が片方だけ廊下の途中に移動している。

縁側の端のサッシ戸がわずかに開いているのが見えた。
アレ~、開けて寝たのか、と驚いたが、まさかそんな
ことはしない…はずだが。

猫が器用に戸を開け閉めする知恵があることは動画
で何度も見たことがある。
しかし、江戸と子猫が開けたりするとも思えなかった。

さてご飯たべますか、と戸を開けると江戸がスリスリ
と寄ってきて朝の挨拶というか、飯時の挨拶をして、
その脇に子猫もひっついてみゃあみゃあと声を上げる。
最初は遠くで見ていて私が引っ込んでからでないと
寄ってこなかった子猫も数日で慣れ、母親の真似を
して催促するのである。
少々迷惑な感じがするくらい、どんどん入ってくる。

クロ2、よりチビな方は臆病でいつも隠れるように
後ろにいたのだが、その時は顔を並べていた。
大小三つの身体がみな、手からお皿が離れないうちから
我先に食べようとして身を乗り出してくる。
そして事は起こった。



クロ2は小さいので隙間をかいくぐりお皿の前方を
陣取り、さあー一番だぞーと勢いづいたはいいが、
前に来過ぎて部屋の中へ入ってきた。
入ったままUターンせずに廊下を走りだしたのだ。
お皿はすでに縁側に置かれ、母猫江戸とクロ1は
黙々と食べ始めているのにチビは廊下を右へ左へと
走っている。出口がわからないのか?

座敷を奥まで二、三周して廊下の端の棚の奥に収まった。
ああ、昨夜、戸を開けた犯人はコヤツだな‥
昨晩遊んだからまた入って来たのだろうと推察した。

すでに食堂の皿は空っぽになってお替りを催促される
段になっていたのだが、クロ2はなかなか棚の奥からお出
ましにならない。放っておくと出てくるだろうと思ったが、
出ない。丸く小さくなっているのが丸見えなのだが。
逃げられるように通路を作っておいた。

猫にかまいすぎると図体のでかい方は一応ボクんち
と思っているわけで、やきもちをやく、大人げなく。
よって子猫にかまわないふりをし、ボクちゃんの朝の用足し
を終え、朝ごはんにつきあう。

そろそろと出てきたクロ2は脱兎のごとくそのまま庭を
走り抜けて行った。子猫は小さな足でよく駆ける。
江戸たちはゆったりとお皿をまたぎ、その後を追っていく。

そんなこんなで子猫の風邪もだんだんとよくなり、涙目
も回復してきた。
江戸は顔面を両手で挟んで「おにぎり」をしても嫌がらなく
なって、なついている風にみえる。
ダニよけの薬をやりやすくなってよかった。
しかし、家猫ではなく今も森猫であることに変わりはない。
ご飯たべにきているだけ、ってとこだろう。

サツバツとした東京の日々をつかのま忘れさせてくれて、
お互い様というところかな。
放射能のなくなった土と新しく芽生えた草の上でゴロゴロ
して、そこでしか過ごさないのは自然の中で生きる感覚が
研ぎすまされているからなのかしら。

人間は情報とかいうものに頼って、偽物に振り回されたりも
して哀れなものだが、森の子どもたちはいわゆる猫の玩具や
オヤツには見向きもしない。風で揺れる草の穂に小さな身体を
巻き付かせて戯れていた。
























コメント
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