キャプテン・トム・ムーアは昨年4月30日に100歳になった。彼は20代を英国陸軍キャプテンとして、ビルマ戦線で日本軍とたたかって、生き残った人。
戦後いろいろな職業についていたが、建築材料の会社を立ち上げ財をなした。若くして知り合った英国人女性とは20数年結婚していたが性生活が一切なく50代で離婚し、再婚した奥さんとは2人の娘さんに恵まれた。
娘さんが成人したのち退職後を夫婦二人でスペインで過ごしていたが、奥さんが記憶障害になり帰国してケアホームへ入れたものの先立たれてしまった。
その後娘さんの家族と同居して幸せに暮らしていたのに、99歳でキッチンの床で転んで骨盤骨折。一時は危篤状態になったそうだが奇跡的に持ち直し、自宅療養をしていた。
昨年1月家族の間ではトムを励ます意味で自宅の裏庭(幅が20-30メーターはありそう)でと、100歳になる4月30日までに歩行補助器で往復1000回を目標に歩いたら、1000ポンドのお金をNHSへ寄付するとの話がまとまった。
この話がインターネットで世界中に流れ、キャプテン・トムは一躍時の人になった。世界中から寄付が相次ぎ、彼の誕生日までに3千3百万ポンド(約4億7千8百万円)が送られ彼は一命をとりとめたNHSに対し感謝を込めて贈った。
彼の誕生日には英国空軍が戦時中に使用した古い戦闘機2機を彼の自宅上空を飛ばせ、エリザベス女王やボリス・ジョンソン首相のメッセージが届いた。世界各国からも数十万通の誕生カードが寄せられ、近くの学校の講堂一面に並べられた。
この寄付金は個人のチャリティーの金額としてはギネスブックレコードだった。
世論は彼の偉業に対して彼にサーのタイトルをと、昨年7月エリザベス女王からサーの称号が送られた。
このキャプテン・トムはやっぱり普通の人ではないと思う。英国のテレビ局ITV の一時間のインタビューではユーモアに富んで観客を引き付ける素晴らしい人柄で、とっても100歳に見えない。
この100年間で数十人の首相が変わったけど誰が一番良かったかとインタビューの人が聞いたら、 もちろん今の首相だよ、彼が100歳のお祝いしてくれたもの、それまでの人は誰も僕がいることを知らなかったから。
貴方のバケツリスト(死ぬまでにしたいことのリスト)にはいったい何が書いてあるかとの質問に答えてアメリカへ行ってルート66で運転したい。と、まるで若者での様。
クリスマスにバケツリストの一つで家族でバーベードスヘホリデーに行って来た。
帰国して1月に肺炎で医者にかかった際、コロナに感染していると言われワクチンを受けることができなかった。
今年1月31日日曜日、キャプテン・サー・トムはコロナで入院が報ぜられた。しかしその時は重症でないと報道されたにも関わらず、2日後火曜日には亡くなった。
彼にとっては長く苦しまず、あっという間になくなってしまって家族もみなよかっただろう。でもこうしてみるとコロナは恐ろしいことがよくわかる。体の弱っている人には急激に悪化することがよくわかる。
新聞にもこの国の宝を亡くしたと報道されたが、本当に惜しい人だ。
ご冥福をお祈りします。