林 住 記

寝言 うわごと のようなもの

悩みのるつぼ

2010-04-13 | 拍手

才能、家族、職場、運など全てに恵まれ、性格は頗る良く、夢まで叶えてしまい、凄く幸せな宇宙飛行士。3度の特製料理、好きな曲で毎朝起こしてくれる楽しい出張。無重力だから軽作業。それで年収1600万円超とか。
あんな連中、モハヤ人間じゃないや。

逆に、全く見知らぬ人や好きではない人の不幸や悩みを聞くと、ホッ、とする。
そしてホッとするために朝日新聞の「悩みのるつぼ」を毎週欠かさず読みます。先生たちの回答はどれもこれも、なるほどなぁ、と感心する名回答。
中でも車谷長吉さんの回答が凄い。4月3日、悩める40代女性の質問は......。

 矢鱈に干渉する義父母。多忙ですれ違う夫。孤独感から神経を病み人生は滅茶 苦茶です。
 現在は自分の存在を消して、義父母と同居している。いずれ義父母を看取らね ばならない。
 それを頭では分っているが、自分を納得させられない。どうして義父母の面倒をみなくてはいけないのですか?

車谷さんの「回答」の要点は......。

 人は他の生き物を殺しそれを食うて生きています。
 直接殺さないでも食べている人には原罪があり、原罪の無い人はこの世にいません。

 頭では理解していても、心で納得できないことが人には多くあります。
 どうすれば心で納得できるか。その方法は私には分りません。

 義父母を看取るのが厭なら逃げ出す以外に道は無い。
 逃げ出せばホッとすると同時に、今より更に苦しい思いをするでしょう。

 人間としてこの世に生まれたことには一切の救いはありません。
 あなたとご一家の人には救いは無いと思います。それを覚悟なさるのがよいと思われます。

車谷さんは相談者に対する回答をしていないのかもしれない。
だが、人生はこんなものだろうな、と安心させる不思議な救いがある。
宇宙飛行士の目が眩む幸せは神経に障る。車谷さんは蝋燭のように陰が濃い明るさである。やはり蝋燭の光の方が落ち着きますね。

ところで車谷さんは、回答よりもご自分の惨憺たる過去を語ることが多い。
この回でも父の狂死、母の面倒を看ている弟に拒絶されているなどを。
また、救われたくて四国遍路をしたが、結局、人間悪を抉り出す小説家には救いはないことがわかった、とも。

ただ、遍路道を一人で補修している初老の人に出会い、言葉は掛けられなかったが仏さまに出会ったような気がし、木の陰から土下座して拝んだ。それを思い出すと今でも涙が滲んでくる由。
ここは、悲惨な過去と厳しい現在をさらけ出し、質問者にホッと息をつかせるつもりかもしれませんね。
この手法は悩める人に対する高等戦術と思われますが........。

元デブ岡田斗司夫さんのブログにも、車谷さんの物凄面白さが書いてあります。
挿絵は3日の「悩みのるつぼ」からお借りしました。

なお10日掲載分は、男前で有能で優しいが何度も浮気をする夫に復讐したい、という50代の主婦。
経済学者である金子勝先生の回答が傑作でした。
森生はいま、デフラグ(恋ではありませんよ)に悩んでいる。
岡田斗司夫先生に相談しようかと思ってます。



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