時々画像に使わせてもらう切り絵は、滝平二郎の作品です。
使っているのは「こどもの四季」という河出書房新社から出版された本の挿絵を使っている。他に「きりえの世界」(同社刊)も持っているが、箱入りの重い本なので複写し難く、まだ使ってはいない。
滝平の切り絵は、68年に加太こうじの朝日新聞連載コラムの挿絵として評判になり、この本が生まれ、あちこちで作品展が開催された。
森男が勤めていたところでも、作品展を開催したことがある。
そして、滝平先生が若い秘書の女の子を連れて、会場に来て下さった。優しそうな人だし、礼儀として、お茶にお誘いした。
先生はメニューを見て、しばらく考えてからカキ氷を注文した。
先生は出てきたカキ氷を大急ぎで食べ始めたものだから、ジーンと頭に沁みて、両手で顔を覆ってしまった。
そして、痛みがおさまると、カキ氷の半分を、秘書のカキ氷の器に移して、これ、食べてね。
先生の切り絵も好きだったが、全く飾らない、ゆったりとしたお人柄が、絵以上に好きになり、先生の本を続けて2冊も買い込んだわけである。
(「きりえの世界」裏表紙から)
「こどもの四季」の文を担当した加太こうじは、18年東京浅草生まれ。少年時代から紙芝居の作画に従事し、紙芝居衰退後、60年より文筆業。
滝平二郎は21年に茨城県に生まれ、木版画から切り絵に転じた。
あとがきによると、二人は年こそ近いものの、町育ちに対し田舎育ち、せっかちとのんびり、肉好きと野菜好き、と性格や好みは大分異なるものの、昭和の戦争の時代に青春期を過ごしたという共通点から、古くからの知己のように親密な仕事を続けた。
この本の内容は、二人が過ごした古き良き日本を、子どもの遊びと生活を通して提示し、遠まわしに、公害列島化した日本を批判したものである。
大きく春、夏、秋、冬と分け、夫々にノスタルジックな文と切り絵が付き、夫々の文末には事物起源を書き加えてあり、勉強になる。
例えば夏には以下の項目がある。
・菖蒲湯・かしわもち・水雷艦長・リボン・雨ふり・蛙・夏服・桑の実。ドジョウ・
・杉鉄砲・地蔵盆・夏休み・かいぼり・河童・草ずもう・せみとんぼ・かみなり・
・昼寝・蚊いぶし・夕涼み・花火・えんにち・ほうずき・灯籠流し・お化け・蛍・・
森男は二人より二回り年下。中途半端な谷合いで育ち、少年時代は戦中戦後のため食うや食わずで、このように遊ぶことは少なかったし、多くの年中行事は中止されていた。
しかし、書いてある事や、挿絵に大いに懐かしく、また共感するのである。
そして小声で言うと、「林住記」に使えるネタが多いのです。
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