古くからの友人の奥さんから電話があった。
友人が亡くなっていた。
年末年始、私は入院していたので、年賀状が出せなかった。
退院してから、今年は年賀状をくれた人にだけ、お礼と遅れた理由とお詫びをしたためて、2週間遅れの年賀状を出した。
多くの人が電話や葉書でお見舞を下さったが、筆まめな彼からは何の音沙汰も無く、また外国の砂漠にでも出かけたのか、と思っていた。
ところが、奥さんによると、心筋梗塞で急逝し、年賀状が届いた日には葬儀は終わっていたのである。
直ぐ電話を、と考えたそうだが、私のことを慮って知らせることを控えていたそうだ。
彼からの年賀状には、今年は是非来い、と添え書きがあった。
心臓を患っていることを以前から聞いていたので、暖かくなったら是非寄らせて欲しい、と私の年賀状には添え書きをしておいたのに.......。
彼の家は、車で1時間半の荒川沿いの河川段丘上にある。
屋敷内だけでも、サボテン栽培用のビニールハウスが3棟もある。
彼は県サボテン界の重鎮だった。
***
私と同い年だが、彼の入社は1年遅れだった。
有名大学を卒業して、知識は広く深く、到底敵わなかった。
普通の会社なら、順調に栄進したのだろうが、進歩的文化人を装う独裁者が君臨していたわが社では、拙速とケレンが尊ばれた。彼のような教養人は敬遠された。
彼は出世競争からは超然としていて、私は「白雲斎」とからかったものである。
同じ職場で働いたことは無かったが、いつの間にか親しくなり、会話は楽しかった。そしてサボテンに熱中しているのを知った。
研究熱心と温厚な人格でいつしか県のサボテン界の顔になっていた。
激しい競争に疲れた上役たちも、羨む生き方をしていた。
過酷な出世競争を勝ち抜いて、子会社を大企業に育てたかっての上司が、引退後大勢の元部下を伴い、友人の圃場を訪ねた。晩年の生き方を学ぶために。
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亡くなったのは、去る12日、東京大学構内のレストランで行なわれた「日本多肉植物の会」の新年会会場だった。
来賓として上々の挨拶を終えて、演壇を下りた直後倒れ、心肺が停止した。
付近に最新の医療施設がありながら、なす術も無く、帰らぬ人となった。
死因は心筋梗塞だった。
夫人によると、死に顔は穏やかで、微笑んでいるようだった、という。
居合わせた方々も、見事な一生だった、と羨んでいたそうだ。
何事も終わりがある。
会社では恵まれなかったかも知れないが、好きな道を究め、多くの人に慕われた。終わりが良ければ全て良し、として諦めるしかあるまい。
***
サボテンのことを仙人掌とも言い、サボテン愛好者の世界を「仙界」というようだ。
きっと白雲斎は、仙界でサボテンに囲まれて、痛いトゲトゲをものともせず愛でているのではなかろうか。
合掌。
白雲斎が愛した「大竜冠」。
生きて行くのが下手だったのでしょうね。
それもあの独裁者のいらっしゃったS社では当然ですね。立派な挨拶を終えたところで人生を全うするなんてのはなかなか誰にでも出来ることではないですね。
確かにうらやましい生き様ではあります。
森生さんよりはまだ若い年代に属するわたしですが、
いずれはこの白雲斎さんのような生き方、いや死に方
が理想になるのでしょうね。 それまで頑張って
商売に励むつもりでおります。
投稿最後の四桁読み取りを記入していつものくせで
かってにエンターしたら、知らぬ間に三件分送信
していたようです。お見苦しいことで申し訳ありませんでした。
いらっしゃいませ
「見ているだけで楽しくなります.......」
と書かれたコメントは この記事に合いません
また ご案内のHPは シッカリした役に立つもの と分りましたが 要するに高額な書籍の通販です
弊ブログは 原則として 広告はお断りしておりますので 誠に勝手ながら 折角のコメントは削除させて頂きました
gooblogメのコメント欄は本当に書き難いです
番号なんか入れさせて 私も時々間違えてしまいます
きっとチンピラがコメント欄を設計したんでしょうね
ところで
生き方がヘタ だったわけではありませんよ
出向先の関連会社を倒産させ 銀行を破綻させたのは 誰あろう この森生が一役買ったんですから
立派に仇をとって 残った親会社は 未だにフラフラですからね
肝心なことを書き落としました
若い年代と言っても 四捨五入すれば同じです
ご商売はほどほどに 身体に気をつけて下さいね