高麗の里には、一度も歩いたことがない小道が、まだいくつか残っている。
ただ、知らないお宅の間を通る小道を先に進むのは、空き巣かと怪しまれそうで、入ったことがなかった。
そんな弱気を切り替え、かわせみ街道を東側に外れた辺りを徘徊した。近くの高麗川は深い林に遮られて見えない。
子どもは学校へ、奥さんはパートかカルチャーか、どの家にも人はいない。案ずるより入るは易しだった。
家々の軒先を通りすぎると、視界が開けた。
見慣れた風景とは異なり、赤城山麓か浅間山麓でよく見かけたホンモノの里山の趣がある。
軒を接する文化住宅の裏には、盛りを過ぎた小菊が咲く菜園が広がっていた。
野良じぃが居れば親しくなって、野菜を分けていただくつもりだったが、ここにも人はいなかった。
空き巣はともかく、ハクビシンの所為にして、大根一本ほうれん草一株くらいならニンゲンだもの、構わないよなぁ。
.......角の文化住宅で狸爺が辺りを見張っていたので、そういう恥ずかしいことはやめにした。
小道の入口に戻り、折れ曲がった坂道を下りると高麗川に架かる高岡橋である。
秋の陽は釣瓶落とし。川面には夕暮れが漂い始めていた。
121123
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます