大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・01「停まれーーーーーーっ!!」

2017-12-28 15:18:00 | ノベル

イスカ 真説邪気眼電波伝・01

「停まれーーーーーーっ!!」

 

 文化祭を三日後に控えた教室は茜色の夕陽に染め上げられ、カラスが鳴いたら仲良くおてて繋いで帰りたくなるような穏やかさだった。

 

 だが、それは管理職のアリバイに、後ろ手組んでのんびり校内を巡視している、定年を数カ月後に控えた校長の目に映った――こうあって欲しい――願望というフィルターを通した光景に過ぎない。三十七年にわたる教師の経験で、もう二三秒見ていたら穏やかな夕陽に化かされることも無かったかもしれない。

 

 教室にはクラスの半分の十八人と担任の香奈ちゃんが重苦しい空気に押しつぶされそうになっていた。

 

「……もう一度やって」

「無理よ……やるたんびに離れていっちゃうんでしょ」

 佐伯さんはゴスロリ衣装の裾を広げ、床にしゃがみ込んだまま立ち上がろうともしない。

「ここんとこ決まらなきゃ、ラストシーンの書きようがないよ」

 静かな声だが、門田が切れかかっているのは誰もが分かっている。香奈ちゃんは落としどころを探るように腕組みして天井ばかり見ている。クラスのみんなは、痛々しくて床に目を落としたりアサッテの方を見たり、てんでバラバラだけど、佐伯さんと門田の方を見ないという点では一致している。

 

 ようは行き詰ってるんだ。

 

 嫌がる門田に脚本と演出を押し付け、これまた気の進まない佐伯さんの主役を決めたのが一か月半前。

 脚本は『MASCHERA 〜堕天した獣の慟哭〜』というタイトルがハナから決まっていた。数年前に流行ったアニメの劇中劇、なんとなくカッコいいということだけで、中身を吟味することも無く多数決で決まった。佐伯さんはお母さんがクール系の女優さんで、母親譲りの美人だ。佐伯もお父さんが作家。なんとなく、この二人に任せておけば出来るだろうという雰囲気で決まってしまった。

 二週間前には脚本も演技も行き詰まっていたんだけど「じゃ、大道具とか衣装とか先にがんばったら雰囲気もできるんじゃない?」香奈ちゃんの教師らしい一言で二週間持ちこたえたけど、ここにきてデッドロック!

 本が書けてこないからと佐伯さん、主役がイメージにのってこないからと門田。

 むろん面と向かって言うことはないけど、周りの人間は思っている。思っているから、それぞれ門田と佐伯さんの肩をもって、より空気を悪くしている。クラスは、ここに居ない半数の無関心と、もう半分の門田、佐伯派に色づいて危機に瀕している。

「じゃ、キャストと演出だけ残って続けよっか、みんな残っていてもプレッシャーなだけだし」

 天井に向けた視線を下ろして香奈ちゃんが言う。みんな控えめにホッとして、帰り支度を始める。

 気がとがめないことも無かったけど、残っていてもなんのプラスにもならない。オレは他の十七人とともに教室を出た。

 

 昇降口に降りると、図書室にでも居たんだろう、西田さんが靴を履き替えていた。

 

 西田さんは二学期になって転校してきた。

 静かな優等生で、あまりしゃべらない。

 女子は下の名前で呼び合うことが多いんだけど、西田さんは佐伯さんと並んで苗字で呼ばれている。

 豊かな黒髪は前髪を切りそろえたロング、制服のリボンを緩めることも無く、黒縁の眼鏡と相まって表情はうかがえない。

 笑うと可愛いという男子もいるが、オレは笑顔どころか「おはよう」と「田島君掃除当番よ」という言葉以外聞いたことが無い。

 

 近寄りがたいので二三秒タイミングをずらして昇降口を出た。

 

 時計塔まで来たところで悲鳴が上がった。

 発見したのはランニング帰りの女子テニスの集団。校舎に背を向けていた下校する生徒たちも女子テニスの指さす屋上に目を向けた。

 佐伯さッん…………!?

 佐伯さんがゴスロリ衣装のまま屋上の柵を超え、屋上の縁に立っている。

――飛び降りるつもりだ!――

 秋の夕陽は見渡すものすべてを茜色に染め上げているが、ゴスロリ衣装は佐伯さんの闇そのままのように漆黒だ。

 

 キャーーーーー!

 

 再び女子たちの悲鳴が上がった。

 女子たちは、佐伯さんが跳ぶ前の気の張りつめ方で察したんだ。男子たちの「ウオーーー!」よりも一瞬早い。

 スカートを気にした佐伯さんは両手を広げ、真っ逆さまに墜ちていく。

 だれもが地面にたたきつけられる佐伯さんの姿を思い浮かべ目を背けた瞬間に、裂ぱくの叫びが聞こえた。

 

「停まれーーーーーーっ!!」

 

 佐伯さんは、二階と三階の中間で水泳の高飛び込み選手のように静止していた。

 

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高校ライトノベル・小説・大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・6

2017-12-28 06:45:36 | 小説・2

大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・6



☆あせってます

 先週は先輩の女優、坂東はるかさんが来てくれはって、半日いろんな芝居の基礎から、食堂のカラマヨ丼の話までして、テンション、モチベーション上がりまくりでした。
 せやけど、半日のことは、しょせん半日のこと。今週は、もう気持ちサゲサゲです。

 顧問の淀貴美先生と誓うた「ルピック氏を演る男子」が決まりません。

 11月のコンクールに何を焦ってと言われるかもしれませんけど。考えてください、野球部なんか半年ぐらいかけての調整は当たり前。甲子園行くような学校は、一年掛けて選抜メンバーのふるい落とし、癖の矯正やら、めっちゃストイックに、かつ長期的展望に立って練習やってます。軽音も『スニーカーエイジ』目指して、猛特訓やってます。
 演劇部は、どこもノホホンとしてるさかい、たいての学校はOHPが終わったあたりからの泥縄。みんながそないやさかい、なんとも思わへんねやろけど、それは、この一言。

信号、みんなで渡れば怖くない」

 みんなしょうもない芝居演るさかい、目立てへんだけ。せめて毎日放送の『ちちんぷいぷい』に取材に来てもらえるぐらいのココロザシがないとあかんと思います。ココロザシの裏付けは日々の努力。で、努力するためには、当たり前やけど「努力する人間」が必要です。おらん人間に努力のさせようもありませんでしょ?

☆で、考えてます

 女子二人でもやれる芝居。あたし三好清海と九鬼あやめのデコボココンビでも演れる芝居
 あたし的には、オールビーの『動物園物語』なんか演りたいんですけど、キャストを女子に変えての上演許可は、ごっついむつかしいらしいです。

 ちょい役一人入れて『すみれの花さくころ』も考えてます。この芝居は名古屋音大がミュージカル風にやったのをYOU TUBEで見てから惚れ込んでます。うちも坂東はるかさんが現役やったころに、本選まで行った芝居。ネットで検索したら名古屋のプロのオペラ歌手やら、北陸の劇団、関東の中学校でもやってる名作みたいです。下にYOU TUBEのショートカット入れときました。

     https://youtu.be/ItJpVtCcxMQ

 これクリックして見てください。後半1/4ですけど、あたしの感激分かってもらえると思います。

 せやけど、今年の審査員は、そのときの真田山の芝居をわけ分からん理由で落とした人です。やったら、また「作品に血が通っていない。思考回路、行動原理が高校生ではない」て言われるのん目に見えてます。
 え、その前に真田山は予選落ち? 縁起でもないこと言わんといてください。

☆近所の噂

 軽音が、午後6時を超えると近所から苦情の電話が来るらしいです。うちらとしては、両方の気持ちが分かります。近所の人には、ただの騒音。
 軽音は『スニーカーエイジ』がかかった命がけ。せやけど学校は冷房許可してくれません。唯一の例外は情報の教室。コンピューターがいっぱいあるんで、年中冷房。
 機械が冷房されて、生徒が熱中症寸前で練習やってても「がまんせい!」や。なんかひっくり返ってるような気がします。しません?

 で、熱中症で倒れる生徒が出て、マスコミがきたら「配慮が足りなかった」。で、もし、もし、まあ、そこまではいかへんやろけど死ぬような子が出たら「命の大切さ」いう城東区やない常套句。ほんで一分間の黙祷でおしまい。ちょっと言い過ぎました。淀先生ごめんなさい。

 で、昔は演劇部の発声練習がやかましいいうて苦情がきたらしいです。ええ時代やってんなあ。

 も一つ近所の噂。うちのブロックの某高校は部員ゼロやけど、連盟に加盟したらしいです。先生に聞いたら、大阪全体で、そういう学校が二十近くあるそうです。そんな学校含めて百何校かの加盟。ちょっと寂しいですね。

 試験中なんで、このくらいで。せやけど、試験中になると、こんなブログ書きたなるのは、イチビリか、勉強嫌いか。ちなみに後輩の九鬼あやめは、メール打ったら「先輩勉強しましょう」ええ子やけど、このニクソさはなんやろね?

 他の演劇部さんも、3校ほどはブログ続けてはりますね。たいがい一カ月ぐらいで止めてしまうとこが多いから、お互いがんばりましょね!

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 

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