鳴かぬなら 信長転生記
三蔵法師はただのオブジェだ。
二宮忠八が工夫を重ね努力の末に作りだしたハイパー紙飛行機を馬に変えた、その余りで造ったオブジェ。多少のギミックはあるが、せいぜいゲームのNPC。盗まれて惜しいものではないが、オブジェであるとバレるのはまずい。
三国志の中原に出て、魏王曹操を倒すまでは西遊記を続けなければならない。
「なかなか追いつかないブヒ、敵はもうじき砂丘の陰に隠れるブヒ」
「八戒、おまえが載っているからだウキ」
「これは変装ブヒ、体重は本性の市のままだブヒブヒ!」
「いや、八戒は大きいから風の抵抗が大きいッパ。少し前かがみになって風の抵抗を減らすッパ」
「了解ブヒ!」
ムギューー
「こ、こら押すな!」
八戒が真ん中なものだから、後の沙悟浄は平気だが、前の俺は馬の首と八戒の腹に挟まれて潰されそうだ。
「だ、だってぇ、ねえ、さっきみたいに空飛んで追いかけられないのブヒ!?」
『無茶いうな』
「なんか言った、ブヒ?」
「いや、緊箍児(きんこじ)だ、俺の頭の金輪だウキ!」
「あ、これって一言主だっけブヒ?」
『わしはコスプレの神じゃ、多少のギミックやエフェクトは付けてやるが、のべつ幕なしというわけにはいかん』
「だったら、どうするブヒ!?」
『知らん』
「俺が、下りて走るウキ!」
「「あ、そう!?」」
「素に戻って声をそろえるな! 俺は砂丘の向こう側に周る。上手くいけば挟み撃ちだウキ!」
「「じゃ、がんばって!」」
「こ、こら、放り出すなぁ!」
ズサ、ゴロゴロゴロ……
砂の上をしばらく転がると、きな粉餅のようになって走り出す。
さすがは孫悟空、けっこう速い。そして、きつい(;'∀')。
なんだか草履とりをしていたころのサルを思い出す。
サルは、俺の行くところには必ず付き添って走らせた。いつもニコニコ俺の後ろを走っておったが、あいつもけっこうきつかったんだな。
「一言主、俺は孫悟空だ。筋斗雲とかは使えんのかウキ?」
………………
そうか、一言主はコスプレ神、その名も一言、多くは喋らんというわけか。
仕方がない、金ヶ崎の退き戦を思えば砂丘一つ回り込むのは知れたこと。
ダダダダダダダダダダダダダ
濛々と砂煙を上げて砂丘を回り込む。
「敵は!?」
回り込んで鉢合わせした八戒・沙悟浄に叫ぶようにして聞く。
「砂煙が激しくてわからんブヒ!」
「足跡はハッキリしている、遠くではないッパ!」
追うぞ!…………叫ぼうとしたら、にわかに自分たちのところだけが、薄暗くなる。
「散れ!」
叫びながら振り返ると、山のような化物牛が飛び降りてくるところだ!
やられた(;゚Д゚;)!
こいつ、我々の目を賊に釘付けさせ、砂丘の上で待ち構えていたんだ!
グモオオオオオオオオオオオ!!
いかん、今度こそ押し潰されるぞ!
☆彡 主な登場人物
- 織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
- 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
- 織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
- 平手 美姫 信長のクラス担任
- 武田 信玄 同級生
- 上杉 謙信 同級生
- 古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
- 宮本 武蔵 孤高の剣聖
- 二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
- 雑賀 孫一 クラスメート
- 松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
- リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
- 今川 義元 学院生徒会長
- 坂本 乙女 学園生徒会長
- 曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
- 諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
- 大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
- 孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
- 天照大神 御山の御祭神 弟に素戔嗚 部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主