泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)
『君の名を』には五人の女の子が出てくる。
みすず(主人公の従姉) きらら(ギャル系) あいこ(お嬢系) はまり(オタク系眼鏡っ子) ゆうき(体育会系)
あいうえお順では、 あいこ きらら はまり みすず ゆうき
身長順では、 ゆうき きらら あいこ みすず はまり
胸の大きさ順では、 きらら あいこ ゆうき みすず はまり
家の近さ順では、 みすず ゆうき はまり きらら あいこ
五人も出てきたら混乱するので、メモにしてノーパソの横に置く。
五人は主人公と同じ学園に通っていて、主人公との関係は隣の従姉のみすずから高台に住むセレブで高嶺の花であるあいこまで、出発点はさまざま。
みすずは毎朝主人公を起こしにくるし、日によってはご飯まで作ってくれる。一時間やって分かったんだけど、なんと生活費もみすずからもらっている。主人公の両親は仕事で外国に行っていて主人公は一人暮らしをしている。俺んちは五人家族なんで、ちょっと羨ましい。両親から「くれぐれも雄二(偶然だろうけども俺の名前に似ている)のことお願い」と言われているので、うるさいくらいに世話を焼く。
他の登場人物も同じ学園なので、いろんなきっかけがあって主人公と親しくなっていくのだ。
一つひっかかった。
どうみても高校なのに、ゲームの中では、みんな学園と呼んでいる。
「起きろ雄二! 学園に遅刻するぞ!」とか「学園帰りに寄っていこっか?」とか、絶対学校とか高校とかは言わない。
こういうことに引っかかると先に進めないのが俺の性格。
いろいろ検索して分かった。
エロゲはZ指定どころか18歳未満は買うこともプレイすることも禁止されている。ま、そのくらいのことは分かる。
――なになに……未成年への配慮と高校生以下を性的な対象とすることは、法的にも社会通念上もはばかられるので、登場人物は全て18歳以上の設定になっています――
なるほど。
それから
『君の名を』がたまたまなのか、こういうものなのかエロシーンというのはなかなか出てこない。
淡々とした日常の中で、高校生らしい……って、18歳以上なんだけど、いろんな問題が起こってくる。
勉強、友だち、部活、アルバイト、文化祭、異性への興味と反発、先生や親の無理解などなど、あーそーだよなって事件や問題が起こってくる。
ある日なんか、こうだ。
通学途中できららが、大きな荷物を持ったお婆さんを助けているところを目にする。
「コラー! ざけんじゃねーよ!」
左折した自動車の尻に向かってきららが拳を上げる。
「お婆ちゃん、だいじょーぶ?」
「ええ、だいじょうぶ。ゆっくり横断していたものだから……」
「でも、お婆ちゃんのすぐ横をぶっ飛ばしていくなんてブチギレるよ!」
きららはお婆ちゃんの荷物を持って目的地まで付き添ってやる。
そのために遅刻し、朝礼の時に教室に入ってきて、きららは担任から叱られる。
「さーせんさーせん、マジさーせん」
ギャル口調でいなすきららに担任がマジ切れ。
これがフラグというものらしく、選択肢が現れる。
A:きららは叱られ慣れているので、ま、クラスの日常だと生温かく黙って見守る。
B:きららは悪くないので、見たことを正直に言って担任の先入観を解いてやる。
シグマを堂本のオッサンから庇ってやったことを思い出した。やっぱ、ここは正直に言ってやるよなあ。
Bをクリックして誤解だか曲解だかを解いてやると、休み時間に、きららから礼を言われる。
「人から、あんな風に言ってもらったのマジ初めて、ほんとありがとね」
きららの目は、びっくりするくらい素直だった。
こいつ、いいやつなんだ……。
それから、きららと話すことが多くなって、気が付くと友だちになっている。
――親に心配かけるわけにいかないし……下もつかえて……留年するわけには……――
苦しい息の下から電話してきたきららに……。
A:体が大事だから試験は休め!
B:よし、俺が送り迎えしてやる!
俺はBをクリック、自転車の後ろにきららを乗せて学年末考査の学校、いや学園にかっとばす!
38度の熱を出しながら試験を受けて、きららはなんとか及第点を獲る。
「ありがと雄二、妹や弟に『強いネーチャン』見せるだけでいいと思ってた、ほんとに進級できるとは思ってなかったよー、雄二、あたしがんばってよかった!」
俺は、もうきららに惚れてしまった(´;ω;`)ウッ…。
そして、時あたかも春休み、雄二ときららは結ばれる。
ここから初々しくも目くるめく18禁の描写が始まるのだ(*゚▽゚*)。
だけど、少しもイヤラシイとは思えない。それまでの二人の葛藤があれば、これは当然の帰結だと微笑ましくさえある。
「よかったなあ……」
思わず俺は呟いた。
その後いくつかの選択肢があってたどり着いたエンディング。
卒業後、晴れて二人は結婚。
最後の選択肢。
A:ここで見送る
B:もう少し手を繋いで歩く
俺は、あやまたずBをクリック!
すると後ろから車の気配。
おりからの雨で気づくのが遅れ、振り返ると間近に車が迫る!
「危ない!」
そう叫んで、きららは俺を突き飛ばし、きららは車に撥ねられる。
「あたし、あたし……最後まで、あんたの名を……大事な人だから『君の名』だね……言っていくね……そしたら……また……むこうで……結婚しよ……雄二……雄二………雄………ゆ……う……じ………」
きららーーー(⌯˃̶᷄ O˂̶᷄⌯)!!!!!
俺はノーパソを掴んで、画面に頬を寄せて、身も世もなく泣いてしまったのだった。
☆彡 主な登場人物
- 妻鹿雄一 (オメガ) 高校二年
- 百地美子 (シグマ) 高校一年
- 妻鹿小菊 中三 オメガの妹
- 妻鹿由紀夫 父
- 鈴木典亮 (ノリスケ) 高校二年 雄一の数少ない友だち
- 柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉
- ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任