大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

かの世界この世界:136『標(しるべ)』

2020-11-18 06:41:10 | 小説5

かの世界この世界:136

『標(しるべ)語り手:タングリス      

 

 

 ずっとヘルムを照らしてきましたが、ここまでです……

 

 ヘルム神の姿が薄くなってきた。

「あなたが消えると、この島は闇になるのか?」

「あなた方が思うところの闇ではありません、この世に光をあらしめているのは至高の神より託されたオーディンです。わたしは、オーディンがつつがなく役目を果たせるように、オーディンの世界の標(しるべ)の役割を果たしてきたのです。標を失った地上は闇よりもひどい世界になります……残り僅かの力を振り絞って、あなたたちをアグネスの家に戻します。家に戻れば、ユーリアの意識は戻ります。そこからは世界樹ユグドラシルの根元に住む時の女神ノルン姉妹が標の代わりをしてくれるでしょう……」

「標の代わりとは?」

「……もう時間が……オーディンの娘ブリュンヒルデ、姫に託します、この地上を……ヴァルハラを……」

 そこまでだった、ユーリアに似たヤマタの神は輪郭を失って無数の光の粒子となって我々を包んだ。光の粒子に包まれてホワイトアウトした我々は、次の瞬間、ユーリアとヤコブの母であるアグネスの庭に戻ってきた。

 街の住人が酔いつぶれて、あちこちで眠っている。半身を起こしてボーっとしているのは四号の四人の乗員たちだ。

「出発の朝に戻ったようです」

 ふらつきながらもタングリスが立ち上がって状況を確認している。テルも周囲を見渡しロキとケイトが無事なのを見て肩の力を抜いた。

「みなさーーん!」

 駆け寄ってきたのはユーリアだ。

「ユーリア、憶えているか?」

「はい、ヘルム神は『ユーリアを取り込んでも輝きを取り戻せるのは、ほんの僅かの時間だ。間もなくユーリアを取り戻そうとして仲間たちがやってくる。わたしは、その者たちに全てを託そうと思う、いっしょに帰るがいい』とおっしゃいました。どうやら、今朝の時間まで戻ったようです……時の女神ノルン姉妹に託したというのは、このことなんでしょうか?」

「いや……そうでもないようだ」

 目まいがした。いや、目まいがしたように感じたんだ。

 まるでVRゲームがバグったように空間が歪んでくる。遠近感がむちゃくちゃになり、雲がすぐ目の前に迫ったかと思うと、わたしの顔を覗き込んでいたユーリアの顔が数百メートルの彼方でゆらゆら揺れて、四号の車体がシュールにゆがんだり、風景そのものがバクテリアの鼓動に似た変形を繰り返す。

 気持ちが悪い……世界が標を失うということはこういうことなのか?

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 


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