大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 151『豊盃羽沙壽(ほうはいぱさじゅ)の秋』

2023-11-12 15:50:16 | ノベル2

ら 信長転生記

151『豊盃羽沙壽(ほうはいぱさじゅ)の秋孫権 

 

 

 春物がショ-ウィンドウに並び始めたと思ったら、もう秋物のクリアランスセールだ。

 こないだまで開けていたアーケードの天井もふたを閉め、お店によっては暖房を入れ始めた。

 

 豊盃羽沙壽(ほうはいぱさじゅ)は、この半年で豊盃の人気スポットになった。

 パサージュ全体の売り上げは半年で八割増し。コウちゃん(孫策妃大橋)の『グランポット アンティケール』は筋向いの書店を吸収して倍の規模になった。

 書店も善戦していたんだけど、パサージュの中央十字路(パサージュの一等地)の店舗としては見劣りがした。日に二回行われるイベントの時間には書店は空になった。喫茶店、飲茶、アンティケールの三店は、イベントの時間でも店内は一杯。書店の前は見物客で溢れるが、書店は空になることが多くなった。

「いえいえ、不足は無いんです。年寄夫婦の店としては十分商売になります。でも、ここの賑わいには他のお店が入った方が良いかと思います」

 店主はパサージュが出来る前から豊盃楼の一階で書店をやっていて、もともと数年の内には店を畳むつもりでいた。

 お客も半世紀前の創業のころからのお年寄が多く、パサージュの賑わいを面白がっているけど、ちょっと気圧される感じがして、イベントの時間を避けるようになってきたんだ。

 コウちゃんは、この先輩書店とお客に敬意を払って、以前と同じ店賃で中央十字路に、いわば頼み込んで店を出してもらっていた。なんせ、コウちゃんは豊盃楼そのもののオーナーでもあるんだからね。

 けっきょく、老夫婦の権利は残して姉さんが書店を借りる形で引き継いだ。

 オーナーが店子に賃料を払うというおかしな関係だけど、関係者も、パサージュのお客さんたちも粋な計らいだと喜んでくれている。

 書店跡のお店はアンティークというよりはファンシーショップ。

 よそのファンシーショップと違うのは、本業のアンテークショップで人気の有った、もしくは人気の出て欲しい商品のミニチュアグッズ。

 製造は、呉の王立美術学校の生徒にやってもらってる。生徒たちはいい勉強になるし、学費や小遣いの足しになって喜ばれている。例えば秦の時代の刀を模したペーパーナイフやかんざしを1/4にしたヘアピンにしたものなんかが良く売れた。

 そして、この店の店番をしているのがリュドミラ。

 最初は、古田織部、こっちでは越後屋を名乗ってる。そのガードとしてやってきて、ひょんなことで子どもの頃に憶えた胡旋舞をバザールで披露するハメになり、これが大評判になって、古田織部が茶姫とともに扶桑に戻ってからは、このパサージュのイベントで胡旋舞のダンサーとして活躍している。

 

「ねえ、胡旋舞と店番と、どっちがいい?」

 お客の流れが途切れた時に聞いてみた。

「わたしは狙撃手だ」

「そんな物騒なこと言わないでさ」

「だって、転生前からの天職だ。ここへも、その腕を買われてガードとしてやってきた」

「ボクは、胡旋舞のダンサーが向いてると思うよ。踊ってるとき、リュドミラはとても生き生きしてるし」

「そうか?」

「そうだよ、店番してるときは、めちゃくちゃ仏頂面だし」

「これがデフォルトだ」

「アハハ……せめて、ジト目でお客を睨むのは止めた方がいいと思う」

「……生まれつきだ、なおらん」

「そんなことないよ、ほら、この写真なんか(カメラに保存してある写真を見せる)……ほら、ちゃんと微笑んでるし、ジト目じゃないし」

「しゃ、写真を修正するな(#'∀'#)」

「修正なんかしてないよ」

「うそ(#'・'#)」

「無修正だってば!」

「ちょっとぉ、こっちの店まで聞こえてる」

「あ、コウちゃん」

「写真見ながら無修正って叫ばないでよ、お客さんが誤解するから」

「「え?」」

 女子高生のお客が真っ赤な顔して逃げるし、おっさんの客は変な期待で見てるし(^_^;)。

「週刊誌と新聞、納品きてるわよ、あ、いらっしゃいませ~(^▽^)」

 無修正の注意をすると向かいの店に戻るコウちゃん。

 店の前の納品を取りに行く。

 ファンシーショップだけど、パサージュで新聞を売っている店は無いし、書店の頃からの付き合いもあるので売っている。

「よいしょっと」

「お……」

「読むんだったら運んでからにしてよ」

「あ、ごめん。三蔵法師、大活躍みたいだねえ」

 新聞の一面には『三蔵法師一行大活躍!』の見出しが躍って、仏像に化けた妖怪をやっつけた一行の写真が載っていた。一昨日も牛魔王と羅刹女をやっつけた記事が出ていたし、その前は玉門関の活躍だった。

 ちょっとブームになるかもしれないと思った。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主

 

 


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