鳴かぬなら 信長転生記
敵部隊を発見しました!
五組の偵察隊の内三組が敵を発見した。
「三組とも発見だと! どれが本当なんだ(;'∀')!?」
矢継ぎ早に三隊の報告を聞いて桃太郎は焦った。当然部下たちにも動揺が走る。
「落ち着け、三隊とも正しい報告をしておる」
「どうしてだ、偵察隊は一里(4キロ)の間隔をあけて出してある、三組とも敵部隊を発見するのはおかしいじゃないか!?」
「同じなんだ。二番から四番の偵察隊が発見している、それぞれ、同じ軍勢の頭と腹と尻尾を発見したんだ。敵の行軍は、少なく見積もって三里、常識的に考えれば四里ほどになるだろう」
「四里……16キロの行軍か!?」
「敵の行軍は何列だった?」
二列! 三列です! 四列でした!
「バラバラじゃないか! 役に立たん偵察隊だ!」
気の短そうな猿が顔を赤くする。
「行軍は道幅によって変化する。中をとって三列と考えればいいだろう」
「三列だとすると……一人1メートル……一里で4000……それが三列で……四里で36000人」
冷静な犬が即座に計算し、雉と猿と三人で顔を見交わす。
さすがは桃太郎の幕僚、いきなり声を上げては、動揺をきたすと声を呑む。
「36000だとぉ!」
そう叫んで桃太郎は馬の鞍に立って自軍の数を、よせばいいのに数える。
「何度数えても3000人しかいないんだぞ!」
ええ~~~~~~~(;'∀')!!
一瞬で動揺が走る。
「狼狽えるな!」
いかん、つい自分の軍勢を率いている気になって一喝してしまう。
シーーーーーーーン
く……静まるのはいいが、その目は止めろ、まるでわたしが大将のようではないか(-_-;)。
「頼むよ鶴姫ぇ(^_^;)」
桃太郎、だらしなすぎ!
ここはいちばんカマシて、全軍の気を一つにしなければ!
「聞け! この森で足を停めたのも故あってのこと、見よ、そこな桃の木を!」
桃かどうかは分からんが、桃色じみた五弁の花をワッサカ咲かせている。これをネタにするしかない。
「御大将桃太郎を賞賛する奇瑞の徴! これより、全軍で必勝の祈念をする! 御大将を中心に扇の形に開け!」
おお!!
戦はノリと勢いだ。敵の位置は掴めた。大将桃太郎のテンションをマックスにあげて、一気に敵の中央を突くにしくはない。
「な、なんて言って祈願したらいい?」
「焦るな、祝詞はあげてやる。お前は、しっかり拝跪して『いざ、出陣!』と叫べばいい」
「わ、分かった鶴ちゃん(#'∀'#)」
「かけまくも、畏き桃の木大神に畏まりて申さく……我ら桃太郎軍団三千余名は、この桃の森に旗を上げ、仇なす鬼どもを平らげんと欲し……」
我ながらすらすらと祝詞の願文が浮かんでくる。
大山祇神社の鶴姫の成りをしているからか?
いや、これはデジャヴ……桶狭間の出陣において、熱田神宮で願文を捧げた時に似ている。
カチャカチャ
腰の草薙の剣が鳴った。そうか、草薙の剣はあっちゃんの本性。
奮い立っているようにも、笑っているようにも感じられる。
こういう場合は良い方に受け止めて置けばいい。
「よし! 桃の木大神は我らを嘉したもうたぞ! 御大将、檄をとばされませ!」
「お、おう!…………」
「なんか言え!」
「も、桃栗三年柿八年! 梅は酸い酸い十三年 梨はゆるゆる十五年 柚子の大馬鹿十八年 蜜柑の間抜けは二十年!」
なんか、無駄に格言を並べてる。
「ここに気は満ちた! いざいざ出陣じゃあ!!!」
「「「「「「「「「「おお!!」」」」」」」」」」
ゴロゴロゴロ、ピッシャーーン!!
折から、俄かに雷鳴轟き、稲妻が走った!
もう完全に桶狭間のノリだ。
ノリと勢いは十分、敵の大将は桶狭間!
三千の軍勢は、馬蹄を轟かせ篠突く雨の中を桶狭間的なものに向かって突き進んだ!
しかし、これは素戔嗚の化身たる桃太郎退治のはず?
まあいい、乗りかかった戦、設定は桶狭間そのもの。
ならば勝つしかない!
☆彡 主な登場人物
- 織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
- 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
- 織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
- 平手 美姫 信長のクラス担任
- 武田 信玄 同級生
- 上杉 謙信 同級生
- 古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
- 宮本 武蔵 孤高の剣聖
- 二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
- 雑賀 孫一 クラスメート
- 松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
- リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
- 今川 義元 学院生徒会長
- 坂本 乙女 学園生徒会長
- 曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
- 諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
- 大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
- 孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
- 天照大神 御山の御祭神