大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!105『ああ 東京タワー』

2025-01-04 15:58:43 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
105『ああ 東京タワー』 




「このクソ親父!!」

 加奈子が切れやがったぜ(^_^;)

 E残りグミの最近の名物になっちまった、加奈子とオヤジの親子ゲンカだぞ。

『E残りグミ』は、プロモの出来もよくって動画のアクセスも発表の一週間で百万件。オリコンチャートも、AKRの『コスモストルネード』、本家オモクロの『秋色ララバイ』に続いてベストスリーにまで入ってきやがった。

 別所Dは一気に攻勢をかけることにしたぞ!

『居残りグミ』は成功したとは言ってもよ、やっぱりオモクロの二軍というイメージを払拭できねえ。

 持ち歌も『居残りグミ』だけじゃ、一段目しかねえロケットみてえなもんで、とても人工衛星を飛ばす高さには昇れねえ。このままじゃ、一段目だけのロケットは盛大な一発花火で終わっちまう。

 そこで、短期で追撃を計るため、新曲をあいついでリリースすることにしやがった。

 とりあえず想いをストレートに表現しようっちゅうことで、みんなで知恵を絞った。でもよ、歌ってナンボ、踊ってイクラってメンバーに興行的なアイデアが早々思いつくもんじゃねえ。

 キーー キー― キーー ガチャ キーー ガチャ……

 そこへ加奈子の親父が、ポンコツ車いす軋ませてちょくちょく顔を出すもんだから、娘の加奈子はイライラしやがる。

「大事な会議してるから……」「うん」 「あとで散歩付き合うから……」「ああ」 「気が散るから……」「そうか」 「いや、だから……」「うん」 「せめて送った電動のに……」「これがいい」 「いったいなんなのよ……」「考えてる」 「いや、考えなくていいから……」「そう言うな」 「グヌヌ……」「プゥ~~」 「会議中なのよ、オナラしないでくれる……」「俺じゃない」 「じゃあ、誰がオナラしたって言うのよ……」「加奈子だ」

 で、加奈子が「このクソ親父!!」とキレっちまったわけさ。

「ウワ!」

 あまりの剣幕に親父はのけ反っちまって、ポンコツ車いすごとひっくり返りそうになって、別所Dと近くのメンバーが危うく止めやがった。

 すると斜め45度になった親父の目線の先、窓の外の東京名物が目に入ってきたぞ!

「東京タワーで、どうですか?」

 加奈子はギクっとしやがった。

 オモクロのセンターを外されてから、なにかと自分と東京タワーを引き比べるようになってきた加奈子。美紀のケガで選抜復帰することになったらよ、新人の真央にあっさり入れ替えられ、病院のロビーで腐っていたときによ、目に入っていたのがスカイツリーと東京タワーだったろ。

「なに考えてんのよ!」

 病院のロビーのガラス張りから見える東京タワーは、周りの高層ビルに囲まれ威勢がねえ。そんな東京タワーにネガティブなシンパシーを感じていたことが思い出されちまって、加奈子は父の提案に真っ先に反対しやがった。

「それ、いけるかも……」

 別所Dがプロデューサーの感覚で反応しやがった。そしてネットで検索した。そして、実際メンバーで、東京タワーにも行ってみることにした。

 電動車椅子のバッテリーが切れていたので、修理した車椅子を加奈子が押した。メンバー12人、スタッフ4人、そして加奈子の親父を加えた17人は目立ったぞ。

「バッテリーの残量、どうして確かめなかったのよ!」

「それだけ、加奈子のことを心配してやってたんだよ」

「もう、それが余計なことだって言うの!」

 こういう遣り取りも、遠目には仲の良い親子に見える。その姿をスマホで撮っていた年輩の夫婦が気づきやがった。

「あ……あれ、高峯純一さんだわよ!」

 若いやつには知られてねえけど、ババアたちには大スターだ。前世紀のバブルのころの高峯の活躍ぶりはよ、自分たちの良き時代の記憶とも美しく重なっちまってよ、雄々しくも素敵な『タカジュンさま♡』なんだわ。

「ウワー、高峯純一さんだ!!」「タカジュンだあ!」「タカジュ~ン!!」

 シルバーツアーの御一行さんが周りに集まってきやがった。

 シルバーツアーの御一行さんは、オモクロ・E残グミはおろか、オモクロにもAKRにもウトイ。往年の大スター高峯純一の世話をするスク-ルメイツかなんかのように思っていやがる。

 あっと言う間に、高峯純一のサイン会、握手会になっちまった。

「あんたたち偉いわね、ちゃんと大先輩のお世話なんかしちゃって。あなたなんか、大先輩とはいえ、他人とは思えない甲斐甲斐しさよ!」

「いやあ、これは、わたしの娘ですから」


 親父がクチバシッテしまった。


 さすがに、ガイドのオネエサンはオモクロもオモクロ・E残グミのことも知っていやがった。

「あ、あなた、オモクロの桃畑加奈子ちゃんじゃないの!?」

「そういや、大正製菓のグミのCMやってたわよね」

 と、シルバーの方々の思考回路がつながったぞ。

 で、大騒ぎになっちまった。

 シルバーツアーの御一行さんたちと、修学旅行と敬老会の団体さんの合同見学のようになっちまってよ。そのうちに、だれがたれ込んだのか、芸能レポーターや放送局までやってきやがった。

 別所Dは、目覚めたプロデューサーの感覚で、この偶然の機会を逃さなかったぞ。

「今度、東京タワーをテーマにして新曲を発表します」と、ぶちかましやがった。

 で、ゆっくりと東京タワーを見学しているうちに、新曲のイメージが膨らんできた。


 《東京タワー》

 キミと登った東京タワー スカイツリーもいいけれど キミとボクには程よい高さだよ
 二人そろって高所恐怖症 それに二人には程よい距離だった
 神保町駅徒歩7分 見上げた姿は333メーター 赤白姿のストライプ
 ボクの心もストライプ 告白しようか止めようか

 太陽背にした東京タワー 焦らせるんだよボクの心を 神保町から7分に高まるテンションさ
 キミはスキップ一歩先 それがとても遠くて愛おしくて
 やっと踏んだキミの影 はじけた笑顔眩しくて 赤白姿のストライプ
 ボクをせかせてストライプ やっと追いつき照れ笑い

 ああ 東京タワー ああ 東京タワー ああ ああ 東京タワァァァァ~


 展望台を一周する間に一番の歌詞ができちまいやがった。

 事務所に帰って、みんなにご披露しやがる。すぐに二番も三番も出来たが、父の高峯が、こう口を挟みやがった。

「東京タワーなら、御成門から徒歩6分だろうが!」

 これが、親子ゲンカの始まりであり、芸能人高峯純一の再生でもあった。

 そして、オモクロ・E残りグミの飛躍へと繋がっていったぞ……。




☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  

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滅鬼の刃・35『ご無沙汰しておりました』

2025-01-04 15:35:04 | エッセー
 エッセーラノベ    
35『ご無沙汰しておりました』  




 どうも、あれから一年半ぶりになります。

 武者と朝顔を愛でながらスイカを食って、あくる日にもう一度話すつもりでおりました。

 ですから副題も34『朝顔と西瓜・1』として、当然35『朝顔と西瓜・2』になるはずでしたが果たせませんでした。根気よく読んでくださっている読者のみなさんには申し訳ない限りです。

 じつは、武者のやつ『朝顔と西瓜・1』の夜に頭の線が切れて救急車で運ばれましたが間に合いませんでした。

 息子さんが家族葬で見送られたのですが、付き合いの古いわたしには声をかけてくれました。

 おそらくは死んだという自覚も無いまま逝ってしまったのでしょう、昼寝をしているような穏やかな顔で棺に収まっておりました。

 もう一年以上たつのですが、総括できずにおります。書けるようなら号を改めて触れられたらと思います。

 ただ、息子さんは武者の遺言……というほどではないのですが、日ごろ『蛍の光』で送って欲しいということを、わりと真剣な顔で言っていたので、アカペラではありますが、全員で『蛍の光』を歌って霊柩車に乗せてやりました。

 卒業式でもめったに歌われなくなった『蛍の光』でしたが、まだ日本人の血脈にはしみ込んでいるようで、会葬者全員が神妙になりました。

 パァーーーーーーーーーーーーーーーン

 歌い終わると同時に霊柩車のクラクションが長鳴きします。まるで武者が「さよならぁ、世話になったぁ」と最後の挨拶をしたようでした。


 それから、明くる年、栞が家を出ていきました。


 これは、大学進学なので仕方ありません。通学できない距離ではないのですが、かみさんも栞の学費用にと相応のものを残してくれていましたので無事に追い出せました。

 最初は週に一度は戻って来ていたのですが、それがきっかけだったのか夏休みのバイトで、丸々ひと月空いて、それからは月一になりました。

 この正月には帰って来ると言っていたのですが――松が明けたら帰る――とラインを寄こして『うん、楽しみにしてるよ』の返事には既読スルーのままです。

 松が明けたらとは、わたしが教えてやった言葉です。

 松の内というのは、昔は15日まで、この三十年くらいは7日までを指す言葉です。

 はてさて、栞の松の内はどちらでしょうか。

 まあ、こけつまろびつしながらも、自分の道を歩き始めている様子。了としておきます。

 わたしは錆びの周った滅鬼の刃を、ゆっくり研ぎ直すところから始めることにします。


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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・168『スセリヒメの生姜湯』

2025-01-04 15:20:07 | 小説
(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記

168『スセリヒメの生姜湯』  





「ここの神さまは古い友だちなのよ」


 チマチマとミカンの皮をむきながらスセリヒメ。

「え、友だちだったんですか? って、ここの神さまは……」

 やばい、巫女の助勤しながら神さまの名前も憶えてなかった(^_^;)

「いやだぁ、御祭神の名前も知らずに巫女やってたのぉ(¬д¬)!?」

「ド、度忘れよ(>〇<)」

「『なにごとの おわしますとは知らねども かたじけなさに なみだこぼるる~』かなあ」

「なにそれ?」

「西行法師がね、とある神社に立ち寄ったんだけど、なんの神さまか分からないけど、ありがたさに涙が出てきたって詠んだ和歌よ」

「え、あ、ああ、それですよ、それ!」

 よう知らんけど西行と言えばえらい歌詠みの坊主。西行も同じなら、わたしもノープロブレム!

「ここの神さまはね秩父谷戸姫(チチブヤトヒメ)って言うの」

「あ、女神さまなんだ」

「え、女神さまってことも忘れてたぁ?」

「え、ああ……」

 思い返すと、頼政さんの車を降りて拝殿の前で一礼して、巫女の練習で玉ぐしを捧げたりとかの練習はしたけど、御祭神については教えてもらってない?

 シューージジジーーー

 火鉢に掛けたヤカンが湯気を噴く。怒っているようにも笑っているようにも思えた。

「わたしの亭主知ってるでしょ……」

 コポコポコポ……

 ヤカンのお湯を湯呑に注ぐスセリヒメ。

「あ、オオクニヌシさん」

「うん。いちおう大国主の奥さんはわたしなんだけどね、大国主は、あちこち出かけては女に手を出してねぇ……まあ、あれでも出雲の大神だから、多少のことはね」

「ああ、福井とか新潟あたりまで出かけたんですよね」

「うん、でも、まさか埼玉まで足を延ばしていたとは……」

「え、知らなかったんですか?」

「いや、まあ、最後には分かったんだけどね。大国主はウソ下手だから……」

「そうなんだ」

「で、まあ、一度はヤマタノオロチの息子どもを連れて出張ったんだけど」

 ボ!

 かき回した火鉢の炭が小さな爆炎を上げた。

「でもね……じっさい会ってみたら、けっこういい娘でねえ。ヤマタの息子どもも『こんなに美しい谷川は見たことも無い』って言うしね。それで、気が付いたら友だちになっちゃった」

「え、そうなんだ」

「それに、グッチが写真館のバイトで来るようになってから調子も良くってさ」

「あ、文化祭じゃお世話になりましたぁ(^_^;)」

「そうよ、あの後、特に調子よくてさ。やっぱり神さまって言うのは、みんなが喜んでくれると力が出るわけですよ。ウエディングパラダイス、またやろうね!」

「え、ああ……」

 ウエディングパラダイスは大成功だったけど、佐伯さんが自殺未遂をやっちゃって、このスセリヒメが大汗かいて黄泉平坂から連れ戻してくれたんだ。

「一時は植物人間とか言われてたんだけど、なんとか元に戻りそうなんだ」

「え、そうなんだ!」

「まあ、あれだけ噂になったから復学はしないだろうけど、新しい学校で頑張ってくれたらと思う」

「よかったあ」

「それでね、グッチたちがこっちに来るのを知って、ヤトヒメとも久しぶりだったし、ちょっとテンション上がっちゃったわけよ……ハイ、生姜湯。これ飲んで三が日がんばってね」

「わあ、ありがとう」

「他の子の分は置いておくから、お湯に溶かして飲ませてあげて」

「はい」

 一口すすると、生姜の少し刺激のある甘さが口に広がり、スイッチが入ったみたいに体が温まる。

 ウワァ~~~~~

 その心地よさに思わず目をつぶってしまう。

 再び目を開けるとスセリヒメの姿は消えていた。




☆彡 主な登場人物

時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川                志忠屋のマスター
ペコさん              志忠屋のバイト
猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
辻本 たみ子            2年3組 副委員長  伯父:武藤頼政
高峰 秀夫             2年3組 委員長
吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲              2年学年主任
先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
妖・魔物              アキラ      
その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
安藤さん              伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・167『昭和の巫女はきつい』

2025-01-04 15:10:44 | 小説
(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記

167『昭和の巫女はきつい』  





 ジョキンと聞いて、あの忌まわしいコロナを思い出すのは令和のJKだ。

 中学の時は学校がまるまる半年も休みだったし、除菌、殺菌、消毒とかうるさく言われたよ。


 でもね、昭和47年のジョキンは助勤のことなんだ。

 巫女バイトが決まった時にお祖母ちゃんに言ったら、こんな話をした。

「ああ、助勤と言えば新選組だねえ」

 想像の斜め上を行く感想なんで、こっちがビックリしてしまう。

「なに、ナントカ太郎とかがやってる政党?」

「ちがうちがう、近藤勇の新選組。局長の次に偉いのが助勤て言って、沖田総司が一番隊の助勤をやってたんだよ。新選組じゃ一番若いのにさ、永倉新八とかのオッサンと並んで立派にやっていたんだよぉ」

「え、お祖母ちゃん、新選組の時代から魔法少女やってたの(ㅎ.ㅎ)?」

「ん、んなわけないだろ(''◇'')!」

「だよね、今度巫女のバイトやるんだけど、正確には助勤て言うんだよ」

「え、そうなの? 昔は巫女は巫女だったんだけどねえ」

 ウプ!

 そんな数日前のスカタンを思い出して、お茶を噴き出しそうになる。

「だいじょうぶですかぁ?」

 同じ休憩組のロコがコタツに潜ったままおざなりな返事。ロコの隣で横になってる真知子は返事もしない。

「ううん、ちょっとむせかえっただけ」

 慣れない助勤の仕事と寒さでグロッキー、そっとしといてあげよう。この律義者は話しかけられたら必ず返事を返してくる。休憩時間はそっとしておいてやるに限る。真知子はほんとに寝てるみたいだし。

 ロコほどじゃないけど、たしかに、この助勤の仕事はきつい。

 とにかく寒い。

 巫女服、いや巫女装束ってのは白衣に緋袴。むろん下にはババシャツに厚手のタイツ、足袋は重ね履き。ほんとは使い捨てカイロを背中とかに貼りまくりたかったけど、使い捨てカイロは、もう5年しないと発明されない。

 授与所には電気カーペット、後ろにはストーブ焚いてもらってるんだけど、なんせ初詣。

 授与所の窓は開けっ放し。宮司の頼政さんが工夫してくれて、工事用のライトを四つ吊るしてくれてる。ケンタとかマックとか、商品が冷めないようにライトあててるでしょ。授与所のためだけに発電機も回してもらってるんだけど、それでも寒い。

 それにね、授与所と言えばお御籤なんだけど、令和みたく自動販売機じゃない。

 お客さん、いや参拝客の人が「お御籤お願いします」と言ったら、巫女がお御籤をひくんだよ。ほら、でっかい木製のシェーカみたいなの。あれをガシャガシャやって「○○番です」と参拝客に示してから、100の小引き出しからお御籤を出して渡す仕掛け。

 自分で引けよって思うんだけど、これがA町のしきたり。自分で引いたらありがたみがないんだとか。

 JC巫女たちは、ほとんど、このお御籤要員と言っても過言じゃない。参拝客も巫女の正体が、近所のA子ちゃんとかY子ちゃんだとか分かってるんだけど、巫女の姿をしていたら神さまのお使いになるわけですよ。

 とにかく元気だしね。

 令和じゃ、映画や芝居の子役だって午後9時以降は働かせちゃいけないことになってる。

 21世紀になったらどうするんだろうね、と余計な心配をしてしまう。

 わたしも、まあ、なんとか務まってる。たぶん、直美さんとこのバイトと、年末のバイトで慣れてるんだ。

 たみ子は、拝殿で高峰君といっしょに頼政さんのお手伝い。ガラス窓の外では、そういう新年早々の神社の営みが静かに進行している……夕べ扉が開いて神さまみたいなのが光になって現れて、あの時のどよめきが嘘みたいに静か……静かすぎる……と思ったら、二重のガラス窓だった。

 ガラスに、コタツにも入らずの巫女姿が映っている。

 え?

「やぁ、わたしも昨日から来てるの」

 場所がら、全然違和感はないんだけど、この場に居るはずのない、御神楽采女さん。

 巫女服姿だけども、この人は宮之森と大浜限定の巫女さん。

「アハハ、いちおうは神さまなんだよ(^_^;)」

 そうだ、この人の本性はスセリヒメ。

 だけど、なんで埼玉に?


 
☆彡 主な登場人物

時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川                志忠屋のマスター
ペコさん              志忠屋のバイト
猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
辻本 たみ子            2年3組 副委員長  伯父:武藤頼政
高峰 秀夫             2年3組 委員長
吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲              2年学年主任
先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
妖・魔物              アキラ      
その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
安藤さん              伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 

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