KAORU♪の「気ままなダイアリー」

KAORU♪が見つけたステキな風景、出会ったおもしろいできごと、おいしい料理などを“気が向いた時”にご紹介します。

★バリで捧げる祈り

2010年08月12日 | 旅の物語
               【キャンドルが灯る夕暮れのヴィラ】

シンガポールで約1時間のトランジットから
デンパサール空港へ到着したのは、夜の9時半。


言葉を交わすことなく
メールのやり取りだけで獲得したエアチケットは
拍子抜けするほど簡単だったが、
ビザを取らなくては入国できないことなんて
知らずにノンキに出国手続きをしたのだった。


まあ、それでもなんとかなるもの。

ビザを持っていないんだけど。と言うと、
あっちに並べと指をさす方向へ行って
そのまま列に並ぶと、これまた簡単に
ペラっと紙きれを渡された。

これがビザ???レシートみたい。と
思うようなシロモノだったが
また新たに示された列に並びなおして
ようやく入国審査の手続きへ。


長いこと、我慢強くひたすら待つこと約30分。

だんだんと順番が進むにつれ
入国審査台の向こう側に
大画面があることに気が付いた。

わ~!という歓声も画面から聞こえてくる。


あれ?どこかで見慣れたブルーのユニフォームが
行ったりきたりしている。


そうだ!
ワールドカップの日だった!

日本だ!


バリでは見られないだろうと諦めていたのに。


得点はどうなっているのだろう?

液晶画面だからいまひとつ
はっきりと見ることができない。

背伸びしたり、見る位置を変えたり、
腰をかがめてみたりしながら
あれこれとのぞいてみても
やっぱりわからない。


無事入国審査を終えて、
一目散に大画面まで走ると
白人の男性が「0-0だよ!」と教えてくれた。

「THANK YOU!」と言うと

「GOOD LUCK!」とウィンクで答えてくれる。


私が出ているわけじゃないのに、
幸運を祈ってもらえるなんて
なんだか嬉しい。

私ががんばっているわけじゃないけど、
でもやっぱり誇らしい気持ちになる。

***************************

夜遅くにホテルに移動する車の中、
初めてのバリの街を眺めていると
そこここで街頭テレビに人が集まっている。


なにを見ているんだろう、と思って
通り過ぎる画面に目を凝らすと
どこもサムライブルーが映っている。


バリの人々も試合のゆくえを
じっと見守っていた。


ホテルにチェックインしたあとも
旅の疲れに一息つく間もなく
急いでテレビをつけた。

荷物なんかそっちのけである。


固唾をのんで、見つめる
ロスタイムのあとのPK戦。


異国で祈った。日本のために。

どうか、うまくいきますように。



結果の出たあとも、
よくやった!ニッポン!と
ひとり拍手と声援をおくっていた。


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その後、合流したMORIMO一家の
KAIは日本で言うと中学生の年齢。


いろんな国のユニフォームを
毎日、日替わりで着ていた。
気分はワールドカップでいっぱいである。

ドイツ、イタリア、スペイン・・・。

そのたびにあちこちから声がかかる。

「ドイツを応援しているのか?」

とか、

「イタリアのファンか?」

とか、

「(スペインのユニフォームを着てるってコトは)
スペイン人?」

昨日の試合はどうだった、とか
今日の対戦は何時からどこどこの試合だよね。など

とにかくタクシーでもお店でも、
道を歩いていても
ユニフォームから気さくに話が始まる。


そして、私を見てどこから来たのか聞き、
日本だと答えると
「HONDA(本田)! 」と軽快に返してくる。

「YES!」とこちらも笑顔で返す。


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ワールドカップって本当にすごい。



インドネシアは出ていないのに、
それでも毎晩のように
街のあちこちで放送され
その話題で盛り上がる。


国を越えて応援し、
その勝敗のゆくえを見守る人々。


それは単なる勝ちと負けにこだわらず
純粋に、人種をも越えて楽しんでいる
歓喜の声援だった。


やっぱりこうでなくっちゃ!

未来の地球のスタイルも、
こんなふうになっていきますように。


日本のために祈っていた私は、
やはり地球のために祈れる私になっていこう。


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到着から一夜明けた早朝。


大音響でビックリして目が覚めた。
何ごとが起こったのだろう?
しばらくドキドキと鼓動が鳴った。

マイクを使っているのだろうか?

時計を見たら、午前4時。
早朝というより空はまだ暗い夜明け前。

ぼーっとしながら、耳を傾けてみると
どうやら近くに寺院があるらしい。

お経のようなリズムだ。

バリらしいテンポで
たくさんの人々が祈りを捧げているらしい。


様子がイメージできると安心するものである。

しばらくの間、その音を聞きながら
またふたたびベッドで心地良く
眠りについた。

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太陽がほどよく登った頃、
気持ちよく目が覚めた。

空には真っ白い雲がふわふわと
ぽっかり、のんびり浮かんでいる。


これぞ、旅の朝。



朝食を食べにレストランに向かう。

ヴィラの門を開けると、
中央に鮮やかな色のお供えを置いているところだった。



写真とってもいい?と聞くと
OK!と快い返事。


毎朝、こうやってバリの人々は
家の前やらお店の前に、
葉っぱで作ったお皿と、花びらと、
時にはビスケット、そしてお香をそえて
神々に捧げている。


このところ、私は
「祈る」ということを考えている。


遥か昔から時代や国、人種や宗教を越えて
人々はずっと祈ってきた。


信仰心の薄れた日本人でさえも
本当はだれもが、口に出さなくても
それぞれの胸の奥にそっとしまっているもの。


でも、
いつのまにやら“苦しい時の神頼み”と
一緒くたになってしまい、
他力本願ならぬ、神力本願となることを
避けようとして、どんな祈り方をしていいのか
わからなくなってしまったような気がしている。


頼るんじゃなくて、

願い事を叶えてもらうためじゃなくて、

思い通りの結果になることだけを
希望するんじゃなくて、


もっとほかの何かがあるのではないだろうか。



ただ純粋に「祈る」。



大切な誰かのために。

家族のために。

そして、自分自身のために。



幸せで実り多い時間が過ごせるように、

ただそれだけを祈る。


幸せというのは、物質的に恵まれて
楽チンで苦労のないことではない。

誰かの力を借りて、事なきを得て
辛いことも悲しいこともなく、
一切から逃れることでもないと思う。


力をつけて、自分の意思で
さまざまな事象を乗り越えることが
できるようになること。


自転車だって、
自分自身でバランスを取り、
そして自らの足でこぎ、
走るようになったときの喜びは、

親が押してくれて乗れるよりも、
補助ありで乗れるよりも、
何倍も何倍も大きい。

その喜びを実感するためには
時にひっくり返り、
時にすりむいて、
時に壁に激突して、涙を流す。

その向こう側にこそ、
充実感と、達成感と、
自らを信じることができる
心豊かな時間が待っている。


***************************


自分自身としっかり向き合う時間。


ひとりになると、
忘れかけていた大切なことを
思い出させてくれる。


異国の空気に触れると
心の奥にしまいこんでいた
何かを引っ張り出してくれる。


そんな豊かな時間に感謝を。

そして地球上に存在するすべてが
幸せになっていきますように。

心を込めて祈りたい。
























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