フリーペーパーで見つけた半日コースの
ヨガレッスンは約2時間ほど。
風が吹き抜ける開放されたスタジオの
木の床は美しく磨かれて
木々の緑と太陽の光を映しこんでいる。
30人ほどの参加者を見渡すと
ほとんどが白人の旅行客。
時折、アジア人らしき顔が見えるが
日本人は少なさそう。
***********************
2時間もついていけるかな?
体力を心配していた私は、
そういえば英語の説明についていけるのかな・・・?
そっちの方が心配になってきた。
思ったとおり、
早口だし、何をいっているのか
あんまり聞き取ることができない。
こうなったら、前後左右の人たちの動きを
マネするしかない。
チラチラと見ながら、
カタイカラダを精一杯伸ばす。
言葉がロクにわからない上に、
ほぼ曲がらないカラダ。
うつぶせになるポーズで
とにかく伸ばすことに必死になっていると
時々、MORIMOからトントンと肩やら背中を
ノックされる。
はっ!と顔をあげると
もうみんなはすっかりと別のポーズに移っている。
やだ、私ったら。
ホントにまぬけで恥ずかしいったら。
英語が聞き取れないのは
超ハンデだわ。
などと、ちょっぴり後悔しながら
それでも滝のように流れ落ちる汗。
ゆっくりと呼吸しながら
そよぐ風を感じてみる。
緑に囲まれたゆるやかな環境で
心地良くデトックスしながら
心と体のバランスを取り戻していく。
***********************
それに・・・。
そういえば、何度か日本でも
ヨガを体験したことがあった。
その時も、気がついたら
周りとは違うポーズをいつまでもとっていて、
慌ててみんなと同じカタチにしてたっけ。
言葉のハンデなんかじゃ、ぜんぜんなかった。
運動神経とか、注意力とかの問題だった。
***********************
となりにいた黒髪の女性は、
ちょうど先生を見ながら彼女のポーズも
見える絶好の位置にいた。
とてもカラダがしなやかで、
スタイルもよくてカッコいい。
ヨガもプロなのかな、と思うほどキマっている。
そういえば、頭で逆立ちしてみたり
どうやっているのかわからない、
柔らかすぎてありえないポーズをとっている
人たちもいっぱいいた。
レッスンが終わって、思わず
堂々とした日本語で
「本当に上手ですね~!!!
ヨガの先生なんですか???」と
尊敬のまなざしで聞いたら
私、日本人じゃないの。
と立派な発音の英語で即答された。
あ・・・。
バリに住んでいる日本人かと思い込んでいた。
一瞬、頭が真っ白になり
英語モードに切り替える。
よく日本人と間違われるの。
じゃあ、どこから来たの?
私は台湾人よ。
台湾~?ぜんぜんわからなかった。
そんな、何気ない会話も楽しい。
レッスン後は、
のどかな田園風景のなかの
オーガニックレストランでランチ。
心も体もおなかも、さらにキレイになった。
(一番左は、本気の前屈です(^_^;)
ホントにかたいでしょ。)
***********************
翌日、無事に乗り込んだホテルの観光タクシーで
むかったウブド。
山々と渓谷の間に広がる
美しい棚田を見ながら
ライステラスカフェでランチを食べた。
雨が青々とした稲穂をぬらす
風景は、しっとりとして叙情的なたたずまい。
バリはお米の種類によって二毛作や
三毛作など、年に数回収穫ができるのだそう。
もう少し後だったら、
もっと丈が伸びていて
もっと美しい景色だよ、とPiteが教えてくれた。
それでも充分、
圧巻な田園風景に心を潤した。
***********************
もともと、地形を利用した農村地帯に
やがて観光客が多く訪れるようになったから
きっと、以前よりも開発が進んで
すっかり観光地化されて、いつの頃からか
本業の農家と観光客相手との
「半農半観光」のような生活を送っているのであろう。
みやげもの屋の客引きが
車まで追ってくる。
いくつ買うと安くするから、と民芸品やら
生活雑貨品を手に、売り込みに余念がない。
ライステラスに着いたとたん、
小さな少年が近づいてきた。
ポストカードを買わないか、と
手に持って見せに来る。
一瞬心が揺れる。
どうしよう。買ってあげようかな。
きっとこの子の仕事なんだろうな。
草で作った帽子をかぶっている。
だけど、勇気を持って
黙って、首を横に振った。
だって、この子の目、
うつろでどこも見ていない。
生活のために、こうするしかないのだろうと
容易に想像はつくけれど
ここで、ポストカードに10円、20円を出したところで
親に渡すだけだ。
きっとこの子の生活はよくならない。
帰り道の路上でもおなじように
少女が信号待ちの車の窓をトントン、と
叩いて手のひらを差しだすしぐさ。
彼女の目もまた同じ、
うつろによどんでいて、
どこにも焦点が合っていなかった。
あげるお金が惜しいんじゃない。
子どもが稼げば、親はますます
子どもに要求するだろう。
もっと持って来い。と。
暮らしのために。一家のために。
だけど、本当は
赤ちゃんは泣くのが仕事。
子どもは遊ぶのが仕事。そして勉強するのが仕事なのだ。
いろんなテレビを見ていても
一様に、どんな貧しい国の子どもたちも
口を揃えて言っている。
勉強がしたい、と。
すっかり学校システムができあがっている
国に生まれた子どもたちは、できるだけ
勉強はしたくない。
学校なんてなければいいのに。
宿題なんか、テストなんかない国に行きたい。と
心底願う。
でもそれは、いつもそこにあるから
疎ましく思う大切な存在とおんなじだ。
学校に行けない子どもたちの願いは
もっと深刻で切実だ。
目の前にいる、少年や少女を切ない思いで、
だけど、
愛を持って目をそらし、まっすぐ前を向いた。
本当だったら、笑顔で応えて会話したい。
心の中で、つぶやいた。
どうか、いつの日か学校に行ける日が来ますように。
学ぶ楽しさを味わう日が来ますように。
今は、ごめんね。
今は、祈ることしかできない。
どうか、いつの日か。
***********************
ある戦場カメラマンが
こんなことを言っていたそうだ。
「アジア人は泣くことと、笑うことが上手な民族だ。」
戦渦の悲惨さを伝える写真を
撮るのが仕事なのに、
辛い惨状の合間を縫って
屈託なく笑う子どもたちが好きで
たくさんの作品を残しているのだそうだ。
やっぱり子どもたちには
心の底から笑ってほしい。
戦争や、貧困を越えて
豊かな生活を送ってほしい。
それは、物質的に豊かな先進国に
なってほしい、というわけではない。
宇宙や地球のリズムに合わせて
自然と調和し、人間の叡智と
しっかりバランスのとれた生活。
私ひとりができることなんて
ほんとうにちっぽけだけど、
それでもやっぱり
なにか、きっと未来のためにできるはず。
私しかできないこと。
みんなと一緒にできること。
***********************
最終日は朝から
約束のブギーボードを教えてもらった。
波乗りは初めて♪
Chrisがタイミングをはかりながら
波の動きに合わせて
クルッとボードの向きを変えてくれる。
GO!という声とともに
思いっきりボードを押してくれると、
ふ~っと軽くなる。
そして、波の頂上にカラダが乗ったまま、
浜へと滑るように運ばれていく。
きゃ~!本当におもしろいね!
サイコー!
ね!だからおとといもやればよかったでしょ?と
Kai が言う。
***********************
最後のランチタイム。
何が食べたい?最後だからね!と言ってくれた。
そして、初めての
ギリシャ料理をリクエスト。
腹ペコになって、しかも
久々に海でたっぷり遊んで
心地のよい疲労感。
よくプールで泳ぐとこんな感じでふわーっとした
感覚になったっけ。
料理がでるまでボーっとしていたら、
Chrisが
「そうやって、遊び疲れて
何にも考えないのはすごくいいんだよ。
悲しいことも、辛いこともみんな忘れられるからね!」
そうだよね。
大人になると、疲れるまで遊ぶなんて
しなくなっちゃうもんね。
時にはこうやって
思いっきりはしゃいで、
カラダ動かして自分のなかのマジメな大人を
忘れてみると、笑顔も格別。
やっぱり子どもであろうが
大人になっても、いくつになっても
人は笑っている顔がいい。
バリで過ごした時間は、
どこかにしまいこんでいた
笑顔をすっかり呼び覚ましてくれた。
どんなことが起きようと、
たとえ、
望んでいる結果にならなくても、
それでも、すべて受け入れる。
祈る。感謝する。
そして、笑うこと♪
ね、私も飛びきりの BIGスマイルになったでしょ?
家に帰ると背中だけヒリヒリと日焼けしていた。
ブギーボードに乗って、うつぶせになって
太陽に思いっきり背を向けていたからだ。
うわ~ん!痛いよ~!
火照った背中にローションを
ペタペタと塗ってくれるTatsuro。
「お母さん、左側の肩はちゃんと
日焼け止め塗れてるから、
あんまり焼けてないけど、
右側、しっかり塗らなかっただろ!
すごい真っ赤だよ!」
だって、左手で塗りにくいんだもん。
皮がむけるほど日焼けしたのも
何年ぶりだろう。
***********************
たくさんの新しい思い出と一緒に、
思い出したもの。
いつもいろんなところで流れていた
ゆったりとした優しいガムランの音色が
今もまだ、時折心の中にこだまする。
【バリの旅物語 おわり】
ヨガレッスンは約2時間ほど。
風が吹き抜ける開放されたスタジオの
木の床は美しく磨かれて
木々の緑と太陽の光を映しこんでいる。
30人ほどの参加者を見渡すと
ほとんどが白人の旅行客。
時折、アジア人らしき顔が見えるが
日本人は少なさそう。
***********************
2時間もついていけるかな?
体力を心配していた私は、
そういえば英語の説明についていけるのかな・・・?
そっちの方が心配になってきた。
思ったとおり、
早口だし、何をいっているのか
あんまり聞き取ることができない。
こうなったら、前後左右の人たちの動きを
マネするしかない。
チラチラと見ながら、
カタイカラダを精一杯伸ばす。
言葉がロクにわからない上に、
ほぼ曲がらないカラダ。
うつぶせになるポーズで
とにかく伸ばすことに必死になっていると
時々、MORIMOからトントンと肩やら背中を
ノックされる。
はっ!と顔をあげると
もうみんなはすっかりと別のポーズに移っている。
やだ、私ったら。
ホントにまぬけで恥ずかしいったら。
英語が聞き取れないのは
超ハンデだわ。
などと、ちょっぴり後悔しながら
それでも滝のように流れ落ちる汗。
ゆっくりと呼吸しながら
そよぐ風を感じてみる。
緑に囲まれたゆるやかな環境で
心地良くデトックスしながら
心と体のバランスを取り戻していく。
***********************
それに・・・。
そういえば、何度か日本でも
ヨガを体験したことがあった。
その時も、気がついたら
周りとは違うポーズをいつまでもとっていて、
慌ててみんなと同じカタチにしてたっけ。
言葉のハンデなんかじゃ、ぜんぜんなかった。
運動神経とか、注意力とかの問題だった。
***********************
となりにいた黒髪の女性は、
ちょうど先生を見ながら彼女のポーズも
見える絶好の位置にいた。
とてもカラダがしなやかで、
スタイルもよくてカッコいい。
ヨガもプロなのかな、と思うほどキマっている。
そういえば、頭で逆立ちしてみたり
どうやっているのかわからない、
柔らかすぎてありえないポーズをとっている
人たちもいっぱいいた。
レッスンが終わって、思わず
堂々とした日本語で
「本当に上手ですね~!!!
ヨガの先生なんですか???」と
尊敬のまなざしで聞いたら
私、日本人じゃないの。
と立派な発音の英語で即答された。
あ・・・。
バリに住んでいる日本人かと思い込んでいた。
一瞬、頭が真っ白になり
英語モードに切り替える。
よく日本人と間違われるの。
じゃあ、どこから来たの?
私は台湾人よ。
台湾~?ぜんぜんわからなかった。
そんな、何気ない会話も楽しい。
レッスン後は、
のどかな田園風景のなかの
オーガニックレストランでランチ。
心も体もおなかも、さらにキレイになった。
(一番左は、本気の前屈です(^_^;)
ホントにかたいでしょ。)
***********************
翌日、無事に乗り込んだホテルの観光タクシーで
むかったウブド。
山々と渓谷の間に広がる
美しい棚田を見ながら
ライステラスカフェでランチを食べた。
雨が青々とした稲穂をぬらす
風景は、しっとりとして叙情的なたたずまい。
バリはお米の種類によって二毛作や
三毛作など、年に数回収穫ができるのだそう。
もう少し後だったら、
もっと丈が伸びていて
もっと美しい景色だよ、とPiteが教えてくれた。
それでも充分、
圧巻な田園風景に心を潤した。
***********************
もともと、地形を利用した農村地帯に
やがて観光客が多く訪れるようになったから
きっと、以前よりも開発が進んで
すっかり観光地化されて、いつの頃からか
本業の農家と観光客相手との
「半農半観光」のような生活を送っているのであろう。
みやげもの屋の客引きが
車まで追ってくる。
いくつ買うと安くするから、と民芸品やら
生活雑貨品を手に、売り込みに余念がない。
ライステラスに着いたとたん、
小さな少年が近づいてきた。
ポストカードを買わないか、と
手に持って見せに来る。
一瞬心が揺れる。
どうしよう。買ってあげようかな。
きっとこの子の仕事なんだろうな。
草で作った帽子をかぶっている。
だけど、勇気を持って
黙って、首を横に振った。
だって、この子の目、
うつろでどこも見ていない。
生活のために、こうするしかないのだろうと
容易に想像はつくけれど
ここで、ポストカードに10円、20円を出したところで
親に渡すだけだ。
きっとこの子の生活はよくならない。
帰り道の路上でもおなじように
少女が信号待ちの車の窓をトントン、と
叩いて手のひらを差しだすしぐさ。
彼女の目もまた同じ、
うつろによどんでいて、
どこにも焦点が合っていなかった。
あげるお金が惜しいんじゃない。
子どもが稼げば、親はますます
子どもに要求するだろう。
もっと持って来い。と。
暮らしのために。一家のために。
だけど、本当は
赤ちゃんは泣くのが仕事。
子どもは遊ぶのが仕事。そして勉強するのが仕事なのだ。
いろんなテレビを見ていても
一様に、どんな貧しい国の子どもたちも
口を揃えて言っている。
勉強がしたい、と。
すっかり学校システムができあがっている
国に生まれた子どもたちは、できるだけ
勉強はしたくない。
学校なんてなければいいのに。
宿題なんか、テストなんかない国に行きたい。と
心底願う。
でもそれは、いつもそこにあるから
疎ましく思う大切な存在とおんなじだ。
学校に行けない子どもたちの願いは
もっと深刻で切実だ。
目の前にいる、少年や少女を切ない思いで、
だけど、
愛を持って目をそらし、まっすぐ前を向いた。
本当だったら、笑顔で応えて会話したい。
心の中で、つぶやいた。
どうか、いつの日か学校に行ける日が来ますように。
学ぶ楽しさを味わう日が来ますように。
今は、ごめんね。
今は、祈ることしかできない。
どうか、いつの日か。
***********************
ある戦場カメラマンが
こんなことを言っていたそうだ。
「アジア人は泣くことと、笑うことが上手な民族だ。」
戦渦の悲惨さを伝える写真を
撮るのが仕事なのに、
辛い惨状の合間を縫って
屈託なく笑う子どもたちが好きで
たくさんの作品を残しているのだそうだ。
やっぱり子どもたちには
心の底から笑ってほしい。
戦争や、貧困を越えて
豊かな生活を送ってほしい。
それは、物質的に豊かな先進国に
なってほしい、というわけではない。
宇宙や地球のリズムに合わせて
自然と調和し、人間の叡智と
しっかりバランスのとれた生活。
私ひとりができることなんて
ほんとうにちっぽけだけど、
それでもやっぱり
なにか、きっと未来のためにできるはず。
私しかできないこと。
みんなと一緒にできること。
***********************
最終日は朝から
約束のブギーボードを教えてもらった。
波乗りは初めて♪
Chrisがタイミングをはかりながら
波の動きに合わせて
クルッとボードの向きを変えてくれる。
GO!という声とともに
思いっきりボードを押してくれると、
ふ~っと軽くなる。
そして、波の頂上にカラダが乗ったまま、
浜へと滑るように運ばれていく。
きゃ~!本当におもしろいね!
サイコー!
ね!だからおとといもやればよかったでしょ?と
Kai が言う。
***********************
最後のランチタイム。
何が食べたい?最後だからね!と言ってくれた。
そして、初めての
ギリシャ料理をリクエスト。
腹ペコになって、しかも
久々に海でたっぷり遊んで
心地のよい疲労感。
よくプールで泳ぐとこんな感じでふわーっとした
感覚になったっけ。
料理がでるまでボーっとしていたら、
Chrisが
「そうやって、遊び疲れて
何にも考えないのはすごくいいんだよ。
悲しいことも、辛いこともみんな忘れられるからね!」
そうだよね。
大人になると、疲れるまで遊ぶなんて
しなくなっちゃうもんね。
時にはこうやって
思いっきりはしゃいで、
カラダ動かして自分のなかのマジメな大人を
忘れてみると、笑顔も格別。
やっぱり子どもであろうが
大人になっても、いくつになっても
人は笑っている顔がいい。
バリで過ごした時間は、
どこかにしまいこんでいた
笑顔をすっかり呼び覚ましてくれた。
どんなことが起きようと、
たとえ、
望んでいる結果にならなくても、
それでも、すべて受け入れる。
祈る。感謝する。
そして、笑うこと♪
ね、私も飛びきりの BIGスマイルになったでしょ?
家に帰ると背中だけヒリヒリと日焼けしていた。
ブギーボードに乗って、うつぶせになって
太陽に思いっきり背を向けていたからだ。
うわ~ん!痛いよ~!
火照った背中にローションを
ペタペタと塗ってくれるTatsuro。
「お母さん、左側の肩はちゃんと
日焼け止め塗れてるから、
あんまり焼けてないけど、
右側、しっかり塗らなかっただろ!
すごい真っ赤だよ!」
だって、左手で塗りにくいんだもん。
皮がむけるほど日焼けしたのも
何年ぶりだろう。
***********************
たくさんの新しい思い出と一緒に、
思い出したもの。
いつもいろんなところで流れていた
ゆったりとした優しいガムランの音色が
今もまだ、時折心の中にこだまする。
【バリの旅物語 おわり】