Hawaiiから戻って、ファインに出社したら、
ゴーヤが社内に広がっていた。
足を踏み入れた瞬間の、圧倒的な存在感。
・・・・・・。
しばらく状況把握の時間が必要だった。
「それ、どうしたの?・・・
ゴーヤ?ここに来たの???」
毎夏、室内熱中症にさいなまれる妹NAOKOが
先月、買ってきたゴーヤの苗。
でかける前はほかのお花たちにまじって
玄関先ですくすく伸びていたのに
ほんの一週間、留守にしている間に
室内に居を構え、
窓一面ひろがる“ゴーヤネット”に添って
その触手を伸ばし始めていた。
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TOKYOの夜はまだまだ明るさを取り戻していない。
自動販売機の「ただいま節電中」の大きな張り紙。
駅やスーパーもまだまだ薄暗い。
夜道も暗い。
エスカレーターも時間帯によってはストップしているし、
成田空港にむかう京成電鉄のイブニングライナーは、
ネットで調べた時刻表では案内されていたのに、
実際行ってみたら「節電のため運休」の張り紙が
小さく貼られて本当に焦った。
震災による節電モードは、東京はじめ関東地方は
現在進行形、真っ最中である。
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そんな中、“暑がりさんたち”が恐れているのが
夏の冷房節電計画。
寒さに弱く、暑さに強い私は
夏の心配はないのだが、
その逆をいくNAOKOは早くから
「グリーンカーテンプロジェクト」に目をつけていた。
特に、社長席の背中に位置する
ガラス窓から差し込む朝陽は、
真夏には容赦なく切り込んでくる勢いである。
なんとかその熱量を緩和させたい思いでいっぱいの彼女は
そのいきさつははっきりわからないが
建物の外壁ではなく、室内にグリーンのカーテンをつくることに
決めたらしい。
「いや~。気になっちゃって仕事にならないわ!」と
背後で成長し続けるゴーヤに夢中だ。
しょっちゅう後ろを振り返り、
雌花と雄花が受粉できるかどうか、
ツル状のくるくるをネットにうまく巻きつくことができるかどうか、
チェックに余念がない。
水、もうあげた方がいいかな?
まだあげないほうがいいかな?
仕事の合間のひととき
ワクワクと心を躍らしているようす。
「ゴーヤ、もうひと鉢いるかしら?
今銀座なんだけど、お花やさんで売っているのよ。
NAOKOさんいるかしら?」と出先から連絡してきた会長である母。
どうかな?
たくさんは必要ないと、思うけどひと鉢ぐらいならいいんじゃないかな?
来客中の彼女にかわって返事をした。
結局、3鉢を買って帰ってきたそうだ。
理由は、
「ひとつだと350円で3鉢だと550円だっていうんだもの。」
という。
・・・へぇ、銀座なのにずいぶん安く売っているんだね。
残りの2鉢は、お隣の薬局やさんと、
社内の女性におすそ分けしたという会話を嬉しそうに話す母、KAZUE。
まるで盆栽いじりが趣味の悠々自適な生活者のように
このところ園芸のとりこになっている妹、NAOKO。
ハワイから戻って、まだその余韻にひたりつつも
新しい商品開発に着手し、
あらたなヒット商品を狙うべく企画開発中
であれこれ模索している私、KAORU♪
とはいえ、一日中歯ブラシを口にくわえて
きっと傍目から見たら、ちょっとまぬけ。
のんびりとしたゆるやかな
空気あふれるファイン。
厳しい時代を乗り越えていくために
もちろんちゃんと生き残りをかけ、
社内一丸となって未来にむかって進行中、なのである。