頑固爺の言いたい放題

森羅万象なんでもござれ、面白い話題を拾ってレポートします。

「下町ロケット」:苦情と書評

2018-10-03 12:52:08 | メモ帳

去る7月、新刊書「下町ロケット、ガウディ計画」と「下町ロケット、ゴースト」2点の新聞広告を見た。著者は池井戸潤で、10数年前の半沢直樹シリーズ以来、私はこの著者の作品は欠かさず読んでいる。

その時はほかに読む本があったので、書店に行ったのは8月末。この2点は書店の入り口のそばの目立つ場所に並んで陳列してあったから、ベストセラーなんだろう。それでも、なぜ「ガウディ計画」が文庫本で、「ゴースト」が単行本なのかに疑問を覚えたが、深く考えずに2点とも買い求めた。

帰宅して文庫本の「ガウディ計画」から読み始めたが、しばらくしてこの作品は以前に読んだことがあるのに気づいた。調べてみると、「ガウディ計画」は201511月に「下町ロケット2 ガウディ計画」というタイトルで単行本として発行されているから、私はその時に読んだのだろう。読了後、すぐさま古本屋に直行し、拙宅の書棚になかったから読んだことをすっかり忘れていたらしい。

文庫本の帯封を見ると、“あの感動が再び!!”と書いてあるが、これは“単行本を買った人は、この文庫版をまた買って感動せよ” という意味なのだろうか。しかし、そう気づいたのは読み終わってから。出版社の小学館は、こんな曖昧なキャッチコピーでそそっかしい人間を騙そうとせず、“これは以前発行した単行本の文庫化ですよ”としっかり告知するべきだったのではないか。それにしても、同じストーリーの本を買ってしまったのは、うかつだっ

さて、「下町ロケット」シリーズは東京の大田区にある町工場を舞台にしたビジネス小説である。第一作の「下町ロケット」は、宇宙ロケットのエンジンに使われるバルブをテーマにしており、第二作の「下町ロケット、ガウディ計画」はその技術が心臓の人工弁として活用される話、第三作の「下町ロケット、ゴースト」は同じ技術が車のトランスミッションに活用される話である。同じ登場人物のシリーズを統一テーマでまとめた著者の構想力に脱帽した。

池井戸潤は元銀行マンだから、銀行を舞台にした半沢直樹シリーズはお手のものだったろう。しかし、その後発表された「空飛ぶタイヤ」やこの「下町ロケット」シリーズはストーリー自体のサスペンス性もさることながら、まったく違う分野を題材にしており、技術面や特許制度に関する造詣が深くないと書けない。著者はよほど勉強したのだろう。

ところで、「下町ロケット」シリーズの第四作「ヤタガラス」が近々発売になるらしい(または、もう発売になったかな)。楽しみである。それにしても、第三作と第四作の間に2ヶ月しか経っていない。そんな短期間に新しい作品を書き上げられるものだろうか? まさかこの第四作は、旧作単行本の文庫化または文庫本の単行本化ではないだろうねぇ。(笑い)