頑固爺の言いたい放題

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観光客が減った十国峠

2018-10-26 15:37:34 | メモ帳

冠雪した富士山を愛でようと、久々に十国峠へ出かけた。

幸い快晴に恵まれ、十国峠はさぞ賑わっているだろうと思いきや、さほどではなかった。熱海から乗ったタクシーの運転手の話では、三島のスカイウォークに富士山目当ての客を奪われているという。そのためか、以前はレストランがあった2階は閉鎖されて、全体が寂れた観光スポットの印象がある。それでも一階にファストフードの店が2軒あり、飲食にはノープロブレムだが。

       レストハウス前から富士山を望む

気になったのは、箱根の他の観光スポットに較べて、十国峠には外国人観光客が少ないこと。東洋人は見分けがつかないだけかも知れないが、白人の姿はない。なぜだろう?

レストハウスからケーブルカーで登ったところが展望広場で、その一角に「十国」と大書した木製の標識がある。観光客のほとんどが、その標識と富士山をバックに記念写真を撮る。ちなみに、「十国」とは、伊豆・相模・武蔵・上総・下総・安房・甲斐・駿河、信濃・遠江を一望に見渡せるから。

富士山は言うに及ばす、眼下に沼津市街を見下ろし、その先には駿河湾、左側に伊豆の山並み、そして広場の反対側からは、相模湾はもとより房総半島まで見渡せる眺望は抜群である。「十国峠」とは絶妙のネーミングだと今さらながら感心する*

ちなみに、「十国峠」の標識は上述のように、尾根の頂きにある。1956年(昭和31年)に伊豆箱根鉄道がこの場所にケーブルカーを敷設した時、山頂(日金山)にこの標識が設置された。

それから60余年、十国峠は日本有数の観光スポットになった。スカイウォークという競争相手が出来たとはいえ、それは最近の外国人の増加による観光ブームと相殺されるから、観光客が減るのは解せない。ことによると、その英訳の Jukkoku Passに問題があるのではないか。

峠はその一字で「A地点とB地点を結ぶ山道の途中の、登りから降りに変わる地点」を意味し、そのほかの意味はない。しかし、峠に該当する英語のPassにはいろいろな意味があり、その内の一つが「山合いの小道、峠」である。日本語の「峠」は点だが、英語のPassは線であり、その線上に「峠」があるのだ。つまり、「峠」にぴったり該当する英語はないのである。

さらに、峠という単語には日本人の情感に訴える部分があり(例えば、「伊豆の踊子」の舞台となる天城峠)、観光スポットとしてのイメージはいい。しかし、英語の Passには、そういう情感はまったくない。

日本語の「峠」と英語のPass は概念も違えば、言葉の重みも違う。Passと表記したからといって、外国人が「峠」を思い浮かべるわけではないのである。

だから、外国人(特に英語圏の人々)は、Jukkoku Pass と聞いても情感もエキサイトメントも感じず、行ってみようとも思わないのではなかろうか。Jukkoku Passと聞いて、「通行許可証」とか、「ラグビーのパス」を思い浮かべることはないだろうが・・・(笑い)。

冒頭に、十国峠には外国人観光客(特に白人)が少ないことを指摘したが、その解決策は、英文ガイドブックにJukkoku Pass ではなく、Jukkoku Viewpoint と表記し、合わせてJukkokuの由来を説明することではなかろうか。

うがち過ぎの見解かも知れぬが、十国峠が以前の盛況を取り戻すことを願って、屁理屈を述べた次第。

                                   終

(注)十国峠という地名は明治初期の文献に登場するが、その名称が生まれたのがいつの時代なのかは定かではない。