私が通算30年余の米国滞在から帰国した際、今浦島として違和感を持ったことはいろいろあるが、その内から特に欧米人が奇異に感じるであろうことを一つだけ挙げたい。
それは、洗濯物(特に下着)を人目に晒すのが当たり前であること。
欧米のマンションのバルコニーは幅が広く、庭の感覚だが、日本では幅が狭く、物干し場の役目を果たす。また、戸建ての家では、軒下(または二階の物干し台)に洗濯物を干すことが習慣である。この「日本では当たり前」のことが欧米では当たり前ではない。
日本では洗濯機は必需品になったが、乾燥機を備えている家は稀である。一方、米国の高級集合住宅(コンドミニアム)では、必ず専用の室内に洗濯機と乾燥機を置くスペースがある。中級クラスの大型賃貸アパートメントハウスでは、構内に洗濯機と乾燥機を数台ずつ設置してある共用スペースがある。日本でも最近よく見かけるようになったラウンドロマットが、アパートの一角にあると思えばいい。もちろん有料だが、住民は皆そこを利用する。つまり、米国では乾燥機は洗濯機とセットになっているのだ。
日本で乾燥機が普及しないのは住居が狭いためだが、それだけが理由ではあるまい。日本人は下着を人目に晒すことをなんとも思っていないが、欧米人はそうではないことに違いがある。私の感覚では、下着を人に見せることは電車内で化粧することよりも、もっとみっともないことなのだが・・・。
欧米では、通行人からよく見える場所に洗濯物が風にはためいていたら、そこは貧民街である。ところが、日本ではかなりの高級住宅街でも、それはおなじみの光景だから、誤解を招く。
手前味噌だが、拙宅では折り畳み式の物干し台が室内に置いてあり(来客があると片付ける)、バルコニーに洗濯物を干すことはない。家内によれば、埃を避けるためでもあるという。
外国人観光客が増えた今、洗濯物は裏庭か室内に干してもらえないだろうか。