東京や大阪など公共交通機関が発達して地域では、最近車を持たない人たちが増えているらしい。
車を所有するコストは保険料、車検・オイルチェンジ等のメインテナンス費、ガソリン代、ETC代、駐車場利用料などすべて合算すると年間60万円から80万円になるから*、車を持たず必要な時にレンタカーやタクシーを利用すればいい、と考える人が増えたのだろう。つまり、ライフスタイルが実利的になったのである。
*保険の付保条件と駐車場使用料(都心部で月3万円、都内住宅地で2万円)で大きく異なる。
この車離れ現象は、車のメーカーにとしても大きな痛手だが、いろいろな分野に影響を与える。その一例はマンション管理組合の収支である。
マンション管理会計の収入源は区分所有者が毎月支払う管理費と専用駐車場の利用料**の二つであるが、車離れで専用駐車場に「空き」が発生すると、管理費会計の収入が減る。
**駐車場使用料を管理費会計でなく修繕積立金会計に計上するケースもある。
例えば、50戸あるマンションで駐車場利用者が25戸、駐車場利用料が月3万円のケースでは、駐車場に2台の「空き」が発生すると、月に6万円、年間で72万円の収入減となる。
駐車場利用料を32,600円に値上げすれば、収入減を埋め合わせることができるが、近くに月3万円もしくはそれ以下の月極め駐車場がある場合は、値上げするとさらに「空き」が増えるので、値上げはできない。
マンション外部の住民を対象に駐車場利用者を募ると、全体が営利事業と見做され、現在の利用者含め全員に消費税が課せられる。さらにマンションの駐車場利用料収入全体に対して所得申告することが必要となり、かえって損失が増える。結局、月6万円の収入減は管理費の支出を増やす、つまり区分所有者全員が専有面積に応じて負担する、しかない(単純平均すると、月ベースで60,000÷50=1,200円の負担増)。
なお、地価が高い地域ほど月極駐車場の料金が高く、マンションの駐車場利用料はそれに準じて設定されるから、満車なら管理費の負担が軽減される度合いも大きいが、「空き」が発生すると打撃の度合いも大きくなるというわけだ。
この問題はマンションだけにとどまらず、アパートに付属する駐車場や月極め駐車場にも同様に発生する。
車離れ問題は駐車場経営者(マンションの区分所有者は専用駐車場の共同経営者でもある)の懐を直撃するが、対策はない。駐車場経営者受難の時代である。