頑固爺の言いたい放題

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捕鯨論争

2019-01-13 11:22:01 | メモ帳

日本政府は、国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、「今後は排他的経済水域(EEZ)内で商業捕鯨を実施する」と宣言した。

この日本の方針転換に関し、昨年12月末ニューヨークタイムスは社説でIWC脱退を非難し、「鯨の虐殺をやめろ」と主張した。その批判に対し、日本の外務省は1月11日の同紙に寄稿し「日本の捕鯨はIWCで科学的に確立された方式に基づく捕獲枠の範囲内であり、EEZ海域内に限るものである」と反論した。

http://news.livedoor.com/article/detail/15862912/

日本の捕鯨に対する一般的な批判とその反論については、下のブログがうまくまとめてあるので、ご覧頂きたい。

https://ddlanouba.exblog.jp/10160064/

ところで、現在のIWCの施策にはいろいろな矛盾がある。例えば

●ノールウェーの沿岸捕鯨は承認され、日本の沿岸捕鯨は承認されない。

●死んだ鯨が誤って網にかかるのは混獲と呼ばれ、やむをえないとして認められているが、韓国ではその混獲の数量は日本の調査捕鯨による数量の何倍にもなるという。

https://www.youtube.com/watch?v=7_us_hI_SEs

このような事情があるから、日本がIWCを脱退するのはやむをえないと私は考える。しかし、日本政府の主張にも矛盾がある。

これまで水産庁の調査捕鯨に関する大義名分は「将来起こりえる食料不足に備える」であった。それが今度は南氷洋へは行かないが、EEZ内で捕鯨を実施するに変わった。捕鯨の場所が変わっても、将来に起こりえる食料不足に備えて準備をしておくという点では同じであるはずだ。

一方、日本では鯨肉需要は激減している。調査捕鯨で獲れた鯨肉さえも売れ残っているらしい。売れ残るのは美味しくないからだろう。将来、鯨が増え過ぎて、捕獲することが必要になったとしても、日本人がにわかに鯨肉を食べるようになるとは思えない。

私自身、鯨肉を食べた記憶は、十数年前に渋谷の「くじらや」に“どんな料理なのか、一度食べてみよう”と思って行ったことがあるだけである。その前といえば、終戦後間もなくの頃、家庭でやけに塩辛い鯨肉を食べたことがあるだけだ。これは私だけのことではなく、ほとんどの日本人が同様ではないだろうか。

では、なぜ日本政府(水産庁)は捕鯨に固執するのか。それは、官僚が予算(そして自分の仕事)を手放したくないからだと推測する。自民党の大物政治家の選挙区に捕鯨基地*があるという理由で、官僚に忖度が働いている可能性もある。

これまで調査捕鯨(実質的には商業捕鯨)は採算的には赤字だったと想像する。それがEEZ内での商業捕鯨になっても、捕獲数は増やさないようだから、黒字転換することはありえない。

つまり、伝統的沿岸捕鯨は別として、遠洋捕鯨は税金の無駄使いである。将来起こりえる食料不足に備えるのであれば、水産業・畜産業の振興に資金を投入すべきである。

                                                         終

(注)遠洋捕鯨の基地は下関で、安倍首相の選挙区。伝統的沿岸捕鯨の基地は和歌山県太地で、二階幹事長の選挙区。