本書(2019年1月刊)は、現代日本を欺いている巨悪は「メディア」「護憲派」「官僚」の三本柱であると主張しており、私も共感する箇所が随所にある。なかでも、「なるほど、そうかも知れんな」と納得した部分は、下記の日本の法学界を論じた部分(「法律の解釈しか学べない日本の法律学」148ページ)である。
法学部を出た知人にいわせると、日本で法学部に入り、法律の専門家である「法曹」を志望して司法試験を受ける人は、非常に偏った勉強を強いられるそうです。六法全書の条文に書かれた重要キーワードの定義と、頻繁に出題される論点を覚えた上で、法律の条文解釈に関する通説と判例の対立点・・・中略・・・を丸暗記することが司法試験の勉強のほとんどすべてだそうです。
日本の法学部の「憲法」と題された講義は、日本国憲法の条文と、その解釈論や判例を正確に覚えるだけだそうです。「日本の過去と現在、そして未来を考えた時に、今後の憲法はどうあるべきか」といった重要な課題について、法学部の若い学生が、自らの頭脳を使って考えることは絶対にない。それどころか、「法律家は政治家ではないから、憲法や法律の条文を考えてはならない」と叩き込まれるそうです。「法律の文言や内容はすべて正しい」という前提でしか学べない特殊な法理学なのです。日本の法律学は、私の常識に照らすと、もはや学問とは言い難いものです。
・・・中略・・・
日本の多くの憲法学者は、「憲法学」の本物の専門家とはいえず、日本にしか存在しないガラパゴス的な学問、「日本国憲法解釈学」を次世代に伝承することの専門家でしかないのです。
この論法では、日本の憲法学者は憲法改正に反対するのが当然ということになる。(改正賛成派の憲法学者もいるとは思うが・・・)
もうひとつ共感したのは次の箇所(「メディアが映像や声まで印象操作」62ページ)。
もともとメディアによっては、中国や北朝鮮に関する悪いニュースはなるべく小さく報道したり、日本人が安全保障に関心を向けるような話題は、できるだけインパクトの弱い形で伝えようとしたりする傾向があるのです。
私もメディア(産経新聞を除く)はここに書かれているような傾向があると感じていた。そのわけは、各メディアは憲法改正に反対だからである(但し、産経は反対、読売は中立)。国民が安全保障に関心を持ちかつ懸念すると、憲法9条の改正に賛成するだろうと想像して、報道しないか、または矮小化して報道するのだろう。具体的には、朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、東京新聞、NHK、TBS等のメディアは、印象操作によって、読者を憲法改正反対に誘導しているのである。
さて、私はG氏の著作はほとんど読んだが、各著作に共通する基本的論点は「日本人はGHQのWar Guilt Information Programによって洗脳され、いつまでも戦争に対する贖罪意識を持ち続けていること」と「韓国人・中国人は儒教の教えによって毒されているから、現代のグローバルな価値観からかけ離れていること」という点である。
この2点については、私は100%同感だが、本書には目新しい論点がない。というより、もう種切れになった感がある。G氏もその点については自覚しているらしく、「メディア」「護憲」「官僚」に関して、過去に偉業を成し遂げた人物について論じることで、論考の視野を広げている。それはそれで評価するが、昔のあまり知られていない人物を称賛されてもピンとこないのである。
端的に申して、「日本人に告ぐ大直言」は私には期待はずれだった。
蛇足:タイトルにある「本当は世界一の国」に関する記述は本書にはないから、多分出版社が付け加えたものだろう。典型的な羊頭狗肉である。読者をいい気分にさせて買わせようとする魂胆が見え透いている。最近、こうしたタイトルの本が増えているのは遺憾である。