たまたま、図書館で「韓国人の反日、台湾人の親日」(黄文雄著、光文社カッパブックス)という本を見つけた。今から20年前の1999年に発行された本だが、基本的には韓国の反日思想は当時から変わっておらず、むしろ悪化した感がある。
日本は1995年に村山富市首相が、また1998年には小渕恵三首相が「過去の植民地支配で韓国国民に多大の損害と苦痛を与えたこと」に謝罪した。黄文雄氏はこうした謝罪外交が誤りだったと指摘する。
本書は台湾と韓国における日本統治を比較しているのだが、台湾統治はさておき、朝鮮統治に関する黄氏の主張は、「日帝の植民地支配は、人類史上最悪の搾取」という韓国人学者の主張に対する反論となっている。その主張の要点を同書から引用する。なお、下線は私(頑固爺)が施したもの。
●「日帝36年」による国土開発計画に見られる治山治水、交通、流通システムなどインフラの整備、文化の保護と教育の普及が、韓国の近代国家の基礎をつくった。(P.39)
●(日韓合邦に関し)日韓双方に反対者が多かったのは、確かであろう。しかし、朝鮮半島史から見れば、国家形態の変更も領土変更も、史上初めての平和的移行である。不幸な歴史ではないどころか、朝鮮半島は大日本帝国の発展とともに、数え切れないほどの恩恵を均霑(平等にうるおうこと)していた。(P.50)
●「日帝36年」間に、平均15-20%前後、日本政府からの補充金で財政を支えていた。それは赤字補填ではなく、基本建設や産業建設への投資であった。「日帝」が朝鮮半島の住民を搾取して母国を肥らせたのではなく、朝鮮総督府は日本国民の税金で朝鮮半島の民を養い、近代国家としての社会的経済的基礎を確立し、自立への道を育てた。・・・「搾取」されていたのは朝鮮人ではなく、日本人だった。(P71)
● 私(黄氏)から見れば、この「日帝36年」こそ、統一新羅以来、千年余の歴史の中で、もっともダイナミックな、伝統的呪縛から逃れた新しい時代である。・・・新生韓国が生まれ変わる陣痛を伴ったことは、私も否定しない。「日帝」支配は誤算、過酷なところもあったであろう。それでも20世紀のアジア史では、朝鮮半島の「日帝」との出会いほど幸運なことはない。朝鮮半島は近代国家の基礎をすべて「日帝」の恩恵として手に入れた。近代市民意識の誕生も、戦後、韓民族主義の形成と発展に大きく貢献している・・・。(P.128)
日本人がこんなことを言ったら、我田引水の感があり、韓国人の猛烈な反発を招くだろうし、反日日本人にも批判されるだろう。台湾人だからこそ、こんなことを堂々と言えるのであり、“黄さん、よくぞ言ってくれた”である。
●李朝の王室は天皇の華族に列せられ、朝廷の重臣、功労者もそれぞれ叙爵されたことは・・・差別というよりも至れり尽くせりの優遇だった。(P.51)
この李朝王室の優遇は、韓国人のプライドを傷つけまいとする意図もあったと思う。加えて、日本人皇族の梨本宮方子(まさこ)が李朝最後の皇帝となった高宗の跡継ぎである李垠(ぎん)に嫁いだことも、同格であることをアッピールする目的があったと思う。前項の赤字運営も含めて、日本の朝鮮統治は、欧米列強の植民地運営とはまったく異質だった。
●韓国人は、もともと日本人と同じように教育水準が高かったと考えている人が多い。しかし、それは大きな間違いである。・・・李朝時代には漢文教育が主体で、ハングルは・・・禁止されていた。・・・儒教文化圏は、韓国に限らず、その社会構造が基本的に愚民社会を前提にしている。・・・儒教文化圏の愚民政策社会に教育を普及させたのは、日本の教育熱であることを忘れてはならない。(P.136)
●日帝は植民地住民の搾取以外にも、その言語まで奪ったと指摘され、日本人は今日も、たびたび非難されている。・・・それはまったくの歴史歪曲だ。言語まで奪ったというよりも、日本人はハングルを奨励したというのが事実である。・・・漢字、ハングル混じりの文章を体系化したのは、統監政治以後の日本人言語学者と教育学者を中心とする専門家の努力によるものだ。(p.139)
日本が朝鮮にハングルと漢字の混合文を普及させ、識字率を高めた。ところが、1990頃から漢字が一掃され、今ではハングルだけの文章になってしまった。それでは同音異義の単語はどのように区別するのだろうか。例えば、校門と肛門をひらがなで書くとどちらだかわからない。こんな心配は余計なお世話かも知れないが・・・(笑い)。
さて、本題に戻る。
「日帝の植民地支配は、人類史上最悪の搾取」はとんでもない歪曲だが、なぜこんな歪曲が必要だったのか。それは、戦後の韓国・北朝鮮の独立は棚ぼた式に連合国によって与えられたギフトだが、それでは彼らのプライドが許さない。なんとかして、独立は韓国人(北朝鮮人)の努力で勝ち取ったものだというストーリーにしたい。そこで、日本の悪逆非道に対抗して自然発生的に独立運動が芽生えたことに仕立て上げた。このストーリーでは、日本の善政を隠蔽し、悪行を誇張することが必要になる。これが歴史歪曲の本質だと思う。なお、この解釈は頑固爺が言い出したことではなく、数多の学者・有識者が言っていることである。
ところで、確かに百年前の1919年(大正9年)に韓国で大規模な暴動が起きた。そして、その発端は独立を旗印にした運動だった。併合によって既得権を失った人々が一層暴動を激しいものにしたが、そんなことはどうでもいい。この発端の精神が憲法にも記載されているから、これが韓国人の精神的支柱になっている。しかも、今年はその百周年を迎えるから、一層韓国人の愛国心に訴えることだろう。どうぞご勝手に、というほかない。