頑固爺の言いたい放題

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首脳会談を撮影したのは誰か

2019-11-10 14:15:30 | メモ帳

去る8日、産経新聞は「日韓首脳対話 無断で撮影、韓国側が公表、紳士協定違反」という見出しの記事を一面トップで報じた(写真)。

その記事は次の文章で始まる(赤字)。

安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領が4日、訪問先のタイのバンコック郊外で、短時間言葉を交わした際、韓国側が日本側に無断で撮影を、その写真を公表していたことが7日、分かった。・・・韓国側は首脳会談をアピールし、関係改善の糸口を見出す思惑があったようだが、韓国側の“だまし討ち”に日本政府は対韓不信を強めている

このあとに続く部分は省略するが、知りたい方は下をクリックされたし。

https://www.youtube.com/watch?v=EMxyrvDjtAk

この会合はもともと予定されていなかったが、文大統領の要請でASEAN会議の合間に急遽セットされた10分ほどの非公式会合である。したがって、その場にはメディアのカメラマンはいなかったはずだが、11月5日の各紙はその会合を写真入りで報じた。

頑固爺もこの写真は見たことがあるが(多分5日の読売新聞)、言われてみれば確かにその写真を誰が撮影したのかは問題視してしかるべきである。

産経によれば、この写真を撮影したのは文大統領の随行員(鄭義溶国家安全保障室長だという証言あり)で、改めて掲載された写真の説明には“韓国大統領府提供、聯合ニュース経由=ロイター”とあるから、この写真は韓国政府から聯合ニュースにわたり、そこからロイター通信経由で各紙に配信され、5日の各紙の紙面を飾ったことになる。

その時点では、各紙はその写真が誰によって撮影されたのか、疑問を持たなかった。しかし、産経だけは誰が撮影したのか不思議に思い、調べた結果を3日後の8日になって発表した、という流れだろう。

さて、文氏としては日本との関係改善に努力しているということを韓国々民と米国に知らしめるために、安倍首相を無理にショート・ミーティングの席につかせたわけだが、写真でその会合を視覚的に補強したかったと推測する。

礼儀として、韓国側は写真を撮ったこととそれをメディアに提供することを日本側に伝えるべきだった。その点で確かに韓国側の対応は非礼である。しかし、産経の“だまし討ち”という表現は言い過ぎのように感じる。さらに、一面トップに据えるほどの事案ではなかったのではないか。当日はよほどニュースがなかったのだろう(笑)。

さて、当該記事に続いて、“日本側の発表を韓国首相が批判”という見出しの話題は次のようである。

【ソウル発】韓国の文在寅大統領と安倍首相がタイで4日に行った面談などに関する日本側の発表について、韓国の李洛淵首相は7日、「対話の内容も紹介せず、国際的な基準に合うとは思わない」と批判した。・・・日本の外務省が、安倍首相は文氏に「わが国の原則的立場をしっかりと伝達した」などと発表したのに対し、韓国大統領府は、両首脳の対話による問題解決に重点を置いた発表を行っていた。(以下省略)

李洛淵首相は“韓国政府の発表に比べて、日本政府の発表は説明不足だ”と批判しているわけだが、たった10分の対話の席上で、文大統領が安倍首相に関係改善の具体策を提案したとは思えない。百歩譲って、重要な提案があったのであれば、日本政府はそのように発表しただろう。“国際的な基準に合うとは思えない”というほどの大げさな話ではない。

文大統領としては、「韓国政府が関係改善に向けて、こうして努力しているにもかかわらず、日本が乗ってこないのだから、日本が悪い」というストーリーに組み立てたいのだろう。文氏は日韓基本協定を反古にしようといろいろ画策していることが窺える。

では韓国の新聞は産経の記事にどう反応したか。以下、中央日報の記事を引用する(青字)。

8日の産経新聞は1面トップ記事で「両首脳による面談の写真は、韓国側が日本側に無断で撮影、公開していた」と報じた。続いて「韓国が一方的に首脳間の対話を内外に示そうとしたためだが、日本政府は用意周到な韓国側の“不意打ち”に対韓不信を強めている」と伝えた。

同紙によると、青瓦台(大統領府)が両首脳の対話場面の写真を公開したことに対し、「信義則に反する」として憤る反応が複数の日本政府関係者から出ているという。

日本側は写真を撮影した人物として青瓦台の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長を挙げた。控室に入ることができるのは首脳と通訳の4人だけだが、写真に写っている人のほかに「第5の人物」がいたということだ。・・・

同紙は青瓦台がホームページに写真を掲載し、「文大統領が日本の首相と歓談」と韓国語だけでなく英語、日本語などでも説明し、「対外的なアピールも狙った」と主張した。一方、日本外務省がホームページにこれを紹介しないのは「そもそも日本側は日韓首脳が対話する事前の準備はしていなかった。写真撮影はなおのことだった」と伝えた。

首脳間の非公式対話の写真撮影とこれを公開することについてルールはないが、外務省の幹部は「個人のSNSでも、誰かと写った写真をアップするときは、相手の許可を得るのが常識だ」と話すなど、日本側は韓国の行為を「エチケット違反」とみなしている、と伝えた。

4日の文大統領と安倍首相の対話について日本側は「接触」「対話」という表現を使用し、正式会談でない点を強調している。茂木敏光外相は「10分間の言葉を交わしたことをもって大きな評価をするのは難しい」と意味を縮小したりもした。

毎日新聞も前日、「青瓦台の写真公開は両首脳が『座って対話をした』という点をアピールしたかったため」という分析を出したりもした。

このように両首脳の対話の意味を縮小しようとするのは、22日の韓日軍事情報包括保護協定の最終期限を控えて韓国を追い込んだと信じる安倍政権の内心の表れという見方が出ている。

さて、中央日報は写真撮影に関する産経の記事に反論していない。同紙も言外に韓国側の態度が非礼であったことを認めていると解していいだろう。

首脳同士の対話についても、中央日報は日本の報道の分量が少なかったことを非難していない。そもそも、準備もなしの僅か10分の対話をいくら言葉で飾っても、李洛淵首相が言うところの「国際基準の会談」にすることには無理がある。このミーティングは単なる文氏のアリバイ作りだったと考える方が妥当である。

日韓の温度差については、下記をご覧いただく。このブロガーは一見軽い印象だが、話の中身は重いと評価する

https://www.youtube.com/watch?v=I8wU8R_hCOs