4月2日の産経新聞の一面トップ記事は“記憶遺産「慰安婦」凍結へ”だった。記事から引用する(赤字)。
国連教育科学文化機関(ユネスコは)は、「世界の記憶」(世界の記憶資産)の制度改革案をまとめた。「政治利用」を狙った申請案件について、加盟国が登録を阻止できる仕組みを設ける。・・・この改革は2015年、中國が申請した「南京大虐殺」の登録後、制度の透明性を進める目的で始まった。2016年には、日韓などの民間団体が慰安婦関連資料の登録を申請、日本は反発し、政治利用を防ぐ制度作りを求めてきた。(以下省略)
要するに、政治利用される懸念がある案件は関係国が同意するまで棚上げになる、というもの。この制度改革によって、慰安婦問題が記憶遺産として登録されることはなくなった。日本としては喜ばしい改革である。
さて、この記事の「日韓などの民間団体が共同して進めてきた案件に日本政府が反発・・・」という部分に注目したい。これは、“日本と韓国の民間団体が共同して反日事案を推進してきた“ということであり、その日本側の主役は、記事にはないが、吉見義明中央大学名誉教授であることは間違いない。
その吉見氏とはどういう人物か。Wikipediaの記述を要約して引用する(赤字)。
吉見が慰安婦問題で脚光を浴びたのは、防衛庁図書館で閲覧した慰安婦に関する資料を朝日新聞に渡したことにはじまる。朝日新聞は1992年1月11日の朝刊1面で「慰安所への軍関与示す資料 防衛庁図書館に旧日本軍の通達・日誌」と吉見の資料による記事を掲載した。
吉見も「・・・軍が関与していたことは明々白々。元慰安婦が証言をしている現段階で『関与』を否定するのは、恥ずべきだろう。日韓協定で、補償の請求権はなくなったというが、国家対国家の補償と個人対国家の補償は違う。慰安婦に対しては、謝罪はもとより補償をすべきだと思う」と述べている。(以下、省略)
この朝日新聞の記事は、数日後の宮澤喜一首相(当時)の訪韓にタイミングを合わせたものであり、そのために宮澤氏はソウルで猛烈な反日デモに遭遇し、なん度も謝罪の言葉を述べる羽目になった。そして、この謝罪が当時の官房長官だった河野洋平氏の「河野談話」へとつながっていく(1993年)。
だが、この「軍の関与」とは、性病の予防などの慰安所の運営規則や、悪質な仲介業者の存在への注意などであり、軍が慰安婦を強制連行したことを示すものではなかった。吉見氏は自説に都合のいい部分だけを朝日新聞に提供したのである。
なお、それ以前から、朝日新聞は故吉田清治の大嘘である慰安婦拉致説を信じて報道していた。宮澤氏と河野氏はこの大嘘を信じていたと推測する。
ということで、1992年までは「慰安婦問題」はボヤだったが、この時に大火事になったのである。その後も朝日新聞は吉田清治の虚妄を繰り返し報道し、22年後の2014年になってようやくそれが誤報だったことを認め謝罪した。しかし、韓国はその謝罪を無視して、現在に至る。
吉見氏はその後も一貫して、韓国の反日組織の支柱の役割を果たしてきた。最近も韓国MBC放送のインタビューで、“慰安婦は契約に基づいて、ビジネスに従事した”という論文を発表したハーバード大学のラムザイヤー教授を批判して、慰安婦は性奴隷だったと主張し、ラムザイヤー論文は撤回されるべきだと主張した。
ちなみに、李承晩TV*の朱益鍾(ジュイクジョン)氏は、(1)慰安婦は報酬を得ていた、(2)前借金を返済すれば辞めることができた、などの理由により、慰安婦は性奴隷ではなかった、と反論している。
(注)李承晩TVとは、「反日種族主義」の編者である李栄薫氏が校長を務める李承晩学堂が運営するYouTubeチャネル。民主主義の実現、反日種族主義の克服などをテーマにする講座を放映している。
その動画は下のURLから見ることができる。方法は、このURLをコピーして、GoogleやYahooなどの検索画面に貼り付ければいい。韓国語だが、日本語の字幕がついている。日本語の訳文にいくつか誤りがあるものの十分判読可能。
さて、日本人である吉見氏が、なぜ日本を貶める反日的活動を続けるのかを考えてみたい。
頑固爺の想像だが、彼は朝日新聞の自虐史観に傾倒している。すなわち、先の戦争における日本の行為はすべて悪かったという贖罪意識が旺盛で、とくに韓国には謝りたい、と言う意識がある(以前、このブログに頻繁にコメントを寄せていた某氏がそうだった)。
そして、自説に誤りが見つかると(例 朝日新聞の誤報・謝罪)、修正はするが、<日本(軍)=悪>という基本思想は変えない。自説を変えることは彼のこれまでの人生を否定することになるから、変えるわけにはいかないのだろう。
信念は絶対に変えないというのは、良し悪しの問題ではなく、彼の哲学なのである。反日日本人と謗られても自説に固執するのは、考え様では賞賛に値する人物と言えよう。
(追記)
慰安婦問題で韓国の市民団体を日本側からサポートしているのは吉見氏だが、徴用工問題で吉見氏の役割を果たしているのは、東京大学名誉教授の和田春樹氏である。二つの歴史問題で、日本人が日本の国益を損なう行為を働いているのは、残念なことである。