頑固爺の言いたい放題

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町議会議員が町を相手に訴訟!!

2021-04-10 11:56:36 | メモ帳
「町議会の議員が町を相手に訴訟」とは前代未聞の珍事である。その珍事が頑固爺の住む湯河原町で進行中だ。この件は以前にもこのブログで取り上げたが、それが裁判にまで進展したので、改めて全体を説明する。

【発端】
令和2年9月、湯河原町議会の定例会において、土屋由希子議員は「町税等の滞納者リストが議員に配布されているが、その一部が回収されていないのは問題ではないか」と発言した。

部外者には分かりにくいので、補足する。
町民税や固定資産税の滞納者のリスト(約2千件の滞納者の個人名や金額等を記した厚さ3-4センチになる資料)が町役場職員によって町議会の議員に手渡される。これはプライバシーの侵害と紙一重だが、議員が滞納の実状を知っておくためには必要な措置である。ただし、リストが悪用されることを防ぐために、議員は閲覧後、返却することになっている。土屋議員は「その返却されるべきリストが、一部返却されていないのは問題だ」と指摘したのである。

【懲罰処分】
ところが、土屋議員の発言は、「秘密会*の議事を外部に漏らしてはならないという議会内部のルールを破った」(議会の広報誌『議会ゆがわら』より)ことになり、同議員は懲罰処分を科せられた。その処分とは、「公開の場における陳謝」と、1日の出席停止である。

*(注)「秘密会」は法的に認められているオフレコの会議。

これに対して、土屋議員は陳謝を拒否し、書面で次のように反論した。
「過去に開催した町税等徴収対策強化特別委員会の議事録にある内容と今回の自分の発言内容は同一であり、なんら秘密の内容ではありません。(以下省略)」

この発言にある「過去の議事録」とは、具体的には平成27年(2015年)7月17 日の議事に関わるもので、町役場の徴税対策課長が、「議員に渡した滞納者リストは返却してもいいが、そのまま保管しても構わない」と説明したことが記録されている。そして、議事録は誰でもネットで閲覧できる。

したがって、議員が滞納者リストを閲覧し、返却しないものがあることは秘密ではなく、懲罰の根拠が間違っていることになる。議会側はこの反論の重大性に気づいていなかったのではないか。

頑固爺の疑問は、<秘密会の議事は議事録に記録されないはずだが、なぜ議事録に掲載されたのか>である。これは事務方のミスかもしれないが、その議事録は議員たちも承認しているはずである。

爺の推測に過ぎないが、議員たちには秘密保持の意識が希薄だったのではないか。そして、同じ理由で、3年前の議事録に「秘密会」に関する議事が記載されていたことを忘れていたのではないだろうか。

【訴訟】
土屋議員は、(1) 不当な懲罰(陳謝と出席停止)の取り消し、(2) 名誉棄損に対し50万円の損害賠償、(3)『議会ゆがわら』に謝罪広告を掲載、を求める訴訟を提起した。第一回口頭弁論は4月14日、横浜地方裁判所で行われる。

【頑固爺所感】
そもそも、町議会が土屋議員に懲罰を科したことは過剰反応だったと思う。同議員が町政の不合理な点をいくつも指摘したことから、「あの新人女性議員は生意気だから、懲らしめてやろう」という気分があり、その気分が過剰反応につながったと推測する。

また、『議会ゆがわら』には、土屋議員の謝罪文も掲載されているが、同議員によれば、この謝罪文は議会側が用意して、議場で同議員が読み上げるよう求めたが、同議員が拒否したものだという。『議会ゆがわら』は、土屋議員が謝罪を拒否したと記述しているから、この謝罪文と矛盾する。つまり、謝罪文掲載は余計なことであり、無自覚ののオウンゴールだった。

ともあれ、この裁判では被告(湯河原町)の立場は非常に不利である。湯河原町の敗訴になると、50万円の損害賠償金と裁判費用を町の財政から支出されることになるだろうが、納税者の観点では、バカバカしい出費としか言い様がない。さらに、関係者が裁判でムダな時間を費やすのも看過できない。

ついては、湯河原町は土屋議員に示談を申し入れてはどうか。その条件は、<議会は土屋議員の懲罰処分を撤回し、『議会ゆがわら』紙上でそのむねを報じる。一方、土屋議員は50万円の損害賠償要求を撤回する>である。
                                                                                                         終
【追記】
「秘密会」で配布される滞納者リストは、今後名前と住所を黒塗りにするように改正された(12月4日朝日新聞)。これは大きな進歩であり、土屋効果である。

さて、黒塗りのリストなら、議員たちが自宅に持ち帰る意味がなくなり、議場で一部だけを各議員が回覧すれば事足りる。そして、「滞納者リスト」の議事は「秘密会」扱いである必要はなく、本会議の扱いに変更していいのではないだろうか。