日本政府が「福島原発の処理水を2年後から海洋放出する」と発表したことに対し、中國・韓国・台湾・ロシア・北朝鮮が「容認できない」「極めて無責任」などと猛反発している。
彼らがなにを根拠に反発しているのかと仔細に新聞を読んだが、反発の根拠を見つけることはできなかった。文在寅大統領も最初は国際海洋法裁判所への提訴を示唆したが、IAEA(国際原子力機関)が日本の方針に理解を示していることや、放出が2年後であるため、被害の立証が困難などの理由で断念した模様だ。
とどのつまりは、敵性国家は科学的根拠なしに危険を煽っていることになる。これでは風評被害の国際版である。
横道にそれるが、韓国のマスコミは福島原発の処理水を「汚染水」と呼んでいる。では韓国の原発が排出する水は何と呼ぶのかという疑問を持ち、韓国の新聞(日本語版)を注意して読んでみたが、見つからなかった。もしも彼らが韓国の原発が排出する水を「処理水」と呼んでいるなら<自分がするのはロマンスだが、他人がするのは不倫だ>と言うのと同じである(笑)。
本論に戻る。水処理でどうしても残るのはトリチュームであり、その量(ベクレル)が争点となるが、福島原発から出た処理水のトリチューム量は、韓国の月城原発や古里原発から排出される量よりも少ないことが立証されている。
この二つの韓国の原発施設は、ともに東南部の海岸にある。その位置と海流の関係を考えれば、中國や北朝鮮、ロシアが韓国に苦情を言うなら理解できる。しかし、韓国には黙っていて、日本の東側で排出される処理水に反対を唱えるのは理屈に合わない。
では、韓国政府は処理水の危険性に関し、どのような情報を得ているのか。韓国政府の作業部会は昨年10月、「福島の処理水が海洋に放出されても、海流に乗って希釈・拡散するので、韓国への影響はあまりない」という報告書を提出した(産経新聞4月17日)。
それでいて韓国政府は日本に抗議したのだから、自分の抗議が理不尽であることを承知していたわけだ。韓国政府の抗議は韓国国民に対するメッセージだったのではないのか。
この報告書の内容は、韓国でも一部のマスコミによって報じられた。その時、「国民の力」党のチュ・ホヨン権限代行は「日本なんかに口実を与えてはならない」「原発汚染水の放出は、どのような理由でも妥協の余地はない」と発言した(シンシアリーのブログより)。
換言すると、韓国は情報を隠蔽してでも、風評被害の国際版を煽りたいということになる。韓国にとっては、処理水問題は反日運動の一環であって、慰安婦問題や徴用工問題と同列の事案なのである。このような風評被害の国際版には解決策がない。日本としては根気よく、韓国等の敵性国家の発言に一つひとつ反論していくほかない。
むしろ、処理水問題は国内の風評被害の方が深刻である。そこで提案だが、処理水の放出は福島だけで行わず、日本全国で実施してはどうか。具体的には、処理水をタンカーに積み込んで日本の領海全域に散布する。費用との兼ね合いもあり、全国的散布は処理水全量である必要はなく、ごく一部で十分である。
このプロジェクトの狙いは、福島の苦しみは日本全体で分かち合うことである。この案が実行されれば、「福島産の魚は気味が悪いから食べない」ということにはならないだろう。それとも、「それなら輸入した魚しか食べない」ということになるのか(笑)。
突拍子もない案ではあるが、これよりベターな解決策はないように思えるのだ。