前々回(4月20日)の「湯河原町の失敗」において、湯河原町がワクチン接種の予約可能人数950人に対して、65歳以上の町民(1万人)全員を対象にして募集した結果、電話が通じない状況(以下、「回線のパンク」)が発生したことを論じた。
町内新聞の「日刊相豆」によれば、<今回の募集で、初日に720人、二日目に230人の受付を行い、今回の予約は完了した。そして、電話に要した時間は1人5分から10分だった>。
この記事を読んで感じた疑問は<電話予約は日取りを決めるだけだから、1人2~3分もあれば十分のはず。なぜ5~10分を要したのか>である。
その原因は、配布された「ワクチン接種のご案内」に記載されている<診察の結果次第では、接種できない場合がある>という文言だと想像する。すなわち、<予約できた人には予約券と予診票が送られてきて、その予診票に必要事項を記入して接種時に提出する>と書かれているが、どのような場合に接種を受けられないのかの説明がない。
運よく電話がつながった人は、多分「どのような場合に接種を断られるのか」と質問しただろう。町当局は、「それは当日、記入された予診票を見て医師が判断することになります」と答えたと思う。しかし、接種応募者はその解答に満足せず、電話での対応に予想外の時間がかかったのではないか。
町当局は「接種できない場合」をある程度具体的に説明するとともに、これに関する質問は別の電話窓口を設定すべきだった。もちろん募集窓口の混雑を避けるためである。
「回線のパンク」は他の自治体でもおきているようだ。読売新聞4月23日の社説は、「接種の混乱回避に工夫を急げ」という見出しで次のように論じている(赤字)。
・・・千葉県市川市では・・・回線がパンクした。他の自治体でも同様のトラブルが起きている。どのような手続きで予約を取るのか。枠が埋まっている場合は、いつまで待てばいいのか。情報が不確かなままでは高齢者の不安や、政府、自治体への不信感が募るばかりだ。・・・
ところで、今回の募集で湯河原町当局は電話受付の係員を何人配置したのか。「日刊相豆」によれば、<初日は720人の予約を行った><1人5~10分の時間を要した>とあることから計算して、10~12人を配置したと推定する(計算基礎は省略)。
次回はこの人数を増やす必要があるかも知れないが、その前に考慮すべきことがある。それは、ワクチンを募集人数分だけ用意したとしても、そして電話受付係員を前回よりも増やしたとしても、「回線のパンク」は起きる可能性があること。その理由は、電話コールが時間的に偏る可能性があるためである。
「回線のパンク」を防止するには、次のような方策が必要である。
- 接種の総体的スケジュールを発表して、接種希望者は最終的には全員が接種を受けられることを衆知せしめること。
- 入手したワクチンの数量に見合った接種対象者を設定すること。
- 応募者を細分化して、電話コールそのものを分散させる方策を講じること。細分化の方法としては、年齢別以外にも、地域別にすることも考えられる。
きりがないからこの辺でやめておくが、ともかく次回の募集には万全を期してもらいたい。
さて、不思議なのは米国では短期間に1億人もの人たちが接種を受けたこと。米国では、日本のようにキチンとしたスケジュールを組み立てず、かなり大雑把な要領で実施したのではないだろうか。そうでないと短期間における大量の接種は難しい。英国も同様である。
米国や英国始め、諸外国ではスピードを最優先に実施したと思う。日本はこれら諸国の実施要領を参考にすべきである。