韓国政府のタスクフォースは最近「日本の福島原発の処理水の海洋放出は問題なし」という報告書を発表した。これに続いて、韓国の原子力委員会も「汚染水を浄化する日本の多核種除去設備(ALPS)の性能に問題はない。漠然とした不安感を持つ必要はない」と発表した。
それでも韓国が日本非難をやめないのはさておき、爺は「韓国当局は、なぜ韓国の原発が放出する処理水と福島原発が放出する処理水を比較しないのか」という疑問を抱いた。その答えは多分、韓国の原発処理水の方が福島原発よりもトリチューム含有量が多いからだろう。
次に生じる疑問は「日本では、なぜ福島原発の処理水と他の原発の処理水を比較しないのか」である。
現在稼働中の原発は西日本に9基あるが、そこから排出される処理水は福島で貯蔵されている処理水と同じものであるはずだ。そして、日本人は過去60年以上に亘り、原発処理水が放出されている海域で獲れる水産物をなんの疑いもなく食べてきた。そして、健康被害は報告されていない。
この事実を明らかにすれば、福島原発の処理水が福島で放出されても、消費者が福島産の水産物を敬遠することはないはずである。
ことによると、漁業関係者は福島以外の原発からも同じ処理水が放出されていることが報じられると、その原発周辺の海域で獲れる魚介類に風評被害が発生すると懸念しているのではないか。
その懸念があるので、漁業関係者は政府とマスコミに、福島以外の原発について論じないように依頼しているのではないか。もしそうであるなら、福島産魚介類への風評被害の犯人は政府とマスコミということになる。韓国を笑っている場合ではないのである。
ここで政府とマスコミがやるべきことは、日本人は福島原発と同じ処理水が排出される海域で獲れる魚介類を、60年以上に亘り食べてきたことを衆知させることである。たとえ消費者がこの事実を知っても、魚介類の需要が減ることはないだろう。
こうした観点から、某新聞に下記の文面の投書を送った(赤字)。
原発処理水の風評被害を払拭せよ
原発処理水を2年後以降に海洋放出するという政府の方針に対して、漁業関係者が風評被害の懸念を表明している。その懸念とは、消費者が「福島産の魚介類はなんとなく気味が悪い」として嫌がることである。
ところが、稼働中の他の原発からも、数十年に亘って処理水は放出されており、その海域で獲れる魚介類に健康被害も風評被害も発生していない。政府はこの事実を国民に周知せしめるべきだ。
また、福島原発の処理水の海洋放出を福島以外でも実施してはどうか。処理水をタンカーに積み込んで、日本列島周辺に万遍なく散布することも一案である。
狙いは、福島の苦しみを日本全体で共有することである。政府は風評被害の損失を補償することを検討しているが、風評被害そのものを払拭することも必要である。
残念ながら、この投書はボツになった。風評被害の責任が政府だけにあるように表現する方が採用になる可能性が高いと思い、投書ではあえてマスコミをはずして政府だけを批判したのだが、同じことだった(笑)。
ともあれ、福島原発の処理水に関わる風評被害は不可解である。