頑固爺の言いたい放題

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町議会議員が町を相手に訴訟!!(2)

2021-04-17 12:51:07 | メモ帳
今回は4月10日の投稿「町議会議員が町を相手に訴訟!!」のその後の展開がテーマである。

4月14日、横浜地方裁判所において、土屋由希子議員の第一回口頭弁論が行われた。その発言の一部を引用する(赤字)。

・・・今回裁判を決心したのは、これは私だけの問題ではない、ましてや湯河原町だけの問題ではない、地方議会がこの様に民主主義からかけ離れたふるまいをする事で、日本という社会全体がダメになってしまうと思ったからです。
市民の代表として、悪い事は悪い、正しい事は正しいと発言する事ができない議会であれば、それは議会として機能していません。町民に対する人権侵害を指摘したら懲罰を受けるなど、こんなことが許されてしまったら今後湯河原町の議員は何も発言できなくなってしまいます。(以下省略)

原告の土屋議員はこの裁判に対する基本理念と民主主義の根幹を述べているわけで、その趣旨には誰しも共感するだろう。裁判官たちの心証もよかったはずだ。今後、この裁判が同議員に有利に展開する地合いが形成された印象を受ける。

さて、土屋議員は自身に科せられた懲罰の撤回を求めて提訴したのだが、裁判の争点は二つある。(4月10日の文面と一部重複する)

(1)秘密の漏洩
湯河原町議会の広報誌『議会ゆがわら』(令和2年11月)に「なぜ懲罰か」という見出しで、次の記述がある(赤字)。

9月定例会における一般質問の場において土屋由希子議員が「秘密会の議事を他に漏らしてはいけない」とする議会内部のルールを破ってしまったため、・・・懲罰が科せられることとなりました

土屋議員の秘密漏洩とは、同議員が定例会の席上で<滞納者リストに回収されないものがあることは問題だ>と述べたこと指す。つまり、この発言は秘密会の席で提起されるべきであるにもかかわらず、定例会の席で提起されたことが秘密の漏洩に当たる、というわけだ。

ところが、2015年7月17日の議事録に、町役場の徴税対策課長の税金滞納者リストに関する発言として次のように記されている(赤字)。

本日お配りしました、こちらの資料につきましては、冒頭、副委員長の方から、各自で保管ということでお願いいたしましたが、ご自宅に持って帰ることや保管が難しい方につきましては、そのまま置いておいていただければ、当課の方で保管いたします。

この発言は<議員に渡した滞納者リストには、返還されるものとされないものがある>ことを明確に示しており、議事録は誰でも閲覧できるから、土屋議員の発言は秘密の漏洩には相当しないことになる。

爺の想像だが、秘密会の議事を議事録に残したことは、議会&/or事務方のエラーだったのではないか。換言すれば、議会と町役場当局には秘密管理に対する意識が希薄だったのであり、土屋議員の秘密漏洩を非難する資格はない。

この裁判は原告の土屋議員が一方的に有利であるように思えるが、湯河原町がこの裁判を受けて立ったからには、それなりに勝算があってのことだろう。被告(湯河原町)の弁護士がどういう弁論を展開するのか、次の公判が楽しみである。

(2)何がプライバシー侵害になるか
この裁判では、何がプライバシー侵害に相当するかは、副次的マターである。しかし、プライバシーの開示がどこまで許されるかは、この判決に影響を及ぼす。ついては、この問題の論点を整理しておきたい。

論点(A)
被告は<税金滞納者のリストを議員が保管することは、プライバシーの侵害には当たらない>という立場を取っている。つまり、議員たちがそのリストを悪用することはないし、そのリストを第三者に見せることもないという信頼のもとに、町役場は議員がリストを保管することを認めているのである。

論点(B)
徴税は議員の役割ではないにせよ、滞納の状況は把握しておくべきである。しかし、それならば議員には名前と住所を黒塗りにしたリストを見せれば十分のはずである(実際に、最近このように変更された)

裁判所は(A)と(B)のどちらかを選ぶのか。その選択はプライバシー侵害に関する普遍的基準を示すことになる。

ということで、この裁判がどういう展開になるか、このブログで今後も引き続き注視していくつもりである。