韓国の文在寅大統領が五輪を機会に訪日するかどうかを考えてみたい。
7月8日の読売新聞の記事を引用する。(赤字)
文氏訪日、成果見込み薄
韓国大統領府、首脳会談巡り牽制
【ソウル=豊浦潤一】韓国大統領政府関係者は7日、今月23日の五輪開会式に合わせた文在寅大統領の訪日について、韓国報道陣に「日韓首脳会談とその成果が予想されるなら、訪日を検討できる」と述べた。一定の成果を見込めることを条件に訪日するとの考えを示したものだ。・・・韓国政府としては、訪日しても短時間の面談で終わる事態にならぬよう日本を牽制する狙いがあると見られる。・・・このため、日本側は、韓国側が是正策を提示する見通しがない状況下での首脳会談には慎重だ。
この記事には伏線がある。
▼東京五輪の開催が確実になって以来、韓国の新聞に「日本は文大統領を招待すべきだが、まだ招待状が来ていないのは、怪しからん」といった趣旨の記事が度々掲載されていた。
▼産経新聞は7月7日「日韓首脳、初の対面会談へ」という見出しで、文大統領が五輪を機会に訪日し、菅首相と初の対面会談が行われると報じた。
▼ところが、この記事は産経の早トチリで、加藤勝信官房長官と朴洙賢(パクスヒョン)大統領府国民疎通首席秘書官は共にこの報道を否定した。
朴主席秘書官の発言は大略次の通り。(赤字)(拙劣な日本語だが、そのまま引用する)
韓日首脳会談とその成果が予想された場合、訪日問題を検討できる。・・・外交は相手国を尊重する品格が必要になる。・・・日本政府も私たちの立場をよく知っているだろう。 オリンピック開催国である日本政府がそこに返事をくれるのが正しいと思う。・・・日本は世界の秩序の指導国らしく、そんな心得で品格のある外交に臨んでほしい。
こうした経緯があって、冒頭の読売新聞の記事につながるわけである。
さて、朴首席秘書官の発言にはいくつかの問題点がある。
▲成果が見込めないなら、首脳会談は開催できないのか?
慰安婦や元徴用工などの懸案事項で、近々両国が歩み寄る見込みは薄い。だから、文氏としては、成果が得られる可能性がなくても、とにかく菅首相と面談し、韓国メディアには「残念ながら、首脳会談ではなんら成果が得られなかった。日本が誠意をみせなかったからだ」主張するつもりだったのではなかろうか。この観点で、朴首席秘書官の発言は文氏の行動を制約する結果になったと考える
▲「相手国を尊重する品格」とは?
朴首席秘書官の発言は「日本政府が文大統領を招待しないのは、品格に欠ける」という意味になるが、その一方で彼は「成果が予想された場合、訪日問題を検討できる」と言っており、この部分は日本に歩み寄りを迫っていると解せられる。
結局、「日本が歩み寄らないのは品格に欠ける行動だ」と言っているのに等しい。さらに、彼は「韓国が歩み寄ることは必要ない」と認識しているのだろうか。これではあまりにも手前勝手な言い分である。
朴首席秘書官の発言のために、日本政府が文大統領に招待状を出すことはかえって難しくなった。
しかし、招待状を出さないことで難癖つけられても困るので、「数々の懸案はさておき、五輪を機会に訪日して、われわれと親交を深めるとともに韓国選手を応援していただけませんか」とでも書いた招待状を送るかね(笑)。