76年前の日本の敗戦を契機に、アジア諸国が雪崩を打って独立し、その流れはアフリカ諸国に波及した。この有色人種国家の興隆という出来事は、世界史の大きな流れの中における画期的なことである。
かねてより、日本の敗戦をこうした観点から捉える歴史観はないものかと考えていたら、たまたま「大東亜戦争は日本が勝った」(以下、本書)を見つけた。
本書(ヘンリー・S・ストークス著、令和3年6月 ハート出版刊)のタイトルを見た時、“日本人に迎合したのではないか”と想像したが、そうではなかった。この普及版の親本は「英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄」(2013年祥伝社 英語版タイトル Fallacies in the Allied Nation`s Historical Perception as Observed by a British Journalist)。この親本は当時ベストセラーになったらしいが、爺がこれまで本書の存在を知らなかったことは汗顔の至りである。
内容について語る前に、著者の略歴を紹介する、
1938年英国生まれ、1961年オックスフォード大学卒業後、フィナンシャルタイムズ入社。1964年来日して、フィナンシャルタイムズの東京支局長就任、1978年ニューヨークタイムズ東京支局長就任。
主な著作:「英国人記者が見た世界に比類なき日本文化」(祥伝社)、「連合国戦勝史観の徹底批判」(藤井厳喜共著、自由社)、「戦争犯罪国はアメリカだった」(ハート出版)等
本書序文から引用する。(赤字)
もし日本が大東亜戦争を戦わなかったら、アジアにはいまだに欧米列強の白人が支配する世界が広がっていたかも知れない。そう考えると、大東亜戦争は「侵略戦争」であるかどうかなどいう些末な議論を超えて、もっと大きな世界文明史的な意義が見いだされよう。
つまり、白人列強による世界支配を終焉させ、人種平等の世界の実現へと舵を切らせる偉業を果たしたのが、日本が戦った大東亜戦争だったということだ。
ちなみに、著者が「太平洋戦争」でなく、「大東亜戦争」という用語を使うわけは、先の戦争の主たる舞台がアジアだったから。そして、彼は英国人の立場から、先の戦争により大英帝国が崩壊したことは日本が勝ったことを意味すると主張する。
また、米国が戦争末期に日本の大都市を空爆し、原子爆弾2発の投下で多数の非戦闘員を殺戮したことは国際法違反であり、反則で勝っても勝者とは言えない、とも主張する。
ところで、下線を施した大東亜戦争は「侵略戦争」であるかどうかというどいう些末な議論について補足したい。
この文章には、大東亜戦争は「侵略戦争」だったことをある程度は認めているようなニュアンスが感じられるが、著者は満州国創建も日中戦争も、さらには英米などを相手にした戦争も、「侵略」ではなかったことを本文の中で論理的に解明している。しかし、ここでは長くなるので割愛し、本書でもっとも印象深かった部分だけを簡単にご紹介したい。
それは、日本は人種差別撤廃を主張した最初の国だったこと。第一次世界大戦後の1919年に新たに発足する国際連盟の規約についての議論が行われた際、日本は人種差別の撤廃を規約に加えるよう提案した。出席者16名中、11名の賛同を得たが、米国のウイルソン大統領が「重要案件は全員一致であるべきだ」と主張したために、日本の提案は却下された。
【頑固爺余談】青字
先住民を虐殺して国を造り、奴隷を酷使して富を蓄積した国が、人種差別撤廃など簡単に認めるはずがなかった。それから100年、アメリカは西部劇を作ることをやめた(笑)。人種差別撤廃は人類共通の価値観となったのである。日本は人種差別撤廃を最初に叫んだ国であることを誇りに思うべきである。
さて、お気づきと思うが、ストークス説は半藤一利氏の名著「昭和史」を始めとする自虐史観と真っ向から対立する。「昭和史」を読んだ時、「日本は阿呆な悪者だった」という説明が繰り返し述べられていることにげんなりした記憶があるが、本書を読むと気分が高揚し、“日本人でよかった”と感じる。
自虐史観とストークス史観のどちらが正しいかを論じても無意味であるが、歴史にはいろいろな観点があることは間違いない。
【お知らせ】
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