最近読んだ「わが体験的コリア論」(西岡力著 2021年11月、モラロジー道徳財団刊、以下本書)に興味深い記述があったので、今回はそれをテーマとしたい。なお、西岡氏(昭和31年~)は日本有数の韓国通で、慰安婦問題などの韓日間の諸問題に通暁し、また拉致被害者救済に尽力している人物である。
さて、爺はこれまで<韓国軍がベトナムに残してきたライダイハンは韓国の恥部であり、これを非難されると韓国はメンツ丸潰れになる>と思っていたが、問題はそんな単純なことではないようだ。以下、本書から韓国軍のベトナムにおける蛮行に関する記述を要約する。(青字)
慰安婦支援団体である挺対協*は、韓国軍のベトナム戦争での婦女子虐殺やレイプについて、韓国政府の謝罪と補償を求める活動を展開している。
また、挺対協は日本軍の「慰安婦問題」を糾弾する一方で、韓国軍のベトナム派兵は米国によって強制されたものであるとして米国を非難し、その延長線上でベトナム戦争における韓国軍の虐殺行為を糾弾している。
(韓国軍のベトナム派兵は、挺対協が主張するような米国に強制されたものではなく、米国との相互防衛条約に基づく集団的自衛権の行使にすぎない―西岡力)
その反面、挺対協は朝鮮戦争における北朝鮮軍の虐殺行為や北朝鮮国内で行われている人権侵害などは全く取り上げない。
すなわち、挺対協は反米、反日、反韓であり、北朝鮮の意を汲んで活動していると認識すべきである。
(注)韓国の元慰安婦支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)は「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)と名称を変えたが、本書は「挺対協」の名称を使用しているので、このブログでも「挺対協」とする。
英国がライダイハン問題で韓国を非難しその像を建立したことは、挺対協が世界各地で慰安婦像を建てていることに対応するものであり、日本人にとっては痛快事である。
ところが、挺対協は韓国軍の蛮行を非難する側であるという西岡氏の説明によれば、ライダイハン像の建立は挺対協にとって痛くも痒くもないことになる。一方、韓国政府はベトナムにおける韓国軍の蛮行はベトナム共産軍の仕業であると反論し、謝罪していない。つまり、冒頭に述べた爺の認識は全くの誤りだということになる。
こうして考えると、挺対協の実態は次のようであることがわかる。
すなわち、基本的に、挺対協は反米,反日、反韓、親北であり、慰安婦問題を紛糾させることが、反日運動の戦略の一つである。換言すると、慰安婦問題が解決してしまうと、挺対協は反日の武器を一つ失うことになるから、それはなんとしてでも阻止したい。
この観点に立てば、文在寅大統領が2015年の慰安婦合意を反古にしたのは、挺対協の方針に沿ったものであることがわかる。そして、韓国大統領が親北であるかぎり、慰安婦問題が解決されることはない、という結論になるのである。