毎週水曜日は、包丁の会でナイフづくり
だいたい7時集合だが、とある日は早めに着いてしまった。
神棚に一礼 『ドジな生徒たちが、怪我をしませんように~まんまいちゃん、アッ』
岡秀名人は生徒が来るまでと、本業の仕事中だった。
それは、『鋸の目立て作業』
最近の鋸は、ホームセンターで見かけるように、ほとんどが”替刃鋸”になっている。 伝統的な大工鋸の両刃鋸や山仕事で使う従来タイプの鋸は、風前のともしびといったところであり、目立てを依頼する客・鋸自体も消滅に近いのではないだろうか
ちなみに替刃鋸は「衝撃焼き入れ」とか書いてあるものもある。この焼き入れ処理をすると、表面硬度が目立てヤスリの硬度を上回る硬さになり目立てが効かないことが、暗黙の了解とされる~そして新品と交換という筋書きであろう~
まあ、目立てをしてくれる人は居なくなるし、消費者も使い捨てでもメンテの要らない方が便利という時代の流れだろう。
さて、思わず目撃した貴重な『鋸の目立て作業』だから、紹介しようと思ってブログに書いている。
鍛造をする部屋には、平板から成形した作りかけの鋸が数枚~刃のくり抜き作業が終わったのが10数枚とか並んでいた。
これらも、焼き入れ・焼きなまし・研ぎ・目立て工程が待っているのだろうが、そのを見学する機会は無い~でも、今日はたまたま”目立て作業”を見ることが出来た。『ラッキー』という感じで、失礼ながら、周りでカシャカシャ撮りまくり
写真のように、目立て作業はもちろん座業で、名人のシャッ・シャッと素早くリズミカルに動かすヤスリはうまく写らない。
鋸の目立てには、このような「鋸万力」(「挟み板」)を使う。ちなみに僕のオヤジは半農半大工だったので、これを自作して土間や縁側で座業で目立てをしていたのを良く見ていた。
鋸万力は二枚の板の中心部を複数のボルトで留め、ハサミの原理で片方に木のくさびを入れると、反対側に挟んだ鋸はきつく固定される仕組み。素材はケヤキが良いということだ。
名人は2代目なので、オヤジさんの代から使い込んだ鋸万力で鋸を挟んで、木箱の上に載せ、胡坐を組んだ左足で固定して、ヤスリ先端を左手で持ち、右手は取っ手を持ち、シャッ・シャッと素早くリズミカルに動かす。
周りには、表面がピカピカに磨かれた「金床(カナドコ)」が置いてある。鋸を使った人は分かるが、使っていると刃が引っ掛かり押す力は余って、鋸がクネッとU字型に曲がったり、切り落とされる木材に挟まって、動かなくなりコネコネと捏ねて引き抜こうとしたり、使用中の摩擦熱も発生します。この様な無理により鋸には歪みがだんだん出てきます。
鋸の目立て作業の前には、先ずはこの歪み補正からされる。鋸をこの金床に密着させて置いて、ピッケルの様で、尖ってはいない「歪み鎚」で、歪み矯正のポイント部分をコンコンと軽く叩いていく。
”狂い取り”とも言われるようです。頭の大きい鎚が「歪み鎚」で、下になっている先端の尖った鎚が「アサリ鎚」の両頭槌になっています。
次に、鋸の刃を良く見ると、横引き(柾目に垂直方向)鋸には、アサリが施されている(アサリ貝ではないが、漁る・漁りだす~掻きだすという意味で、語源の共通はあると思う:私見) いわゆる、”アサリ出し”は、鋸刃を左右に若干振り分ける事によって、うまく鋸屑を掻きだすとともに、鋸の厚さよりも若干広く削るため、鋸と切断面の材との摩擦を少なくする働きがある。
板材の縦引きと横引きでは、材の繊維との抵抗が、横引き(柾目を垂直に断ち切る方向)が強いため、アサリが着いている鋸を使うことになる。
さて、「歪み鎚」は、鋸の刃をこの金床の角の曲面(アール)を使って、先端の尖った側の「アサリ鎚」で、1刃おきに繊細な感覚とリズムで打ち振り分けるつことによって行う。
刃を研ぐのは”ヤスリ”で目立て用の「両刃ヤスリ」で、鋸の種類、鋸目の大きさに合わせて、何種類も使われていた。
バケツの中には使い捨てられた何十本ものヤスリが捨てられていた。
目立て作業(作業の全工程の総称だろうが)の前には、鋸目の高さが均一になるように、刃先をヤスリで水平にさっと削る(撫でる様に)「ひっこき」という作業があるが、この時には既に、目立て工程だった。
この時の鋸は、刃の5つおきに深いU字型の窪みがある鋸(マド鋸)~改良刃鋸と呼ばれる鋸で、我われ生徒は最初の頃、珍しさにその意味・働きを質問していた(笑)
名人は面々が時間差で質問するので、説明のプレートを作ってて『これば、読め!』ってな感じで説明を省略していた(笑)
僕も省略します(説明のプレート写真をどうぞ)
省略のついでに、目立て作業の言葉での説明は、素人には難しいのでホームページを探していたら、非常に分かりやすいサイトを見つけましたので、こちらを見てもらうのが一番いい~と省略することにしました(笑)
もっと早く見つければ良かった!動画もあり、これは分かりやすい目立てのホームページです。
http://www16.ocn.ne.jp/~nakaya2/metate.htm
他にもいろいろありました。
http://www.geocities.jp/kinomemocho/hamono_noko_metate.html
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