2018年9月28日
僕たちの生活は、陽と陰、動脈と静脈、表と裏の関係に囲まれています。
スーパーでパックに入った鮮やかな肉を手に取るのは誰でも好きでしょう。
この様に普段は当たり前に、表の綺麗な世界・美味しく清潔な世界を享受しているのですが、実は裏方的に3K的な業があるから清潔で健康な環境が成り立っています。
今回は、長崎県川棚町にあるハラサンギョウ(産業廃棄物・一般廃棄物消却処理場・化成製造事業)の視察に来ました。
綺麗な事務所の横には、動物の霊を祀った神社がありました。
事務棟、2階の会議室に通され、説明を受けDVD視聴をしました。
ハラサンギョウの受け入れる廃棄物の大部分は、下水処理場の汚泥です。
他に、牛・豚・鶏など家畜が食用と加工される時に出る、不可食残渣と言われる、内蔵・血液・脂肪・皮・骨などです。
ハラサンギョウは、受け入れるこれら廃棄物の約99.9975%を飼料・肥料・建設資材、あるいは油は自社工場の稼働エネルギーとして再利用をしている優秀な工場で、循環型リサイクルに取り組んでいます。
化成工場部門では、飼料・肥料・ペットフードの原料を製造し、関連メーカーに出荷しています。
質疑応答をした後、いよいよ工場視察です。
タンパク質の異臭が立ちこめるため、不織布の防除衣を羽織り、ヘルメットかぶります。
工場の入り口です。死んだ家畜の持ち込みの場合、脳や骨髄を採取して、BSE検査(クロイツフェルトヤコブ病:狂牛病)が行われます。
取扱量の一番多いと聞いた、下水処理場の汚泥の搬入と遭遇しました。
生活廃水を出さない人は居ないから(洗濯もウンコをしない人)、誰一人自分には関係ないとは言えません。
汚泥ピットにダンプが持ち込みます。
投入ホッパーで、流動床敷き焼却炉へ投入され、800℃以上で焼却されます。
焼却灰はさらに1,400℃で液状に溶かし冷却固形化、最終的には石状の溶融スラグとして、アスファルトの砂利や建設資材として利用されています。
さて、動物の分類を初めて知らされました。
事故死や病死での家畜や、獣害駆除で殺されたイノシシ等の個体状態は一般廃棄物として扱われます。
一方、屠畜場(トチクジョウ)で解体された、不可食の内蔵等。あるいはイノシシを解体して出た不可食の内蔵等の既に個体の形を無くしたモノは、産業廃棄物として扱われます。※豚も牛も食べられるのは体重の半分以下。
ちょっと悲惨な映像ですが、畜産業で無病や事故死、経済動物的からの老廃処分は避けられません。
知りたくも、見たくも無い部分ですが、こうやってどこか(業者)が処分することで清潔な生活環境が維持されているのです。
業界用語:カンカンと呼ばれる鉄製のボックスに、牛や豚が積まれています。
イノシシのウリボウです。
実は今回の視察目的は、害獣駆除により殺したシカ・イノシシ等の適正な処理方法の検討のためでした。
年間何万頭も殺処分されていますが、ジビエ料理等食べられる個体は18%くらいで、個体を解体すると、さらに半分は不可食部ですので、駆除した害獣の91%は埋設、焼却処分されていることになります。
カンカンは、ローダーで運ばれ、原料ホッパーに投入され、細断されます。
ミンチ状に砕かれたモノは、ラメラポンプで処理工程に運ばれます。
これはクッカーと呼ばれるモノで、150℃の蒸気で1~2時間加熱し、水分が飛ばされます。
その蒸気は、クーリングタワーで水になり、浄化槽で処理されます。
次に、パーコレーターで、固形分と油分に分離されます。
固形分は圧搾機でさらに油分が搾られ、固形分は粉砕器で粉状にし、振動篩いでタンパクミール製品となります。
油(油脂・骨油)は、飼料の原料や、工場の燃焼油に使用されています。
立ち込める匂いと操業音がうるさい中、一生懸命聞き取りました。
営業的に可食部分を取り除いた、バラバラの鶏や豚等の産業廃棄物の処理工場です。
鶏の足や皮が見えます。
内臓、皮、頭です。
処理の流れはほぼ同じです。
固形分が粉砕され、粉状になったモノが貯まる貯蔵瓶です。
振動篩いにかけられた後、フレコンバックに詰められ、関連工場に出荷されます。
初めての工場視察は、いろいろ勉強することが多く、非常に参考になりました。
昼食は、肉類はちょっと食べる意欲が落ちましたが、おおむら夢ファーム・シュシュ でバイキングで満腹。
ここは、大村海軍カレーが人気商品だそうです。
午後は諫早市へ移動。
貝津町にある、長崎県農林技術開発センターで、《鳥獣被害対策の捕獲・利活用を支援する新技術の確立》の視察です。
研究員のお二人から、長崎県の取り組みを聴きました。
・公共の研究機関で、イノシシ研究は10人位しかいない。
・長崎県は、年間3.5万頭のイノシシを捕獲しており、全国1位。
・狩猟免許所有者はH27年度で、網ワナ=2,571人 銃=726人 合計3,297人
・しかし、440人はなんの実績もない、タンス免許状態。
・捕獲隊は500チームあるが、捕獲のテクニックや質を高める、人の育成が課題。
・2012年度に狩猟免許所有者を対象に、捕獲従事作業で負担に感じている作業のアンケートを行った。
・有効回答 1,311件 Q:捕獲従事作業で負担に感じていることのトップは、止め刺し(技術)、止め刺し(精神的)、いわゆるトドメを刺す合わせて51% だった。
・そこでナイフを使わない、『電気止め刺し器の実証開発』に取り組んだ。
・バイクのバッテリーを使い、イノシシの心臓付近を狙い刺すと、19秒で失神、71秒で死亡させることが出来た。
・現在、スマート捕獲とスマートジビエ技術の確立に取り組んでいる。
・スマート捕獲は、運搬車両へのウィンチ装着、アシストスーツによる搬出負担軽減。
・スマートジビエ技術の確立は、狩猟後の感染症簡易検査キット。
・ICTを使った、個体情報のトレーサビリティ(捕獲場所・体長体重・解体精肉情報・消費者反応情報)を一貫して行える、ジビエツールのソフト開発に取り組んでいる。
以上です。
いかがだったでしょうか?
見たくも、知りたくもないところですが、知らないところで恩恵にあずかっている立場と、その様な業界・会社の頑張りに感謝しなければならないと思いました。
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