この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

一気読みはしたけれど、、、貴志祐介著『悪の教典』。

2012-05-31 23:13:48 | 読書
 図書館から借りた『悪の教典』をたった今、読み終わりました。
 読み始める前は、今の自分にこんな分厚い本を(上下巻で800p超!)読み通すことが出来るんだろうか、と思ったのですが、杞憂でした。
 一気読みできました。

 一気読みしたということは、それほど面白かったのか、と思われるかもしれませんが、正直そこらへんは微妙、でしたね。

 貴志祐介の名を世に知らしめたのは何といっても『黒い家』ですよね。
 あの作品は、主人公がサイコパス(わかりやすく言えばキチガイ)と対決するお話でした。
 それに対し、本作は主人公がキチガイそのものです。
 表の顔は有能な人気教師なのだけれど、裏の顔は善悪の観念がない、人を殺すことに全く罪の意識を覚えない殺人鬼という設定。
 そのキチガイのの主人公である蓮見がやがて担当するクラスの教え子を皆殺しにするべく行動を開始する…。

 善悪の観念がない、という設定自体は悪くないと思います。人を殺すことに罪の意識を覚えないというのもね。
 しかし、そうだとしても、読んだ人のほとんどは、そこで人は殺さないだろうって思ったんじゃないですかね。
 主人公の蓮見はしばしば、これしか選択肢がないとばかりに人を殺すんですが、どう考えてもその判断が間違ってる。笑。
 蓮見は尋常じゃなく頭が良いという設定なんですが、読んでいると、コイツ、頭が悪いだろ、と思えてくる。
 そういうふうに思えてくること自体、作者である貴志祐介のストーリーテリングが下手だった、と言わざるを得ません。

 作者の下手さは途中の展開だけじゃないんですよ。
 蓮見の目論見は最終的には失敗するんですが、その幕の引き方がどうにもカタルシスを得られるものでなくて、、、読んだ人のほとんどは、何じゃそりゃ、と思ったんじゃないでしょうか。

 どんな作家であれ、凡作、駄作を発表することはあると思います。
 それはまぁ仕方のないことではある。
 でもそんな作品をその年のミステリーの一位に選んだこのミスの罪は重いんじゃないかな~。
 前々から信用できんな、と思っていた宝島社のこのミスですが、来年、、、というか今年のこのミスはさらに信用しないようにしようと思います。
 まぁ買うとは思うけどね。
コメント (9)
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