団塊の世代の世間話

60年を生きてきた思いを綴った「ゼロマイナス1 団塊の世代の世間話」を上梓し、その延長でブログを発信。

さらば友よ

2014-05-22 14:58:02 | Weblog
 前回の投稿からかなり経ってしまったが、仕事が重なったことと30年来の友人が急死して、なかなかブログを書く気がなくなってしまった。
 友人といっても、同業者で仕事仲間だった。4月30日に突然倒れ、そのまま帰らぬ人になった。つい最近になって、その妹さんから電話があって、彼の使っていたパソコンの中に、私の名前が頻繁に出てくるので、お知らせしておいたほうがいいと思い、連絡をしてくれた。
 亡くなった彼は、同業者といっても仕事がうまくいかず、アルバイトで糊口をしのいでいた。それでも、なかなかかつての仕事が忘れられず、記者会見やイベントなど無理して参加していた。アルバイトは夜勤で、それで大して睡眠もせずに出てくるのだから、心臓には負担になったろうと思う。
 突然倒れた、という表現を妹さんはいっていたが、それなら心筋梗塞か脳出血が原因だろうか。酒好きで、心臓が悪いのに煙草も盛大に喫っていた。あまり自分の身体を労るタイプではなかったとしても、56歳の早過ぎる死だった。
 彼の一生を思うと、感慨深いものがある。大学は理系のいい大学を出ていた。私とは35歳の頃から、ちらほらと記者会見などで顔を見るようになっていた。
 なんとなく彼のほうから近づいてきて、一緒に仕事の帰りなどに酒を飲むようになった。暗転したのは、婚約解消でホテルの結婚式をキャンセルして、過大な借金を抱えてしまった。
 たぶん彼が35歳ぐらいの頃だろう。その前後から、彼の勤務していた会社が左前になっていった。給料遅配がはじまり、200万ぐらい溜まった時に、経営者がそれとバーターで、会社を継いでくれないか、という提案があった。
 ここで辞めて新しい仕事に進めば人生は変わっていたかもしれない。しかし、彼は飛びついた。もともとすでに命脈が尽きていた会社で、彼が悪あがきしても好転しなかった。最後に紙のメディアを諦め、ネットで再起を図った。だが、広告が取れるわけでなく、張り合いがなくなり、それも自然消滅という形になった。
 その間にも借金は膨らみ、50歳近くなるまで、その返済に苦しんでいた。最近、ようやく金の苦労からは解放されたようではあるが、結局アルバイトで収入を得、酒で人生を紛らわすような日々を送っていた。
 私がよく行く新橋で、アルバイトをしていた女の子がママになり、そこで愉しい酒を飲んだのが最期になってしまった。声は良く、歌は上手かった。
 ざっと見れば、そういう人生だった。幸せの時代もあったのだろうが、苦労も多かったろうと思う。さらば友よ、である。供養に、森進一の「さらば友よ」でも、その店で歌ってみようと思っている。

 エッセー「団塊SONGS」を配信中。原則的に日曜日にhttp://ameblo.jp/shiratorimn/にアップロードしています。エッセーで書いた歌は「団塊SONGS」(検索)で聴くことができます。カメラと写真の情報は「Web写真人」で。URLはhttp://shashinjin.digiweb.jp

ロング・グッドバイ

2014-05-04 09:12:57 | Weblog
 いまNHKの土曜ドラマで『ロング・グッドバイ』を放送している。レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説の傑作が原作だ。
 主人公のフィリップ・マーロウに言わせる有名な科白がある。「強くなければ生きられない、やさしくなければ生きている資格はない」というもので、若い頃は気障な科白だなあ、と思っていた。
 ところが最近になって、よくよくこの言葉を考えてみると、人生のほぼすべてを言い尽くしているように思えてきた。
 強くなければ生きられない、というのは、精神的にも物質的にも自立することを意味している。自立しなければ人間は強くなれない。なにかに頼っていたり、依存していたのでは、一人前とはいえない。
 教育を受けるのは、精神的に自立するためだ。その教育や知識によって、物質的にも自立することができる。ただし、それらはすべて自分のためだ。結果として、自立することが、家族や周りの人々に利することはあるが、基本的には自分にかえってくることを意味している。
 ところが、やさしくなければ生きている資格はない、というのは、愛を意味している。人との関わりの中で、人への思いやり、他者へのやさしさがなければ、その人間が存在している価値はないだろう。
 人に対してなにをするのかは、さまざまなケースがある。結局、自分の存在がどう人と関わることができて、その人に自分のすることが、どういう形で影響を与えるのか、というシーンの中で、もっとも大切なことは、自分がいることによって、なんらかのプラス効果があることであろう。
 その人がいることで、マイナス効果があるとしたら、それは人に迷惑をかけることや、いじめやパワハラなどになるわけだが、プラス効果があるというのは、結局、他者へのやさしさということにまとめられるのではないか。
 人間というのは、究極そういう存在なのだろう、と思う。大金を稼いで、自分のリッチな生活に金を遣ったとしても、自らの強さを誇示するだけだし、自己満足に終わる。
 人とどう関わるかによって、その人もまた止揚できるのであろう。その関わりのキーポイントが、やさしさであるわけだ。
 チャンドラーがどうしてこの科白を言わしめたのかは分からないが、端的に人生そのものを語っている。
 NHKのドラマは裏番組に2時間サスペンスがあって、ハードディスクに溜め込んでいる。5話完結だから、シリーズが終わったあとで、ゆっくりと楽しむつもりだ。こういうのは、あまり人生に関係はないなあ、かな。

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