創作小説屋

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月の女王-26

2014年09月17日 21時00分00秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
本当に、今回は要約で!
でもあのシーンだけはちゃんと書く!

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 妙子に司の行動を謝られる。
 香は妙子の心を読んでしまう。妙子は司に好意を抱いている・・・。
 妙子が司に認められるために自分を利用していることは分かった。でもそれと同時に自分との友情も大切にしたいと思っていることも分かってしまった。
 複雑な気持ちで妙子と向かい合う香。

 妙子が香の衣装やスタイリストの手配のために一時部屋から出て行った隙に、ベランダ側の窓がコンコンと叩かれる。ここ3階って言ってたのに、と驚いて見に行くと、スラリとした綺麗な女性が隠れるように立っていた。

「今夜9時に、このベランダから飛び降りて」

 え?と聞き返す香の手を握る女性。女性の意識から、白龍の姿が写しだされる。

「月の戦士を信じて」

 それだけ言うと、女性は身軽に屋根の上へとのぼっていってしまった。


 戻ってきた妙子は、たくさんの衣装と4人の女性と一緒だった。

 女性らにされるがままに、ネイルをされ化粧をされ髪をきれいに結いあげられる。
 散々迷った衣装は、結局銀色のドレスに決まった。それにパールのネックレスとイヤリング。

 妙子は満足げに肯いた。

「香ちゃん、綺麗よ。司様もきっとお気に召すわ」
「妙子さん・・・・・・」

 なんで?妙子さんはあの人のことが好きなんでしょ?

 喉元まで出かかった言葉を飲み込む。そんなことを言ってはキョウコの時の二の舞だ。

 そう即座に考えて、思い知った。
 自分は妙子という友達を無くしたくない、と今でも思っている。
 こんな状況でありながらも、まだ。

「・・・・・・こんな高いヒールの靴、はじめて履いたよ」

 言うと、妙子はふふ、と笑って、

「香ちゃん、膝が曲がっちゃってるよ。腰と膝に力入れてちゃんと立って」
「・・・・・・・・・」

 言われた通りに立つと、長身の妙子と目線がバッチリと合った。

「妙子さん・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

 ふっと妙子が視線をそらす。今日何度目かの行動だ。

(ごめんね、香ちゃん・・・・・・)

 妙子の心の声が聞こえてくる。もう妙子には何も言えなかった。


 夜7時になって夕食が運ばれてきた。食欲はなかったが、妙子に促されて少し食べる。

 あの女性の言っていた夜9時までもう少し・・・
 時間が過ぎるのがいつもよりも長く感じる。
 香と妙子は言葉数少なに食後のコーヒーを飲む。

 9時まであと10分、というところでドアがノックされ、昼間と同じようにリンクス=ホウジョウを従えた司がズカズカと入ってきた。

「おお。月の姫、という感じに仕上がったな」

 無遠慮な視線を香に投げかけてくる。

(妙子さんったらこんな男のどこがいいのよ・・・・・・)

 ムッとして睨みつけたが、司は気づきもしないようにリンクスと妙子に向かってサッと手を振った。

「もういいぞ、お前ら」
「は・・・・・・」

 おごそかに頭を下げ、リンクスと妙子が部屋を出て行く。
 妙子の瞳は香に対する謝罪と、嫉妬の色に染まっていた。

 妙子の気持ちが気になって、気がつくのが遅くなったが・・・・・・。
 冷静に今の状況を考えてみて・・・・・・「まずい・・・」と今更思う。

 この男と二人きりだ。この男、何を考えている?何を・・・・・・。

「!!!!」

 司の考えを読みとり、血の気が引く。とっさに立ちあがり、窓辺に張り付く。

「嫌・・・・・・」
「・・・・・・月の姫」

 司が、近づいてくる。

「無理、無理無理無理!!絶対無理!!」

 香の怯えた様子に動じることもなく、司は笑みを浮かべている。

「『月の姫が月の王子と交わる時に新世界の扉が開く』。さあ、予言を成就させようぞ」
「ま、交わるって・・・・・・!!」

 香の顔面が蒼白する。司の思考が流れこんでくる。

(嫌・・・・・・嫌だ・・・・・・!!)

 司の想像の中に蹂躙される自分の姿が見えて吐き気がする。

(助けて・・・・・・)
 声にならない悲鳴。

(助けて・・・・・・)
 気を失いそうになった、その時・・・・・・

(香!!)
 リンッとした声。空気が浄化される。

(クリス・・・・・・?)
 はっとして香が顔を上げたその時、おもむろに部屋の電気が消えた。この部屋だけではない。外の電気も消えている。

「今夜9時に、この窓から飛び降りて」

 女性の言葉を思い出した。

 不意の暗闇に驚き「誰か電気を!」とドアに向かって叫んでいる司を背に、香は窓を開けベランダに出る。下をのぞきこむと、そこには・・・・・・

「・・・・・・クリス」

 いつもいつも一番に助けにきてくれる青い炎。
 安心で体の力が抜けそうになる。涙がこみ上げてくる。

(白龍が風の力で支えてくれる。安心して飛び降りてこい!)

 クリスの思考が伝わってくる。
 両腕をこちらに伸ばしている姿が月の光に照らされる。
 闇に乗じるためにか、全身黒い衣服に身を包み、黒い帽子をかぶって金色の髪を隠しているが、その青い炎は隠しようもない。いつも守ってくれている優しい光。
 
 ここは3階。かなりの高さだ。
 でも・・・怖くない。あなたがいてくれるなら、怖くない。

 香は高いヒールの靴を脱ぎ、ベランダの手すりによじ登った。

「月の姫!何をしている!!」

 司の声を背中に聞きながら、香は躊躇なく飛び降りた。



 一瞬の無重力状態のあと、ふっと落下速度が遅くなった。風に乗ったのだ。

「香!」

 声の主の方へ手を伸ばす。広げている腕の中に何も考えず飛び込んだ。
 
「お・・・・・・っと、うわわっ」
 クリスが支えきれず、香を抱きかかえたまま、植え込みに倒れこむ。
 それにも構わず、香はギュッとクリスの首にしがみついた。クリスもそのまま力いっぱい香を抱きしめる。

「クリス・・・・・・ッ」
 温かい、安心できる腕の中。

「こ・・・こわかった・・・・・・」
 震えが止まらない。あのままあそこにいたら自分はどうなっていただろう・・・。

「ごめんな。遅くなって。見張りが手薄になる時間が今しかなくて・・・・・・」
 耳元で聞こえてくるクリスの声が心地よい。

(もう・・・・・・離さない)

 同時に心の声も流れこんでくる。

(香・・・・・・オレの大切な香・・・・・・)

 心の声を聞かないようにバリアーを張らなくては、と思いながらも、クリスの溢れてくる愛情に満ちた感情の波に身をゆだねたくなる気持ちに負けて、そのままにしてしまう。

「立てるか?」
「うん・・・・・・でも靴、置いてきちゃった」
「じゃ、オレが連れてってやる」

(こないだはイズミに邪魔されたからな!あの野郎うるせーんだよ。イズミに見つかる前に今度こそオレが念願のお姫様抱っこしてやる!)

 だだ漏れているクリスの心の声に笑いがこみ上げてくる。
 そんな香に気がつくこともなく、クリスはよいしょっと香を横抱きにする。

「しっかりつかまっとけ。走るぞ」
「うん」

 首にまわした手に力をこめる。
 あちらこちらで喧騒が聞こえてくる。

(イズミ達、うまくやってるようだな)
 陽動作戦らしい。騒ぎを起こして香達への注意をそらしているようだ。

(それにしても・・・さっきの香は本当に月の姫そのものだったな)

 あまり聞いてもまずいかな、と思いつつ、ついついクリスの心の声に耳を傾けてしまう。

(月の光を背に銀色のドレスに身を包んで、空から落ちてくる・・・・・・)
 心の声と一緒にその時の自分の映像も流れこんでくる。
 かなり美化されているような・・・・・・。

(でも・・・・・・)
 クリスは香の顔をちらりとみて、また前方に視線を戻した。

(でも、オレはやっぱり、いつものお下げの香の方が好きだけどな)

「・・・・・・・・・ありがと」

 思わず、言葉が出てしまった。
 クリスがぎょっとして、立ち止まる。

「お前・・・・・・オレの心の声・・・・・・」
「ごめん・・・・・・読んじゃった」
「いつから?!」
「んーーーーーーー。えへ」
「えへって!」

「ああ、良かった。クリス、斉藤さん」
 二人がボソボソと話しているところに、白龍が空から降りてきた。

「こっちです。きてください」
 白龍の指差す先で、ベランダに突如現れたあの女性が深々と頭を下げていた。



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なんか切りようなくて長くなっちゃった。

書きたかったシーン、その4。

ベランダから飛び降りる香を受け止めるクリス、でした。


次回は、書きたかったシーン、その5。
とうとうあれが書ける・・・・・・。

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次回更新は19日金曜日夜9時です。
よろしくお願いいたします。
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