創作小説屋

創作小説置き場。BL・R18あるのでご注意を。

月の女王-30

2014年09月26日 21時00分00秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
「忍様、12時を過ぎました」

 真田の静かな声で、部屋の中がシンッとなる。

「香・・・・・・何か変化は?」
「ううん・・・・・・なにも・・・・・・」

 クリスに問われ、自分の両手を開いたり閉じたりしてみたが何もない。

「第二の封印が解け、月の姫の力が解き放たれる・・・・・・というのが予言にあるのですが」

 白龍が香とイズミの両方を見ながら言う。
 もし、第一の封印が解けずにこの日を迎えてしまった場合は、白龍とイズミが月の姫を支えるつもりであった。でも、もう第一の封印は解けているし、その必要はないはず・・・・・・。

「オーラを出してみるとか?」
「うん・・・・・・」

 イズミの提案にのり、香は、手を組み目をつむり、祈るようなポーズをしながら、自分の内なるパワーを放出させた。今朝方よりパワーが格段に上がっている。金色の光が部屋中に広がり、温かく包みこんでいく。

(すごい・・・・・・)
(綺麗・・・・・・)
(これが・・・・・・月の姫)

 それぞれの思考が香の中に入ってくる。それは驚きや感嘆・・・・・・。

(やっぱり香のオーラってキレイだよなー金色にキラキラ光ってて)
 ひときわ大きく聞こえてくるクリスの心の声。

(真剣な顔も一生懸命な感じしてホントかわいいよなー。月の王子があんなガキってことは、決められた男ってのはそういう意味じゃないってことだよな? だったらオレが香とつき合ってもいいってことだよな? この予言の話が終わったら、ちゃんと告白しよう。うーん、告白、どこでしようかな。やっぱりあの海かな。でもあそこに行くのに高村に車出してもらうっていうのもカッコ悪いよなあ・・・・・・)

「あの・・・・・・」

 香がすっとクリスに向かって、制するように手の平を向けた。困ったような気まずいような恥ずかしいような表情をしている。

「ごめん。全部聞こえてる。集中できないから・・・・・・」
「・・・・・・あ」

 頭を抱えるクリス。

「ごめん」
「別に謝ることは・・・・・・、え?」

 ふと香が上を見上げた。何かを探すようにキョロキョロしている。

「どうした?」
「ミロク君が・・・・・・」
「ミロクならベッドに・・・・・・香?!」

 ふいに香の体の力が抜け、隣にいたイズミがあわてて抱きかかえる。

「予言がはじまったのでしょう」
 忍の声にも興奮の色が隠せない。

「香さんをこちらへ・・・・・・」
 忍が寝ているミロクを少し横にずらし、ベッドの横にスペースを空ける。
 そこへイズミがゆっくりと香を横たわらせた。

「香・・・・・・」
 取り囲むように、クリス・白龍・アーサー・イズミの4人がベッドの周りに立ち尽くす。
 香とミロクは眠っているようである。

 しばらくの沈黙の後・・・

「あれは・・・・・・」
 一番初めに気がついたのは白龍だった。

「見てください、あれ」
 ガラス張りの天井を指差す。

「月が・・・・・・落ちてくる」


***


「別に謝ることは・・・・・・、え?」

(香さん、香さん、こっちこっち!)

 上からミロクの声は聞こえてきた気がして、香は上を探したのだった。

「どうした?」
 クリスの心配そうな声に、
「ミロク君が・・・・・・」
 いいかけたその時だった。

 ジェットコースターの落下の瞬間、のような感じ。
 体は落ちて、意識は上に引き上げられる、といったような・・・・・・

(なに?!)

 気がついた時には、宙に浮いていた。
 自分の体が、イズミによって運ばれて行くのが見える。

(私、死んじゃったの?!)

 とっさに思ったが、自分の体は寝ているだけのようだったので、

(幽体離脱・・・・・・ってやつかしら)

 ちょっとホッとする。
 自分の体を客観的に見られるとは不思議な現象である。

(私ってあんな顔してるんだな・・・・・・)
 わりと冷静にそんなことを思っていたところに、

(香さーん)
 フワフワと浮きながら、ミロクがこちらに泳ぐようにやってこようとしている。

(ミロク君!)
 手を伸ばし、両手をしっかりと繋ぎ合う。

 すると・・・・・・繋いだ手が・・・・・・交わってきた。

 自然に、解けていくように、香とミロクが重なっていく・・・。

(香さん・・・・・・?)
(ミロク君・・・・・・)

 お互いの名前を呼ぶ。
 自分の中に相手がいる。相手の中に自分がいる。

(合体・・・・・・って感じ?)
(だね・・・・・・)

 これが交わる、ということだったのか。
 自分の意識とミロクの意識はハッキリと分かれているが、生命体としてのエネルギーは倍になった感じがする。
 エネルギーが上へ上へと立ち上っていく。

 二人はすぐに異変に気がついた。

(見て見て! ほら、月が・・・・・・)
(月・・・・・・)

 迫ってきている。
 いや、あれは月ではない。月によく似ている、丸い物体・・・・・・。

(新世界への扉・・・・・・?)

 これが予言の扉なのか。

(行ってみよう!)

 一つに交わった二人が、月のようなそれにむかって手を伸ばす。

 が・・・・・・・・・。

(す、進まない・・・・・・)

 普通さ、こういう時ってグーンと飛んで行ったりできるもんじゃないの?!

 二人でぶーぶー文句を言いながら、手を平泳ぎのようにかいてみたり、バタ足してみたりするが、ちっとも進まない。
(なんなのよーーー!!)

 そんな時、下にいるクリス達が話しているのが聞こえてきた。

「で、オレ達は何をすればいいんだ?」
「いえ、この先については何も・・・・・・」

(ちょっとーーー!!)

 香とミロクは思いっきりクリス達に向かって叫んでみた。
 すると、ビックリしたように白龍とイズミが上を向いた。

「何? どうした?」
「今・・・・・・姫の声が」

 上を向いた二人に向かって、香が大きく叫ぶ。
(今、上に行こうとしてるんだけど、進めないのよ!)

「進めない・・・? でもこれ以上予言には何も・・・・・・」
「いえ」

 白龍の言葉に重なるように、忍が言う。

「いえ、あります」
「え?」

 一同の視線を受け、忍はゆっくりと肯いた。

「祖父が入手した、イーティルの予言にはこの先があるのです」
「イーティルって・・・・・・っ」

 クリスが驚いたように叫ぶ。白龍とイズミは眉間に皺を寄せる。

「イーティル?」
「イーティルとは何です?」

「もう一つの星です。歴史から消し去られたもう一つの・・・・・・」

 忍の澄んだ声があたりに響き渡る。

「月の戦士の光が、月の姫と月の王子を<月の女王>の元へと誘う」

「月の・・・・・・女王?」

 え? と皆が忍を見る。忍は再び肯くと、

「詳細は後ほど。とりあえず、月の戦士の皆さん。試してはみませんか? この予言を」



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ようやく・・・・・・・・・ここまできたーーーー!!!

感無量・・・・・・。

ようやく、題名「月の女王」という言葉を出すことができました。


当時高校生だった私には辿りつけなかった場所。
うーん。やっぱり文明の利器って素晴らしい。
パソコン万歳。

当時高校生だった私はノートにひたすら書いていたのです。
誰に見せるでもなく、自分が楽しむために。
でも、だから、途中で書くのをやめて放置した。
せっかくお話は考えてあったのにね。
そんな風に放置した小説が山ほどありました。

今、このブログという場を得て、息を吹き返しました。
私の中でだけいた香がクリスが、勝手に動き出し、
こうしてお話を進められることが、何より幸せ。

幸せだけど、最近どっぷりはまりすぎてまずい。
日常生活に支障をきたしはじめました^^;


次回は9月29日(月)夜9時更新予定です。

次回で5章終わるかな?どうかな?
最近どうもズルズル書いちゃっていかんね^^;
コメント
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