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月の女王-27

2014年09月19日 21時00分00秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
途中まで要約。途中から普通?に書く。
書きたかったあのシーンがようやく書ける。

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 香・クリス・白龍の三人は、桔梗に導かれて風間忍邸の裏口から中に入る。

 桔梗のことは白龍から「司の弟・忍の部下で、こちらの味方」と紹介される。
 こちらの味方ってどういうことだろう?と疑問に思った香だが、全員そろってから忍を紹介する、と言われ、クリスも異存がないようなので追求することはやめた。

 イズミとアーサーの到着を待つ間、桔梗に香の着替えや靴も用意してもらう。
 香は客室を借りて着替えをしようとしたが、一人でいるのが怖かったため、クリスに目隠しをして一緒に部屋に入ってもらうことにした。白龍は廊下で見張りをしているという。

 目隠しをして後ろを向いたまま立っているクリス。
「月の王子って知ってる?」
 香に問われ、動揺する。
「な、なんでそれを?」

「妙子さんが言ってた。あの司って人が月の王子だって。ほんと?」
「・・・・・・いや、それはまだ分からない」

「分からないのに、妙子さんは月の王子って言ったってこと?」
「まあ、そういうことになるな」
「・・・・・・変なの」

 ふーん。と香がつぶやく。
 香も黒ずくめの洋服に着替え、後はアクセサリーと髪留めを取るだけだ。

「目隠しとっていいよ」
 香の言葉にクリスは目隠しを取り、鏡台の前の丸椅子に座りネックレスを取ろうと四苦八苦している香に気がつき、すっと後ろに立った。

「外すよ」
 器用にネックレスを外してくれるクリスに、香は再びふーんとつぶやき、

「なんか手慣れてるね。しょっちゅう女の子につけてあげたりとってあげたりしてるんでしょ?」
「してねーよ」

 クリスはムッとした表情でネックレスを鏡台に置き、今度は髪留めを器用に取りはじめた。

(こっちはもう十年もお前に片思いしてんだよ。そんなことやってる余裕ないっつーの)

「・・・・・・っ」
 一気に香の顔が真っ赤になる。
 そのことに気がつき、あ、とクリスも赤面する。

「お前・・・・・・また読んだ?」
「ご・・・・・・ごめん。ブロックするブロック・・・・・・」

 ぶつぶつ言いながら香がふーっと息をはく。

 髪留めを全部取り終えたが、今まで結っていたせいで、髪全体がぼわんっとふくらんでいる。

「なんか・・・髪の毛変」
「とりあえず梳かしてみるか」

 クリスが鏡台の引き出しから櫛をとりだした。

「これ、なんかで固めただろ?整髪料が残ってて櫛が通りにくそうだ。痛かったら言えよ?」
「うん・・・・・・」

 優しく優しく、クリスが髪を梳かしてくれる。
 こんなに甘やかされていていいのだろうか、と不安になる。

 今も私を助けるためにみんな危険な目にあっている。私はこんなにしてもらうほどの価値のある人間なんだろうか。私は本当に予言を成就させるのだろうか・・・・・・。

「みんなは予言を成就させたいんだよね?そのために助けに来てくれたんだよね?」
「うーん・・・・・・」

 クリスは手を動かしたまま、ポツリと言った。

「オレは・・・こういっちゃなんだが予言はどうでもいい。お前が無事なら」
「・・・・・・・・・」

 その言葉に胸がぎゅっとなる。だって・・・予言には・・・・・・

「月の王子と交わる時・・・ってさ」
「・・・・・・・・・」

 鏡越しに目が合う。クリスの手が止まる。

「やっぱり・・・そういうことよね?」

 しばらくの沈黙の後、クリスは再び手を動かした。

「いや、本当のところは分からないんだよ」

 二つにわけ、器用に頭の上の方から編み込みをしている。編み込みお下げにするつもりのようだ。

「研究者によって意見が食い違ってる。そういう意味じゃないって言ってる研究者も少数だがいる」
「研究者って?」
「予言を研究する学者がいるんだよ。皆それぞれ考えが違っていて・・・。例えば、ある学者は、月の王子は特定の人物ではなく、予言の日に、月の姫とその・・・交わった男が、月の王子になる、と言っている」
「じゃあさ・・・」

 鏡越しに香がクリスを見上げる。
「月の戦士のうちの誰かが月の王子になる可能性もあるってこと?」
「いや・・・・・・」

 クリスの視線は香の髪のままだ。右側の三つ編みが終わり、左側の三つ編みに取りかかっている。

「白龍が言うには、予言の時に、月の姫・月の王子・月の戦士の六人がそろっていることは予言にかかれているから、それはないだろうって」
「なーんだ・・・・・・」

「なーんだ?」

 え?と顔をあげたクリスに、わたわたと香が手を振る。

「いや、だってね、予言の日って明日なんでしょ? 明日までに、私がそんなことをする人と巡り合うとは到底思えないのよね・・・。そうなると、さっきみたいに無理やりって話に・・・・・・」

「え?!さっきみたい?!」
 サーっとクリスの顔色が白くなる。香は再び慌てて手を振った。

「あ、ううん、さっきは大丈夫。何もされてない。される前に飛び降りたから」
「・・・・・・・・・びっくりさせんなよー」

 盛大なため息をつくクリス。香は、うん、と一つ肯いてから、

「でもやっぱり、無理やり、みたいな話になるのかな?って思うのよね・・・・・・」
「そんなことになったら、オレがまた助け出してどこまででも一緒に逃げるぞ?」
「・・・・・・ありがと」

 ふっと香は優しく笑う。心を読まなくても、クリスの本心だと分かる。

「でも・・・・・・、やっぱり予言っていうくらいだから、どこまで逃げても、そういうことになるのかなあ?って思うのよね・・・・・・」
「だから・・・・・・」
「あ、うん。なんか全然現実味ないから話せてる話」

 だから気にしないで、と鏡越しに手をふると、クリスは大きく息をついて、再び香の髪の毛に目を向けた。
 香はそのクリスの指先を鏡越しにみながら、ぽつりと言葉を継いだ。

「だからね・・・・・・そんな見ず知らずの人とするくらいなら、せめて・・・・・・」
「ああ、さっきの『なーんだ』は、せめてアーサーが月の王子だったらなあってことか?」

 ぎゅっぎゅっとゴムで髪を結びながらクリスが無表情を装っていう。

 赤面して怒りだすかと思いきや、香はうーん、と上を向いてうなり、

「うーん・・・アーサーさんかあ・・・想像つかないなあ」
「白龍は?」
「もっと想像つかない」

 ぷっと吹き出す香。

「はい。できた。これでどうだ?」
「おおっすごいっありがとう~」

 きれいに編み込みのお下げが出来上がっている。

「なんでこんなに上手にできるの?」
「昔よくカトリシアの髪を結うのをやらされたんだよ」
「へえ~そうなんだ~上手~編み込みかわい~」

 鏡に髪を写しながらニコニコしていたが、ふと正面を向いて眉を寄せる。

「あーお化粧も取りたい・・・。口紅濃すぎ・・・。化粧落としあるかな・・・」
 鏡台の引き出しをあけて中身を確認していたが、クリスからの視線に気がつき顔をあげた。

「なに?どうかした?」
「・・・・・・オレは?」

 真剣な顔をしてクリスが鏡越しに問うてくる。

「オレとだったら・・・想像できる?」
「・・・・・・・・・」

 ゆっくりと大きく瞬きをする。数秒の間のあと、香は答える。

「想像できない」
「そっか・・・・・・」
「うん」

 香は椅子の回転を利用してクリスの正面に向いた。

「ていうか、誰とも想像できないよ。だって、私、男の人と付き合ったことないもん。ファーストキスだってまだなんだよ?」
「・・・・・・・・・」
「だから、余計に明日、見ず知らずの誰かとが初めてになるなんて、嫌だなあって思うのよね。だったらそうなる前に・・・・・・」

 言葉を止め、クリスを見上げる。クリスの手がそっと香の頬に触れたのだ。

「・・・・・・なに?」
「・・・・・・オレでもいいか?」
「え?」

 透き通った青の瞳。

「オレが初めてじゃ、ダメか?」
「え・・・・・・、私・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「そんなつもりじゃ・・・・・・」

 ・・・・・・否、そんなつもりだった。

 香は自分に問いかける。
 そんなつもりだったよね?私?
 クリスの気持ちを知っていて、誘導したよね?

「香・・・・・・」

 ゆっくりとクリスの瞳が近づいてくる。
 思わず身を縮めた香の頬に、やさしく唇が落ちてくる。

「・・・・・・クリス」

 怯えた色をたたえた瞳にも、やさしく落ちてくる。

「ごめん。ずるいよね、私。あなたの気持ち知ってて・・・・・・」
「・・・・・・香」

 大好きだよ、とささやかれ、ふっと緊張が解けた。

「・・・・・・うん。知ってる」

 笑みを浮かべた香の唇にも、やさしくやさしく落ちてくる。

 クリスのことを好きかどうかなんて分からない。
 でも、クリスが自分のことをどれだけ好きでいてくれるかは知っている。

 明日、知らない誰かとどうにかなるのなら、せめて初めては、自分を本当に愛してくれている人と・・・・・・。

「大好きだよ」
 軽く触れるだけの、優しい接吻。震える心。

「・・・・・・・・・あの」
「・・・・・・・・・」

 何か言いかけた香の唇に、今度は深く覆いかぶさってくる。
 柔らかい感触を確かめるように何度も重ねる。

「あ・・・・・・」

 心臓がぎゅうっと締め付けられる。
 重ねた唇から、絡めた指先から、苦しいほど伝わってくる。

(大好きだよ・・・・・・)

 流れ出てくるクリスの気持ち。
 こんなにも愛されているのだと実感できる。

「香」

 一度唇を離し、瞳を合わせる。恥ずかしそうな香に、愛おしくてたまらない、というように、クリスがコツンとおでこを合わせる。
 もう一度・・・・・・と、唇を寄せようとした、そのときだった。


 コンコンコンッとやや大きめにドアがノックされた。
 我に返る二人。あわててドアの方へ行くクリス。

「イズミさんが戻ってきました。斉藤さん、着替え終わりましたか?」

 白龍の声に、クリスが、おお、と返事をしてドアを開くと、クリスには見向きもせずイズミが慌てて入ってきた。
 香の姿を見てホッと息をつくイズミ。

「よかった、香。無事で・・・・・・」
「イズミくん・・・・・・」

 ごめんね、と小さく言うと、イズミはゆっくりと首をふった。

「ごめんは私の方だ。私が油断していたせいで香を危険な目に合わせてしまって・・・」
「イズミくん・・・・・・」

 そういえば、イズミと二人きりだったところを狙われたんだった、と思い出す。

「何か探し物?」
 鏡台の引き出しが出しっぱなしのことに気がついてイズミが言う。

「そうそう。お化粧落としたくて・・・」
「んーーー、これじゃないか?」
「え?これ?そうなの?どうすればいいの?」
「コットンに落して・・・・・・はじめに目元から取ろう」
「えーイズミくん詳しい・・・・・・普段お化粧しないよね?」
「ああ、撮影の時にされることがあって・・・・・・」
「へ~すごーい。芸能人みたい」

 危機感のないのんきな会話を繰り広げている女子二人。それを少し離れたところからボーっと見ているクリスのそばに、白龍がすっと立った。

「クリス」
「ああ?・・・・・・なに?」

 おもむろにティッシュを差し出され、怪訝な顔をして振り返ると、白龍が恐ろしいほど冷静に、

「口紅がついてる」
「!!!!」

 とっさに口元を押さえる。

「あ、あの、こ、これは・・・・・・」
「とりあえず出よう」

 促され、部屋からでる。
 ドアを閉めたところで、白龍が大きくため息をついた。

「あ、あの・・・白龍さん・・・」

 恐る恐るクリスが見上げると、白龍は軽く頭を振った。

「いや、姫の気持ちも君の気持も分かるから、別に文句をいったりするつもりはない」
「気持ちって・・・・・・もしかして」
「ああ。全部聞いてた」
「げっ」

 ドアが薄いのか、今、香とイズミがしゃべっている声もかすかに聞こえてくる。

「邪魔しちゃ悪いと思ったんだが、イズミさんが戻ってきたから教えた方がいいと思ってね。イズミさんに知られたら面倒かな、と」

 イズミの冷たい視線を思い出し、激しく肯くクリス。
「確かに。ありがとな。イズミのやつ香のこととなると人が変わるからな」
「ああ・・・・・・。しかし・・・・・・やはり・・・・・・」

 白龍が目をつむり考えこむ。
「あの奥手の姫が、昨日今日あった男と・・・とは考えにくい」
「・・・・・・・・・」
「やはり、交わる、の解釈が違うのかもしれないな」
「そう願いたい」
 吐き捨てるようにクリスが言う。
「ったくなんなんだよ。なんで香がそんな目に合わなくちゃいけないんだよ」
「予言を成就するためだ」
 ピシャリと白龍が言ってのける。クリスがムッとして言葉を継ごうとしたときに、廊下の向こうから桔梗とアーサーが歩いてくるのが見えた。

「さ、行こう。風間忍のところに」
 白龍の言葉に興奮のようなものが含まれていることに、クリスは不思議に思う。

(なんか・・・・・・白龍らしくないんだよな・・・・・・)

 まあ、考えても仕方がない。もう走りだしてしまっているのだ。

「コンコーン。お姫さま方~終わったか~?もう行くぞ~、と」
 ドアをノックして顔を出したのと同時に、香がイズミを従えて出てきた。

「ああ、やっぱり、すっぴんのがいいな」
「そう?」

 見上げる香と、見下ろすクリス。
 3秒ほど見つめあったあと、香は口元をぎゅっと結びうなずいた。
 そして、クリスの横をすり抜けると、
「行きましょう」
 覚悟を決めたように言い放った。


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はああああ。幸せな回だった・・・・・・。
きっと高校生の時だったら、こうは書かなかっただろうな。
ラブシーンなんてこっぱずかしくて、あっさり書いてただろうな~。
企画から20年以上たち・・・・・・、
年齢と経験を重ねて、妄想力が増えた分、羞恥心をどっかに置いてきちゃってね。


ちなみに、書きたかったシーンその5は、


白龍の

「口紅がついてる」


というセリフでした。(そこ?!)


クリスは基本、尽くす男なんだよね。
お兄ちゃんだしね。弟と従妹いるしね。

ただ高村の前でだけは甘え放題甘えてるけど。
でもこれはマザコンこじらせてる結果の甘えで・・・・・・。
そういえば最近、高村さん地味だな・・・。
まあそのうち出てきます。
いや、今も出てるんだけど、要約でセリフ端折られちゃってるのよね。


さて次回は。22日月曜日9時に更新いたします。
よろしくお願いいたします。

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