創作小説屋

創作小説置き場。BL・R18あるのでご注意を。

(BL小説)風のゆくえには~秘密のショコラ(おまけ)

2017年03月01日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切


こちら、2月23・25日にアップした秘密のショコラ(前編)(後編)のおまけの話になります。


慶と浩介が住んでいるのは、201号室。中村優花さんは、302号室。
5階建てです。201号室は角部屋です。マンションの前に公園があります。
このマンションには元々、浩介の友人・あかねが住んでいました。今も名義はあかねで、格安で賃貸契約を結んでいます。

ということで、中村優花さん視点のおまけ話。



---


『秘密のショコラ・おまけの話』



「優花ちゃんちのマンション、すんごい美形が住んでるんだって?」

 時々、ママ友からそんなことを言われる。自宅で料理教室を開いている関係で、何人ものママ友がうちには来るので、そこから噂が広がっているようだ。火曜日がその「すごい美形」との遭遇率が高い、という情報まで出回っているため、「火曜日に料理教室に行きたい」って希望も多い。同じマンションというだけで、本人が教室にくるわけじゃないんだけどね……

「しかも、その人、男と住んでるってホント?!」
「うわ何それ?! 見たい!超見たい!!」
「優花ちゃん、見たことある?!」

 みんな興味深々だ。

「見たことあるけど……普通だよ? あ、美形っぷりは普通じゃないけど……」
「じゃ、何が普通?」
「何ていうか……存在が普通」
「存在が普通?」
「うーん……」

 上手く言葉にできない。
 そりゃ正直言って、2年くらい前に引っ越してきた二人をはじめて見た時には「?」で頭がいっぱいになった。なんなのこのイケメン?とか、二人どういう関係?とか。
 でもそのうち、どうやら二人はカップルらしい、とか、一人はお医者さんで一人は学校の先生らしい、とか、前に住んでいた超美人の一之瀬さんのお友達らしい、とか、噂が流れてきて、二人が仲良さそうに外出している様子も見るようになって……そうすると、人間慣れるもので、なんとも思わなくなってくる。

 「写真撮って送ってよー」と無茶ぶりしてくるママ友達に、その「すごい美形」の勤務先の病院のホームページを教えてあげた。

「なんじゃこりゃー!」
「芸能人か!」

 先生紹介のページの個人写真を見てみんな大騒ぎ。実物見たい!教室予約する!と言ってくれる人もいたりして……おかげで料理教室はまずまずの人数のお客さんを確保することができている。


***


 そんな「すごい美形」の渋谷さんが、バレンタイン当日の料理教室に参加してくれることになった。渋谷さんがポスターを見ていたところに偶然通りかかったので勧誘したら、本当に来てくれたのだ。その上、何がどうしたのか、その恋人の桜井さんまで参加してくれ……


「はああ……目の保養になった……」
「眼福眼福……」
「目正月だな……」
「あ~~写真撮らせてもらえば良かったなあ……」

 渋谷さんと桜井さんが帰ったあと、残りの参加者である4人のママ友はしばらくの間ぽや~~っとしていた。
 二人がいる間はまったくそんな素振り見せなかったんだから、4人ともたいした演技力だ。

「あんな女優みたいに綺麗な顔した渋谷さんの方が男っぽくて、背の高い桜井さんの方が一歩控えた感じっていうのがまた萌えるわ~」
「でも、あんないい男二人がくっついてるってのは、世の中的にはもったいないよねえ」
「えー、どうせ付き合えるわけじゃないんだから、むしろこの方がいいよ」
「あはは、確かに!」

 みんな好き放題言ってる。

「あーでも、優花ちゃんが『普通』って言ってた意味は分かったよ」
「でしょ?」

 そうなのだ。二人はいたって『普通』なのだ。『普通』のカップルだ。



 その後の日曜日。ちょうど出かけるところらしい二人に出くわした。

「先日はありがとうございました!」
「あ、いえー、また是非いらしてくださいね~」

 そんな思いきり社交辞令な会話をしながら二人とすれ違ってから、二人の後ろ姿を見送る。

 渋谷さんの真横か、ほんの少し後ろを歩く桜井さん……見下ろしている瞳は本当に優しくて、愛しくてたまらないって感じで……

「なんだよそれっ」
「えーだって本当だよ~?」

 聞こえてくる二人の声もすごく楽しそうで……笑いながら桜井さんの腕を軽く叩いた渋谷さんからは、幸せオーラがだだ漏れていて……

「普通じゃないな……」

 思わず一人ごちてしまう。

「25年たってもあんなにラブラブ全開って……」

 普通じゃない気もしてきた……

 そのままぼんやりと二人を見送っていたのだけれども、

「マーマー! 何してるのー?」
「早く早く!」

 駐車場から子供達の声が聞こえてきて我に返った。

「どうかした?」
「え……」

 荷物をトランクに入れていた夫が、こちらまで小走りに戻ってきて、私の持っていたお弁当の入った袋を何も言わず持ってくれる。

「何かあった?」
「…………」

 急に軽くなった右手……
 いつもは気にも留めない小さな優しさに、なぜか心がキュンとなった。

「パパ?」
「あ?」

 振り返った夫にニッコリと言う。

「ありがとう」
「お? おお」

 ハテナハテナ、という顔をした夫。桜井さんみたいにスラッと背が高いわけでもないし、渋谷さんみたいに美形というわけでもない。でも、私にとっては、この上もない幸せを与えてくれる人だ。

「ママー今日、私前に座ってもいいー?」
「ママ、ボクの隣座ってー」
「飴なめてもいいー?」
「ねえもう時間だよー」

 4人の子供に一斉に話しかけられて、「はいはい」と答える。これが私の日常。

 前言撤回。やっぱり、渋谷さんと桜井さんも、何も特別ではなく、そんな普通の日常を送っているのだと思う。



---


お読みくださりありがとうございました!
自分でもビックリするくらいまったりな話第2弾。
最後までお読みくださり本当にありがとうございました!

本当は今日から溝部君のお話を始めるつもりだったのですが、用意が間に合わなかったため、急遽、いつか書いてみたかった二人と同じマンションの住人のお話を書いちゃいました。私も同じマンションに住みたい。


今後のことなのですが、今まで通り2日に1回更新は無理なので、しばらく週二回(火曜と金曜)更新にしようと思います。
慶たちの同級生、溝部君の普通の恋愛物語。BLカテのくせにBLじゃなくて申し訳ないです。でも慶×浩介はしょっちゅう出てくるはずなので……どうぞよろしくお願いいたします。

クリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当にありがとうございます!!
次回3月3日(金)どうぞお願いいたします!

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へにほんブログ村

BLランキング

↑↑

ランキングに参加しています。よろしければクリックお願いいたします。
してくださった方、ありがとうございました!

「風のゆくえには」シリーズ目次 → こちら

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする