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風のゆくえには~現実的な話をします 1 +おまけはBL

2017年03月07日 07時21分00秒 | 風のゆくえには~現実的な話をします


【溝部視点】


2016年9月11日(日)


 正直に言おう。

 オレは、桜井と渋谷が羨ましい。
 男同士のくせに、四半世紀もずっと想いあっていて、今も一緒に暮らしていて、ちょっと油断すると、イチャイチャしてたりして………お前らどんだけだ!どんだけだよ!羨ましすぎるんだよ!

 そして、斉藤も羨ましい。
 さっさと結婚して、今や中学生の息子と娘がいて、息子はオレ達の母校、白浜高校を受験するために頑張っていて……オレが高校の時に描いていた未来予想図そのものの生活してやがる。小遣い減らされてる、とか贅沢いうな!

 そして、今、一番羨ましいのは山崎。
 8歳年下の菜美子ちゃんと、12月に結婚することが決まったという。一緒の合コンに参加して、一緒のタイミングで出会ったオレと明日香ちゃんは、結局どうにもならなかったというのに、山崎の奴だけ上手いことやりやがって……くそー………


「招待状は?」
「今月末には発送する予定なんで。よろしくお願いします」

 ペコリと頭を下げた山崎。
 前日が桜井の誕生日だったので、そのお祝いのお好み焼きパーティー、ということで集合かけたんだけど、山崎の結婚式の日程が決まったことも分かり、急遽山崎の結婚祝いの乾杯もすることになった。

「相手、医者だっけ?」
「うん。美人女医だよ~」

 菜美子ちゃんに会ったことのない斉藤の質問に、なぜか桜井が自慢げに答えている。

「慶の同僚で、おれの主治医」
「主治医? 桜井、どっか悪いの?」
「うん。でもおかげでもうだいぶ良いんだ」
「ふーん?」

 斉藤、それ以上突っ込むなよ? と心の中で思う。
 菜美子ちゃんは、心療内科の医師だ。と、いうことは、桜井は心の病気ということだ。詳しくは知らないけれど、人に話したい話ではないだろう……と、思ったら、

「心療内科の先生でね、慶の病院と、心療内科クリニックと掛け持ちしてるんだよ」
「…………」

 あっさりと桜井が言うので拍子抜けしてしまった。周りが思うほど、本人は気にしてないのか……

 でも、斉藤もそこは掘り下げず、山崎に向き直ると、

「去年言ってた合コンの相手だよな?」
「うん。そう」
「その合コンって、確か溝部も……」
「わーわー」

 そこを掘り下げるかっ

「まだ傷が癒えてないから、その話題はやめてくれー」
「傷? え、じゃあ……」

 え、と口に手を当てた桜井にコクコクとうなずいてみせる。

「そうなんだよー明日香ちゃん彼氏できちゃったんだよー」
「え、知ってた?山崎」
「あー、まあ……」

 頬をかいた山崎。山崎の婚約者の菜美子ちゃんは、明日香ちゃんの親友だ。当然知ってるだろう……

 明日香ちゃんは、6月末に一緒に幹事をやった結婚式の二次会で、佐藤という軽~い感じのイケメンと速攻で意気投合してしまったのだ。二人とも平日休みなので、予定を合わせやすかったのが一番の理由だと、明日香ちゃんは言っていたけれど……

「どうしてあんなチャラ男と付き合うかなあ。オレのこの大人の魅力が分からんかなあ」
「溝部も充分チャラいだろ……」
「なんだとー!?」

 聞き捨てならない山崎の発言に、食いついてやる。

「オレは全然、チャラくないっ。明日香ちゃんにだってずっと紳士的にだなあ」
「チャラいくせに押しがたりなかったってことか……」
「さーいーとーおーっっ」

 今度は斉藤。結婚歴16年=恋愛から離れて16年の奴に言われたくない! 
 斉藤は「まあまあ」と苦笑すると、

「その明日香ちゃんってのは、どんな感じの子だったんだ?」
「どんな感じ……」
「うーん、見た目は可愛い感じだよね?目がキョロッとしてて」

 明日香ちゃんと一度だけ会ったことのある桜井が、一年以上前の記憶を呼び起こしてブツブツといいはじめた。

「誰に似てる?」
「うーん……顔だけいったら、吉田さんとか?」
「ああ~~」

 高校の同級生の名前を上げられ、オレと山崎も納得でうなずく。と、桜井はそのまま、アッサリと嫌なことを言った。

「でも性格は鈴木さんに似てるよね。サバサバしてて、言いたいことズバッていう感じ」
「…………」
「…………」
「…………」

「………………あ」

 ハッとしたように口を閉じた桜井。遅いっもう遅いっ!

「さーくーらーいー!!古傷を抉るなー!!」
「わーごめんごめんっっ」

 ガシガシと蹴ってやる。いつもなら速攻でやめさせに入るであろう恋人の渋谷は、現在ソファで爆睡中なので、遠慮なく蹴ってやる!

「まあ、鈴木のことはもういいんだけどな! 人妻には興味ねえし!」

 そう言ったところで、斉藤が「いや?」と手を振った。で、驚きの発言。

「鈴木、離婚してこっち戻ってきてるぞ?」

「え?」
「え?」
「えええ?」

 な……なんだとお!?

「な……なんだよそれっ」
「ほら、オレ、実家が鈴木んちと近いじゃん? 先月実家帰った時に、偶然鈴木と会ったんだよ。年末に離婚成立して、年明けから息子と一緒に実家に住んでるって言ってた」
「え………」

 鈴木、去年の7月に飲んだ時は、旦那とも上手くやってるって、幸せだって、「溝部もさっさと良い人みつけなよー」とか言ってたのに……っ

「斉藤ー!! なんでそれを早く言わない!?」
「そんなこと言われてもっっ」

 鈴木……っ
 あいつ、また、泣いてるんだろうか。あの時みたいに、一人で隠れて、静かに涙を流してるんだろうか………

 オレは……オレは、また、何もできずに見ているだけなのか……?

 そんな……そんなの……っ

「よし!決めた!」

 ぐっと拳を握りしめ、立ち上がる。

「バーベキューやるぞ!バーベキュー!」
「は?」
「は?」
「バーベキュー?」

 こういうときは、肉だ肉!

「名目は、山崎の結婚前祝い!」
「え」
「あと、斉藤息子の激励会!」
「は?」

 きょとんとした山崎と斉藤をビシビシッと指差す。

「だからメンバーは、山崎と菜美子ちゃん、斉藤一家、でー……」

 鈴木を誘えるメンバーと言ったら……

「桜井と渋谷、桜井経由長谷川委員長一家、そこ経由で小松夫妻、鈴木親子! これでどうだ!」
「どうだって……」

 顔を見合わせる3人に畳み掛ける。

「去年、鈴木とはライン交換したから連絡とることはできるけど、オレがいきなり誘ったって断ってくる可能性高いだろ! まずは外堀を埋めるんだよ!」
「あ、なるほど」

 桜井はうなずくと、「それじゃあ……」とスマホを取り出した。

「とりあえず委員長に、奥さんの川本さんが鈴木さんか小松さんと最近連絡とってないか聞いてみるね」
「おお。頼む。川本と小松は同じバトン部だったから繋がってると思うんだよ」

 委員長は、同じクラスだった川本沙織と結婚して、現在小3の娘と年長の息子がいる。……揃いも揃ってみんなして幸せ一家してやがって…………

「でも、こんな大人数でバーベキューってどこでやるの?」
「前みたいに海の公園予約するとか?」
「あ、いや」

 ブンブン手を振る。前にバーベキュー合コンをしに海の公園にいったこともあるんだけど、今回は子供もいるし、リーズナブルにいきたい。金がかかる、とか、行くのが大変、とか、断る理由になりそうなことは全力で排除するっ!
 
「うちの実家の庭、畑やめたから広さだけはあんだよ。前に会社の連中20人以上集まったけど大丈夫だった」
「おー、それはいい」
「あ、そう言えば溝部のうちって広かったよな」

 ぽん、と手をうった斉藤。

「一回行ったことあるよな? あれ? それこそ、鈴木と小松と……」
「あ、クリスマスパーティー?」

「斉藤君、山崎君、君たちもオレの古傷を抉らないように!」

 ムッとして遮ると、二人は「ごめんごめん」と苦笑いしやがった。

 くそー……今に見てろよ!!
 逆転サヨナラホームラン打ってやるー!!!


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お読みくださりありがとうございました!

この話、『幸せな誕生日(後編)』の後半の話直後の話となっております。

浩介と委員長は昨年の再会時にフェイスブックを教えあって以降、やり取りが続いています。(浩介は記事はあげないけれど、委員長が読んだ本の感想とかをあげるので、それにコメントしてるって感じ)

続きまして、今日のおまけ。


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☆今日のおまけ・慶視点


 ふっと目を覚ますと、じーっとこちらを見ながら何か飲んでいる浩介の姿が目に入った。

「………あれ? みんなは?」
「もう帰ったよ?」
「あー、また寝ちゃったのか、おれ……」

 最近、どうも酔いが回るのが早い。家なので安心感があるせいかもしれないけど……

「お水飲む?」
「いや、いい。……お前何飲んでんの?」
「これ。昨日実家から貰ってきたやつ」

 ウイスキーの瓶がテーブルに置いてある。昨日浩介の実家に行ったときに、お中元のお裾分け、といってお母さんがくれたのだ。

「慶もいる?」
「…………」

 軽く首を振ると、そう?といって、浩介は再びグラスに口をつけた。おれは寝そべったままなので、浩介が斜めに見える。斜めの浩介は、まだ目を細めておれを見ている。

「何?」
「ん?」
「何見てんだよ?」
「えー?」

 嬉しそうに笑った浩介。

「ほんと、綺麗な顔してるなあと思って観賞してたの」
「観賞?」
「そう。昔、美術部の浜野さんが『渋谷慶は観賞物』って言ってたんだけど、なんかそれ思い出しちゃった」
「……は?」
「いや~も~この顔を独占して観賞しながら飲むお酒は最高です」
「…………。なんだそりゃ」

 変な奴。あいかわらず変な奴だ。
 浩介はニコニコという。

「見てていい?」
「……やだ」
「えー」

 なんでーケチー、と、間延びして言う浩介にちょいちょいと手招きをする。

「なにー?……わっ」
 近づいてきた浩介の腕を掴んで引き寄せる。

「おれは観賞物じゃねーよ」

 そして、噛みつくみたいなキスをしてやる。

「おれは実用品だ」
「ん」

 もう一度キスをする。
 見てるだけ、なんて許さない。ちゃんと触れて、ちゃんと包み込んで、一緒にいるって感じさせろ。

「慶」
「…………浩介」

 愛しそうにおれの名を呼んでくれる浩介を、ぎゅうっと抱きしめた。



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お読みくださりありがとうございました!

今日のおまけは『ウイスキーをチビチビ飲みながら、慶の寝顔を眺めてニヤニヤしてる浩介の図』が書きたくて書きました。
『渋谷慶は観賞物』と浜野さんが言った話は、『巡合2-2』。まだ浩介が慶を親友としか思ってない時代。青春の高校二年の文化祭♪

オチも何もない『おまけの話』。誰得?私得!
こういう小話書くの大好きでして、学生時代も色々な話の小話をノートに書き綴り、最終的には7冊分計63話になってました。
今後もそのノリで合間合間に書かせていただこうと思っております。

毎週火曜日と金曜日の朝7時21分に更新する予定です。
次回は3月10日金曜日、どうぞよろしくお願いいたします!

クリックしてくださった方、見にきてくださった方、本当に本当にありがとうございます!今後ともどうぞよろしくお願いいたします!

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コメント (2)
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