創作小説屋

創作小説置き場。BL・R18あるのでご注意を。

月の女王-26

2014年09月17日 21時00分00秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
本当に、今回は要約で!
でもあのシーンだけはちゃんと書く!

--------------

 妙子に司の行動を謝られる。
 香は妙子の心を読んでしまう。妙子は司に好意を抱いている・・・。
 妙子が司に認められるために自分を利用していることは分かった。でもそれと同時に自分との友情も大切にしたいと思っていることも分かってしまった。
 複雑な気持ちで妙子と向かい合う香。

 妙子が香の衣装やスタイリストの手配のために一時部屋から出て行った隙に、ベランダ側の窓がコンコンと叩かれる。ここ3階って言ってたのに、と驚いて見に行くと、スラリとした綺麗な女性が隠れるように立っていた。

「今夜9時に、このベランダから飛び降りて」

 え?と聞き返す香の手を握る女性。女性の意識から、白龍の姿が写しだされる。

「月の戦士を信じて」

 それだけ言うと、女性は身軽に屋根の上へとのぼっていってしまった。


 戻ってきた妙子は、たくさんの衣装と4人の女性と一緒だった。

 女性らにされるがままに、ネイルをされ化粧をされ髪をきれいに結いあげられる。
 散々迷った衣装は、結局銀色のドレスに決まった。それにパールのネックレスとイヤリング。

 妙子は満足げに肯いた。

「香ちゃん、綺麗よ。司様もきっとお気に召すわ」
「妙子さん・・・・・・」

 なんで?妙子さんはあの人のことが好きなんでしょ?

 喉元まで出かかった言葉を飲み込む。そんなことを言ってはキョウコの時の二の舞だ。

 そう即座に考えて、思い知った。
 自分は妙子という友達を無くしたくない、と今でも思っている。
 こんな状況でありながらも、まだ。

「・・・・・・こんな高いヒールの靴、はじめて履いたよ」

 言うと、妙子はふふ、と笑って、

「香ちゃん、膝が曲がっちゃってるよ。腰と膝に力入れてちゃんと立って」
「・・・・・・・・・」

 言われた通りに立つと、長身の妙子と目線がバッチリと合った。

「妙子さん・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

 ふっと妙子が視線をそらす。今日何度目かの行動だ。

(ごめんね、香ちゃん・・・・・・)

 妙子の心の声が聞こえてくる。もう妙子には何も言えなかった。


 夜7時になって夕食が運ばれてきた。食欲はなかったが、妙子に促されて少し食べる。

 あの女性の言っていた夜9時までもう少し・・・
 時間が過ぎるのがいつもよりも長く感じる。
 香と妙子は言葉数少なに食後のコーヒーを飲む。

 9時まであと10分、というところでドアがノックされ、昼間と同じようにリンクス=ホウジョウを従えた司がズカズカと入ってきた。

「おお。月の姫、という感じに仕上がったな」

 無遠慮な視線を香に投げかけてくる。

(妙子さんったらこんな男のどこがいいのよ・・・・・・)

 ムッとして睨みつけたが、司は気づきもしないようにリンクスと妙子に向かってサッと手を振った。

「もういいぞ、お前ら」
「は・・・・・・」

 おごそかに頭を下げ、リンクスと妙子が部屋を出て行く。
 妙子の瞳は香に対する謝罪と、嫉妬の色に染まっていた。

 妙子の気持ちが気になって、気がつくのが遅くなったが・・・・・・。
 冷静に今の状況を考えてみて・・・・・・「まずい・・・」と今更思う。

 この男と二人きりだ。この男、何を考えている?何を・・・・・・。

「!!!!」

 司の考えを読みとり、血の気が引く。とっさに立ちあがり、窓辺に張り付く。

「嫌・・・・・・」
「・・・・・・月の姫」

 司が、近づいてくる。

「無理、無理無理無理!!絶対無理!!」

 香の怯えた様子に動じることもなく、司は笑みを浮かべている。

「『月の姫が月の王子と交わる時に新世界の扉が開く』。さあ、予言を成就させようぞ」
「ま、交わるって・・・・・・!!」

 香の顔面が蒼白する。司の思考が流れこんでくる。

(嫌・・・・・・嫌だ・・・・・・!!)

 司の想像の中に蹂躙される自分の姿が見えて吐き気がする。

(助けて・・・・・・)
 声にならない悲鳴。

(助けて・・・・・・)
 気を失いそうになった、その時・・・・・・

(香!!)
 リンッとした声。空気が浄化される。

(クリス・・・・・・?)
 はっとして香が顔を上げたその時、おもむろに部屋の電気が消えた。この部屋だけではない。外の電気も消えている。

「今夜9時に、この窓から飛び降りて」

 女性の言葉を思い出した。

 不意の暗闇に驚き「誰か電気を!」とドアに向かって叫んでいる司を背に、香は窓を開けベランダに出る。下をのぞきこむと、そこには・・・・・・

「・・・・・・クリス」

 いつもいつも一番に助けにきてくれる青い炎。
 安心で体の力が抜けそうになる。涙がこみ上げてくる。

(白龍が風の力で支えてくれる。安心して飛び降りてこい!)

 クリスの思考が伝わってくる。
 両腕をこちらに伸ばしている姿が月の光に照らされる。
 闇に乗じるためにか、全身黒い衣服に身を包み、黒い帽子をかぶって金色の髪を隠しているが、その青い炎は隠しようもない。いつも守ってくれている優しい光。
 
 ここは3階。かなりの高さだ。
 でも・・・怖くない。あなたがいてくれるなら、怖くない。

 香は高いヒールの靴を脱ぎ、ベランダの手すりによじ登った。

「月の姫!何をしている!!」

 司の声を背中に聞きながら、香は躊躇なく飛び降りた。



 一瞬の無重力状態のあと、ふっと落下速度が遅くなった。風に乗ったのだ。

「香!」

 声の主の方へ手を伸ばす。広げている腕の中に何も考えず飛び込んだ。
 
「お・・・・・・っと、うわわっ」
 クリスが支えきれず、香を抱きかかえたまま、植え込みに倒れこむ。
 それにも構わず、香はギュッとクリスの首にしがみついた。クリスもそのまま力いっぱい香を抱きしめる。

「クリス・・・・・・ッ」
 温かい、安心できる腕の中。

「こ・・・こわかった・・・・・・」
 震えが止まらない。あのままあそこにいたら自分はどうなっていただろう・・・。

「ごめんな。遅くなって。見張りが手薄になる時間が今しかなくて・・・・・・」
 耳元で聞こえてくるクリスの声が心地よい。

(もう・・・・・・離さない)

 同時に心の声も流れこんでくる。

(香・・・・・・オレの大切な香・・・・・・)

 心の声を聞かないようにバリアーを張らなくては、と思いながらも、クリスの溢れてくる愛情に満ちた感情の波に身をゆだねたくなる気持ちに負けて、そのままにしてしまう。

「立てるか?」
「うん・・・・・・でも靴、置いてきちゃった」
「じゃ、オレが連れてってやる」

(こないだはイズミに邪魔されたからな!あの野郎うるせーんだよ。イズミに見つかる前に今度こそオレが念願のお姫様抱っこしてやる!)

 だだ漏れているクリスの心の声に笑いがこみ上げてくる。
 そんな香に気がつくこともなく、クリスはよいしょっと香を横抱きにする。

「しっかりつかまっとけ。走るぞ」
「うん」

 首にまわした手に力をこめる。
 あちらこちらで喧騒が聞こえてくる。

(イズミ達、うまくやってるようだな)
 陽動作戦らしい。騒ぎを起こして香達への注意をそらしているようだ。

(それにしても・・・さっきの香は本当に月の姫そのものだったな)

 あまり聞いてもまずいかな、と思いつつ、ついついクリスの心の声に耳を傾けてしまう。

(月の光を背に銀色のドレスに身を包んで、空から落ちてくる・・・・・・)
 心の声と一緒にその時の自分の映像も流れこんでくる。
 かなり美化されているような・・・・・・。

(でも・・・・・・)
 クリスは香の顔をちらりとみて、また前方に視線を戻した。

(でも、オレはやっぱり、いつものお下げの香の方が好きだけどな)

「・・・・・・・・・ありがと」

 思わず、言葉が出てしまった。
 クリスがぎょっとして、立ち止まる。

「お前・・・・・・オレの心の声・・・・・・」
「ごめん・・・・・・読んじゃった」
「いつから?!」
「んーーーーーーー。えへ」
「えへって!」

「ああ、良かった。クリス、斉藤さん」
 二人がボソボソと話しているところに、白龍が空から降りてきた。

「こっちです。きてください」
 白龍の指差す先で、ベランダに突如現れたあの女性が深々と頭を下げていた。



--------------------------

なんか切りようなくて長くなっちゃった。

書きたかったシーン、その4。

ベランダから飛び降りる香を受け止めるクリス、でした。


次回は、書きたかったシーン、その5。
とうとうあれが書ける・・・・・・。

--------------

次回更新は19日金曜日夜9時です。
よろしくお願いいたします。
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月の女王-25

2014年09月15日 21時00分00秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
 空には黄色がかった白い大きな球体。
「月・・・・・・?」
 香は直感的にそう思ったが、よく見ると月よりも人工的な感じがしたため、「月じゃないか・・・」と一人ごちる。
「月じゃないの?」
 隣から可愛らしい声がした。
 見ると、きれいな顔立ちをした少年が小首をかしげてこちらをみている。
(・・・誰?)
 初めて会うはずなのに、なぜか懐かしい・・・。


「・・・・・・・・・」
 香はぼんやりと目を覚まし、つい最近もこんなことがあったな・・・と思った。
 気を失って、目覚めたとき、のぞきこんできた青い瞳を見て、妙に安心したのを覚えている。
 最近、気がつくといつも近くにある、澄んだ青い瞳・・・・・・。

「香ちゃん、気がついた?」
 でも、今、あるのは、青ではなく黒の瞳。心配そうな光をたたえた、大きな黒い瞳。
「・・・・・・妙子さん」
「大丈夫?起きられる?お水飲む?」
 妙子に支えられて体を起こし、差し出された水を飲んで、ようやく頭がはっきりした。
 知らない部屋。豪華な造りの家具。腰かけたソファーも柔らかく高級感がある。

「・・・ここどこ?」
 連れてこられた状況を思い出し、妙子を見上げる。

「妙子さんって・・・・・・敵なの?」
「うーん・・・話すと長くなるんだけど・・・」
 香がまっすぐ見つめると、妙子はふいと目線を外し、香からコップを受け取った。

「香ちゃんの味方になりたいって思ってる」
「・・・どういうこと?」
 疑問符いっぱいの香に背を向け窓辺に立つ妙子。

「予言のことは聞いてる?」
「予言って・・・・・・月の姫の?」
「そう・・・月の姫が新世界の扉が開く・・・・・・」

 振り返った妙子の瞳には決意の色が浮かんでいた。

「そのために、月の姫は月の王子に会う必要があるってことは聞いた?」
「月の・・・王子?」

 初めてきく名前に香が眉を寄せる。
「誰それ?」
「今から紹介するね。とても良い方よ」

「んーーーーと?その人に会わせるために、私を連れてきたの?」
「そうよ」

 んん?と香が首をひねる。
「どうして?無理やり連れてこなくたって、妙子さんが言ってくれば普通に来たのに」
「それは月の戦士たちが許さないでしょ?」
「どうして?」
 
 意味が分からない。

「私たちはデュール王家の末裔。月の戦士たちはテーミス王家の末裔。テーミス王家の奴等は香ちゃんを利用しようとしてるの。私たちは香ちゃんの味方よ。香ちゃんを必ず守るわ」
「・・・・・・・・・」

 妙子の言葉に、ふっとクリスの言葉が頭をよぎる。

「オレが必ず守るから・・・」

 きゅっと心臓のあたりが締め付けられる。抱きしめられた腕の温かさを思い出す。
 今、クリス達はどうしているだろう。心配しているのではないだろうか・・・。

「なんだかよくわからないけど・・・とりあえず帰ってもいい? その月の王子とかいう人に会うのはまた今度で・・・」
「ダメよ。予言の日は明日だもの。時間がない」

 妙子のセリフに重なってドアがノックされ、開いた。

「・・・・・・あ」

 香が思わず身構える。そこに立っていたのは、リンクス=ホウジョウ。
 そして・・・・・・

「目覚めたか、月の姫」

 扉を押さえるリンクスの横から、長身の男がズカズカと入ってきた。
 整った顔立ちをしているが、傲慢さ、猛々しさの印象の方が強く残る。
 命令することに慣れた声。上に立つもののオーラがある。

「司様」

 妙子が静かに頭を下げる。
 司と呼ばれたその男は妙子には見向きもせず、香をじろじろと見ると、

「・・・・・・地味だな」
「は?」

 一瞬何を言われたのか分からずぽかんとしたが、言葉が脳に到達してようやくカチンとくる。

(初対面の女の子に向かって、第一声が地味って・・・・・・)

 なんなのこの人、と妙子を振り返ったが、妙子は頭を下げたままだ。

「でも、素材は悪くない。妙子、お前に任せる。磨いてやれ」
「はい・・・・・・」

 意味がわからない。本当にわからない。

 香は腹立ちも手伝って、司のことをにらみがちに見上げると、

「私、帰ります。失礼します・・・、あれ?」
 司の横を通りぬけようとしたが、見えない壁に阻まれた。リンクスの仕業だ。

「・・・・・・。帰ります!」
 カッと香の体から金のオーラが立ち上った。見えない壁を振り払う。

「失礼します」
 そのまま司の横を通りぬけようとしたが、

「待て」
 司の迫力のある声に思わず立ち止まる。
 振り返る間もなく、いきなりお下げの片方を引っ張られ、引き寄せられた。たまらず香が悲鳴を上げる。

「痛・・・っ」
「司様っ」
 オロオロと司に取りすがろうとした妙子の顎を、司が空いている方の手でグッと掴む。

「いいな?妙子。オレは生意気な女は嫌いだ。よく言い聞かせておけ」
「は・・・はい」
「月の姫」
 お下げを引っ張り上げながら、司が高圧的に言う。
「逃げようなんて思うなよ?」
「・・・・・・」

 突き飛ばされ、ソファーに身を投げ出される。
 香が顔を上げたときには、司はリンクスを従えて出て行くところだった。

「香ちゃん、大丈夫?」
 妙子の小さな心配そうな声が聞こえたが、何も答えられなかった。
 自分に実際に起きていることなのに、現実味がない。

(あれは何のアニメだったかな・・・)

 こんな緊迫した状況にありながら、香はそんなことを思った。

 昔見たアニメ。
 主人公の女の子がこうやって敵の男の人にお下げを引っ張られたシーンがあった。
 あの話、確かあのあと、男の子が助けにきてくれるのだ。
 男の子は、出会ったばかりにも関わらず、その女の子のことを命がけで助けてくれる。

(・・・・・・クリス)

 名前が心に浮かぶ。
 たぶんクリスも、あの男の子のように、助けにこようとしているに違いない。


---------------


あれ?なんででしょう?普通に書いてしまった・・・。

でも書きたかったシーン第3弾。
「司様にお下げをひっぱられる香」が書けて満足。

昔みたアニメ、とは、あれです。あれ。宮崎さんとこの・・・。
あの作品が一番大好きです。セリフも全部覚えてます。
出会ったばかりの二人が信じあっているところがいいのよね。


はあ・・・しかし。
いい加減、要約でいかないと、ホントに終わらない・・・。

次回は書きたかったシーン、第4弾!!

-----

今まで週2でしたがストックたまったので週3にします。
月水金でいきます。

ので、次回は17日水曜日夜9時です。
よろしくお願いいたします。


そういえば、本日9月15日はクリスの誕生日でした。
おめでとう。
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月の女王-24

2014年09月12日 21時00分00秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
今回もサクサクッと要約!!

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第5章 光彩


 香の封印が無事解けたことで、今後どうするか話し合う香達。

 夕子祖母の民宿は、あと3日間は部屋が空いているので宿泊可能だが、夕子自身は部活(美術部)があるため、香の母もパートがあるためそろそろ帰りたいのが本音。

 予言のせいで大きな勢力に追われているというのに、宿題だ、部活だ、パートだ、と緊迫感がまったくない。現実味がなくてピンとこない香。

 香の能力は完全に開花したが、まだ自分でコントロールするのは難しい。とりあえず、トラウマになっている「心の声を読む能力」だけは制御できるようになった。

 香はクリスに対してはじめは微妙に距離を取っていたが、クリスがいつもと変わらないため、香も普通に接するようになっていた。でも時折意識してはドキドキしてしまっている。


 自宅に帰ろうかな・・・という香に対し、クリスとイズミは「危険回避のためには、ここに残ったほうがいいのでは」という意見。

 白龍は『姫の意見を尊重することが、予言成就につながると思う』と言う。クリスは『予言成就』の言葉にどんよりする。

 アーサーに『こんな田舎にいたら、姫は月の王子と出会えそうにないよね。あ、クリスの狙いはそれかな? 姫を王子に会わせたくないんだ?』と冷やかされ、慌てるクリス。

 全編英語のため、話が分からない香はきょとんとするばかり。

 前日、イズミがこっそりと夕子に聞いてみたが、やはり香の周りに男の影は皆無だそうだ。そうなると、月の王子にはこれから会うということになる。しかし、この人見知りの香が、今日明日に出会ったばかりの男とどうこうなるとはとても考えられない。


『月の戦士が月の王子ではないとはどこにも書いてないんだから、君たち3人のうちの誰かが月の王子の可能性もあるんじゃないのか?』
と、イズミが言い出す。
 アーサーの『顔がにやけてるよ、クリス』の言葉に手で顔をおさえるクリス。 

 しかし、白龍が冷静に、
『予言については専門家の分析にも諸説あるから分からないが、予言の日の月の姫の能力の開放には、月の王子と月の戦士4人がそろっている、というのが一般的な解釈だから、やはり月の戦士は4人いないといけないはず』
といい、クリスはみんなにジーっと見られ『分かってるよ!』とキレる。


 結局、昼食をすませてから自宅に向けて出発。
 道中あっけないほど無事に進み、とりあえず夕子を自宅に送り届け、買い物をしたいという香母をアーサーと一緒にスーパーの前でおろす。

 荷物を置くため自宅に戻った香とイズミ。

 久しぶりに戻った自宅は空気がこもっている。
 あちらこちらの窓を開けて回る二人。

 香は自分の部屋に入って、ビックリして立ちすくむ。

「妙子さん・・・・・・」
「おかえり。香ちゃん」

 勉強机の椅子に座っていた妙子がたちあがりニッコリと微笑み近づいてきた。
 そして、泣きそうな顔をして、言った。

「ごめんね。香ちゃん」

 ひゅっと妙子の手が伸ばされ、香の口元に白いハンカチが当てられた。

「え・・・・・・?」

 何も言う間も考える間もなく、意識が遠のく。
 最後に聞こえたのはイズミの悲鳴のような自分を呼ぶ声・・・・・・。


-------------------

キリがいいのでここまでにしときまーす。
次は司様登場♪

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ストックたまってきたので、月水金の週3にします、
ので、次回は15日月曜日夜9時です。
よろしくお願いいたします。
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月の女王-23

2014年09月09日 21時00分00秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
 その夜、香はまた夢を見た。

 誕生日の夜に見た夢と同じ。左の手の甲の中央から金色の光が出ている。
 両手を前に出してその様子を見ていたら、光っていないほうの右手を誰かに掴まれた。

「カオリちゃん」
 見下ろすと、小学校一年生の時のキョウコが立っている。
「キョウコちゃん・・・・・・」
 その後ろに、一昨日会った高校生のヒトミが立っていた。
「カオリちゃんと仲良くするとキョウコちゃんまで変になるよ」
 ヒトミがヒソヒソとキョウコに耳打ちをしている。
 キョウコが怯えたように香の手を離し、ヒトミに寄り添う。
「キョウコちゃん・・・・・・」
 息が苦しい。
「キョウコちゃん」
 離れていくキョウコとヒトミ。息が苦しい・・・。
「キョウコちゃん・・・・・・」

「大丈夫だよ」
 ふいに優しい声がした。
 クリスの声。体の中にすっと優しさが入り込んでくる。

「香ちゃん」
 きゅっと右手を握られた。夕子がにっこりと微笑んでいる。
「・・・夕子」
「私は香ちゃんの味方だからね」

 夕子の隣にはイズミが腕を組んで立っている。
「香が一番大切だ」
 迷いなく言い切るイズミ。

 後ろには穏やかな微笑みを浮かべた母。
「あなたは私の大切な大切な娘。おばあちゃまの大切な孫」

 そして、祖母の声。
「これから必ず、信頼できる人達に会える。だから大丈夫よ・・・」

 海辺に佇む人影。
「守るから・・・」
 こちらに向かって叫んでいる。
「オレが必ず守るから・・・」
 光を零している金色の髪。海よりも澄んだ青い瞳・・・。


「・・・・・・!!」
 香ははっと目を覚ました。外はまだ薄暗い。

「・・・・・・・・・」
 同じ部屋で寝ている母親、夕子、イズミを起さないよう静かに部屋を出る。

 海まで徒歩3分。朝の涼しい風を体に受けながらゆっくり歩いていく。

 人気のない朝の砂浜には・・・見覚えのある金色の髪。
「やっぱりいた・・・」
 香がぽつりとつぶやく。

「おわっ香っっ」
 香の姿を見つけて異常にビックリした様子のクリス。

「お前、一人でフラフラ歩いてたら危ないだろーー」
「そう?」
「危ないだろ! こんな薄暗い中・・・・・・」
「うん・・・・・・」

 サンダルに砂が入るのも構わず、香はザクザクと砂浜を歩いていく。

「なんか起きちゃったのよね・・・変な夢見て」
「変な夢?」
「うん・・・・・・でも夢だけじゃないの」
「え?」

 香はクリスの横に並ぶと、海に向かってすっと両腕を前に出した。

「左手、光ってるでしょ」
「!」

 クリスが目を見開く。

「お前、これ・・・・・・」
「封印が・・・・・・解ける、のかな」

 みるみるうちに、左手だけでなく、肩も胸も光に包まれていく。

「封印が・・・解ける」

「・・・・・・こわい」

 ポツリ、と香がつぶやく。
 
「こわいよ・・・・・・」
「香・・・・・・」

 ふわり、と背中が温かくなる。
 
「大丈夫だよ」

 ぎゅっと後ろから抱きしめられる。

「大丈夫。オレが必ず守るから」

 光は急速に増えていき、香を包んでいく。
 足も体も光っていく中、右腕は肘のあたりで光が止まる。
 右肘から下だけが黒く沈んでいる。
 香はその右手でそっとクリスの腕に触れた。

 クリスが香を後ろから抱きしめたまま、その右手を優しく包みこむ。優しく優しくその光のない右手に口づける。

「・・・・・・あ」

 すーっと右手も光りだした。金色のまぶしい光。
 全身が金のオーラに包まれる。あたたかい光。開放される心・・・。

(オレが必ず守るから・・・)

 背中からクリスの心が伝わってくる。

(ずっとずっと会いたかった。月の姫・・・・・・)

 優しい優しい気持ち。

(あなたのことはオレが必ず守るから・・・・・・)

(月の姫・・・・・・オレは一生あなたをあいし・・・・・・)


「!!!!」
「いってーーーー!!いきなり何すんだよお前!!」

 思いっきり突き飛ばされて、尻もちをつくクリス。
 口をパクパクさせて声にならない声を出そうとしている香。

「い、いま、あんた・・・・・・っ」
「なんだよ?」

 眉間にしわを寄せたまま香を見上げるクリスの表情は、いつもとまったく変わらない。

(・・・・・・心の声だ)

 はっと香は思う。

(心の声がまた聞こえるようになったんだ。ってことは? さっきの、一生あなたを・・・あい・・・・・・愛?)

「・・・・・・・・・・・・ないないないないないないないない!!!」
「だから何が!!」

 立ち上がり、こちらに手を伸ばそうとしたクリスに、

「こないで!!」

 バチバチバチっと金のオーラがさく裂する。再び尻もちをつくクリス。

「なんなんだよいったいーーー!」

「どさくさに紛れて抱きついたりするからだ」
 冷たい声と視線の先にはイズミが。
「イズミくん!!」

「まあ、結果的には封印を解くことができて良かったですけどね」
 冷静な分析をする白龍。

『役得だったねえ、クリス。でも深追いしちゃダメだよ。何しろ姫には「決められた男」がいるんだからね。「月の王子と交わる時に、新世界の扉が開く」ってね~』

 英語で歌うようにアーサーに言われ、クリスは『わかってるよ!!うるせーな!!』と英語で怒鳴り返す。


 近づいてくるイズミたちに、香は「ちょっと待って」と手で制する。

「私、今、自分で自分が制御できないの。近づかないでもらっていい?」
「わかりました」

 白龍が一定の距離を保った状態で、香に言う。

「オーラを自分の中に閉じ込めるイメージを持ってみてください」
「閉じ込める・・・・・・」

 輝きが少しずつ収まっていく。

「それから自分の周りにバリアーを張るイメージを持つといいと思います。そうすれば、人の心の声も聞こうと思わなければ聞こえないはずです」
「バリアーね・・・」

「え、お前もしかして・・・・・・」

 今度はクリスがアワアワと声にならない声を出そうとする。

「さっき、オレの心の声・・・・・・」
「聞いてない!聞いてない!!何も聞いてない!!!」

 速攻で香が否定する。でもその真っ赤な顔は明らかにセリフを裏切っている。

「クリス・・・何を考えてたんだ・・・?」
「まさか・・・・・・」
『何かいやらしいことかな♪』

『ちがーう!いやらしいことなんて考えてない!全然考えてない!!』

「あーもーまた一からやり直し!! あんた黙っててよ!」

 香に八つ当たり気味に言われ、口をつぐむクリス。

 砂浜に座り込み、香の集中した横顔を見上げる。
 思わずため息がでる。美しい金のオーラに包まれた姿はまさしく・・・・・・ 

(月の姫・・・・・・)

「だから黙ってて!!」
「何も言ってねーよっ」

 怒った香に言い返したクリスの首根っこを白龍がつまみあげる。

「クリス、もっと離れろ。君は気持ちが漏れ出すぎだ」
「う・・・・・・」

 そのままズルズルと引きずられていく。

 山側から太陽がのぼりはじめ、海面がキラキラと光りだす。
 予言の日は明日。最後の一日がはじまった。





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書きたかったシーン、その2!
クリスの後ろからギュ~~のシーンでした。
女子の憧れですよね~後ろからギュ~~♪

さて。次から第5章。
サクサク行きましょう。

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次回更新は12日金曜日夜9時です。
よろしくお願いいたします。

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月の女王-22

2014年09月05日 21時00分00秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
目指せサクッと要約!!


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 バーベキューを楽しそうにする香と夕子。
 一緒に露天風呂にも入りにいき、すっかり旅行モード。

 クリス達も、焦ってもしょうがないよな・・・とすっかりのんびり気分。

 露天風呂から月と星を見上げながら香は思う。
 新世界の扉を開く、なんて大きなこと言われても、まったくピンとこない。
 自分が月の姫だなんて何かの間違いなんじゃないか・・・。

「明日、花火しよう」

 夕子に言われ、うん!と言いながらも、すーっと体に冷たいものが走る。

「夏休み、一緒に花火しようね」

 キョウコの声。果たされなかった約束・・・・・・。

 ブクブクと湯船に顔をつけ、記憶を追いやろうとする香。
 右手が重くなっていく・・・・・・。


 その夜、香は夢を見た。

 浜辺に一人立って、寄せてはかえす波を見ている。
 誰かに呼ばれて振り向くと、母と、車椅子のおばあさんがいた。
 おばあさんは母とよく似ていた。言われなくても、祖母だと分かった。
 こちらに手を伸ばしているおばあさんに近づくと、いきなり両手を握られた。

「つらかったね・・・」

 おばあさんが言う。

「でもこれから必ず、信頼できる人達に会える。だから大丈夫よ・・・」

 波の音だけが、そのあともずっと響いていた。



 朝起きると、母が出かける支度をしていた。

「お墓参りに行きましょう」

と、母が言う。

 朝食後、みんなでお墓参りに行く。祖母の眠るお墓だ。


 海が見える高台のお墓。
 協力して草をむしり、墓石を磨いてきれいにしていく。

 すべてが終わり、二人でお線香をあげている最中、香母が香に言う。

「ありがとう、香・・・」
「・・・・・・え?」
 きょとん、と聞き返す香。
「何をあらたまって?」
「10年前、あなたのおかげで、おばあちゃんと仲直りできたのよ」

 香の母・夏美は駆け落ち同然で家を出てから、一度も帰ったことはなく、
 香が生まれた時に葉書をだしたきりで、音信不通にしていた。

 香が8歳になってすぐに、急に連絡がはいる。
 死ぬ前に一度、孫の顔がみたい・・・と。

 母たっての希望で、あの浜辺で香と引き合わせる。
 すべての生命エネルギーを使いきるかのようなオーラで香を包み込んだ年老いた母。

「私達の大切な香。守ってあげて・・・」

 気を失ってしまった幼い香の頭をなでながら母が言う。
 久しぶりの母娘の時間。ゆっくりと流れていく時間・・・。

 香がいなかったら、二度と会うこともなかっただろう、と夏美は言う。

「何があろうと、あなたは私の大切な大切な娘。おばあちゃまの大切な孫」



 民宿に戻ると、夏美が、香・夕子・クリス・白龍・イズミの5人にびしっと言う。

「夏休みの宿題、ちゃんとはじめなさい!」

 えええっ。予言の日が迫ってるのに?!
 
 香とクリスがえーーーと言うと、夏美はアッサリと、

「予言がこようがきまいが、学生の本分は勉強よ! 計画的にやらないと後で困るわよ!」

 有無を言わせない夏美の迫力に5人は食堂のテーブルを借りて勉強をはじめる。
 といっても、クリスと白龍は持ってきていなかったので、二人は読書感想文のための本を読み始めた。

 眉間にしわを寄せて本を読むクリス。
 付箋紙を張りつつ読み進める白龍。
 英語の単語をひたすら書いている夕子。
 数式をサラサラと書いているイズミ。
 食堂の隅でジャガイモの皮むきを手伝っているアーサーと高村と母。

 香はみんなのその様子を見ながらふっと心温かく思う。
 これが日常。特別な能力なんてなにも関係ない普通の日。

 そっと手元に紙が差し出された。夕子だ。

「夕飯のあと花火ね~」

 かわいいイラスト付きの絵。
 涙が出そうになる。
 失いたくない、日常。


 夕食後、みんなで花火をした。
 クリスが大はしゃぎで花火を振り回そうとするのを白龍が本気で怒ってやめさせている。

 線香花火を地味にやりながら夕子が言う。
「なんか香ちゃん大変みたいだけど・・・でもよかったな」
 何が?と首をかしげた香に、夕子がニッコリと言う。
「こうやって一緒にお泊まりしたりできたのは、その大変なことのおかげなんでしょ?」
「・・・・・・・・・」
「高校最後の夏、香ちゃんと楽しい思い出ができて嬉しいよ」
「夕子・・・・・・」
 この信頼を失ってしまうのだろうか。もし、能力がもどったら、キョウコのように・・・・・・
「香ちゃん」
 夕子がふんわりと笑う。
「一緒にやろ。どっちが長く残るか競争」
 線香花火を差し出される。

「なんかよく分からないけどさ。私は香ちゃんの味方だからね」
「夕子・・・・・・・・・」
 信じたい。この友情を信じたい。夕子はキョウコではない。

「これから必ず、信頼できる人達に会える。だから大丈夫よ・・・」
 祖母の言葉が耳に蘇る。

「夕子・・・私・・・」
「大丈夫。何があっても香ちゃんは香ちゃん!変わらないよ」
 ぎゅっと繋がれる右手。温かさが伝わってくる・・・・・・。
「・・・・・・ありがとう」
 香はぎゅうっと右手を握り返した。


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次回。ついに、書きたかったシーンその2が書けます!
わーい。


次回更新は9日火曜日夜9時です。
週一更新でしたが、ピッチ上げたいので週2更新にします。
よろしくお願いいたします。


コメント
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